ロートレック<ディヴァン・ジャポネ>(メモ)
フランス、パリ、とつけばオシャレなイメージが思い浮かぶ。
映画の中でも、「フランス映画」は、それだけで何か特別で、オシャレな匂いが香ってくるようにも思う。
そして、このポスター<ディヴァン・ジャポネ>も、まさにフランスらしいオシャレな雰囲気が漂ってくる一枚と言えるだろう。
これは、パリの音楽喫茶(コンセール)<ディヴァン・ジャポネ(日本の長椅子)>のために、ロートレックが描いたもの。
店名からして、19世紀の日本ブームを感じさせる(日本に長椅子なんてあったか、という野暮な疑問はこの際おいておこう)が、このポスターも、日本の浮世絵からかなり影響を受けている。
例えば、最初に目につく、画面の真ん中を占める女性像。
彼女は、ロートレックお気に入りのダンサー、ジャンヌ・アヴリル。
黒ずくめの服装に身を包んだ彼女の体は、真黒な色面でもって表現されている。
この黒と、周囲に配された黄色や、灰色との対比も鮮やかで、街に飾られていたら、おそらく「おや」と足を止めて見入らずにはいられないだろう。
ちなみに彼女と一緒にいる男性は、音楽評論家のデュジャルダン。
そして、舞台で歌っているのは、黒い長手袋がトレードマークの歌手、イヴェット・ギルベール。
つまり、当時のモンマルトル界隈の有名人が登場している。
…のだが、その一人、本来なら、「舞台の主役」としてクローズアップされるだろうイヴェットを後方に置き、しかもその頭部を画面の端でちょん切ってしまうのはなかなか大胆だ。(笑)
思い切ったデフォルメ。
平面的な構成。
そして色彩感覚。
浮世絵から取り入れられたこれらの要素は、見る人の注意を惹きつけ、印象づける、というポスターの目的にも適っていた。
そして、作者のロートレックは、「商業」製品だったポスターを、芸術の域にまで高めた存在として位置づけられている。
(正直に言うと、私もこの<ディヴァン・ジャポネ>の複製は欲しいかもしれない。)
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