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ヴェロネーゼ<カナの婚礼>について、ちょっとふざけた感じで書いてみる

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ルーヴルに行った事のある人は、<モナ・リザ>には必ず会いに行っただろう。

毎日、世界中から、多くの人が彼女に会いに来ている、と言っても過言ではなかった。

しかし、同じ部屋の、<モナ・リザ>の真向かいに飾られたこの絵を、ちゃんと見てくれる人は、そう多くはないのではないか。

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パオロ・ヴェロネーゼ、<カナの婚礼>

この絵は、小さいわけではない。

縦6.7メートル、そして横は9メートル以上。

デカすぎる、と言っても良い。(ルーヴルのコレクションでは最大の大きさ)

デカすぎて、到底見切れない。

私自身もルーヴルに行った時には、びっくりした。

華やか、といえば華やか。

色彩で溢れている。

コの字型に置かれたテーブルの周囲にひしめく客や、召使たち。

二階のテラス席にも人が沢山いる。犬もいる。

そして、テーブルの中央に、赤と青の衣をまとい、後光を頂いた髭面の男性―――イエス・キリストがいる。

そう、この<カナの婚礼>は、イエス・キリストの生涯の中の一エピソードを描いた作品、つまりは宗教画なのである。

彼が母マリアと結婚式に出席した時のこと、ワインが足りなくなるというアクシデントが発生。

そこで、イエスは、召使たちに水を汲むように指示し、それを極上のワインに変えた。

その「奇跡」は、画面右手前で、壺に入ったワインを注ぐ召使の姿で表されている。

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このような絵は、拡大鏡を片手に部分部分を見ていく方が良いような気もする。

実際に、この召使周辺を切り取って見ただけでも、壺に施された装飾や、豪華な食器、そして客人たちの纏う衣装の文様など、緻密に描き込まれている。

全体の大きさを考えると、たとえ弟子たちを率いて、制作したとしても、膨大な時間がかかっただろう。

想像するだけで頭が痛くなってくる。

しかも、パオロ・ヴェロネーゼは、色彩に重きを置くヴェネツィア派の中でも華麗な色遣いで名高い。

全体のバランスも考えながら制作したことを思えば、改めてそのすごさが身に沁みてくる。


だが、今、この状況下でこの絵に対峙した時、こんな言葉が口をつくのではないだろうか。

「密!」

さすがのヴェロネーゼ氏も、今の、アクリルボードで仕切られたテーブルは、恐らく想像していなかっただろう。

だが、いっそのこと、この状況下で、この<カナの婚礼>をポスターに採用するのはどうだろう?

「密、絶対ダメ!」「ソーシャル・ディスタンスは、命を守る一歩」などと、標語をつけて。

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