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マティス雑感~切り絵のルーツ

『マティス 自由なフォルム』展では、切り絵だけではなく、画業を志した初期や、彼の主要テーマである室内画も展示されている。
内覧会で見た作品を思い返していて、ふと思い浮かんだことがある。

これらの室内画は、晩年の切り絵につながる要素をはらんでいるのではないか、と。1930年代、彼はニースで上に挙げたような〈オダリスク〉のテーマをよく描いた。
オダリスクとは、イスラム教国のハーレムにいる女奴隷のことで、特に19世紀はオリエンタリズム(東洋趣味)を代表するテーマとして人気を集め、アングルやドラクロワ、ルノワールら多くの画家たちによる作品が残っている。

ドラクロワ〈アルジェの女たち〉、1834年

女性たちの服装、絨毯、水パイプなどの小道具がエキゾチックな雰囲気を醸し出す。

マティスもまた、アトリエを絨毯や布、クッションなどの品物で東洋風に仕立てたうえで、そこでモデルにポーズを取らせ、〈オダリスク〉を描いた。
小道具の収集はマティスにとって趣味であり、作品の中に描き込んだり、インスピレーションの源ともした。

コレクションを手もとで眺めたり、あるいは実際に描こうと室内に配置したり、他の物と組み合わせることは、マティスを大いに刺激したのではないか。
彼はとにかく手を動かすこと、そして自分の感覚(直感)を重視していたように思う。
またモチーフを組み合わせ、セッティングしていく様は、色を塗った紙を切り出し、壁にピン留めして組み合わせや構図を色々試す、切り絵の手法にも通じるものがあるのではないだろうか。


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