20枚シナリオ第二回「課題 マッチ」~『マッチ売りの娘たち』

第一回から、かなり空いてしまったが、ようやく書き上げた第二回の20枚シナリオ。
もう少し、喧嘩に熱を込めたかったなあ、と提出後に、そんなことを思った。
以下、講師からのコメントと共に。

課題:マッチ

タイトル:『マッチ売りの娘たち』

人 物
村山香乃(21)大学生
村山朱里(16)高校生 香乃の妹
村山哲夫(51)香乃、朱里の父
配達員
少女

○(イメージ)ヨーロッパ某国・大通り・俯瞰(夜)
   煉瓦や石で造られた古めかしい建物が並ぶ街。
   雪が降る中を、人々がせわしなく行き来し、道の真ん中を馬車が走っ   ていく。
 
〇同・街角
   コートを着込んだ通行人たちに交って、擦り切れたショールを羽織っ   た小柄な少女が歩いている。足は裸足で、寒さのために赤く腫れてい   る。
   少女、足を止め、マッチの束を頭上に掲げながら、
少女「(か細い声で)あの……」
   少女、箱を掲げたまま、必死で背伸びをして、
少女「(少し大きな声で)あの、どなたか…」
   通行人たちは、少女に気づかないまま通り過ぎていく。
香乃N「それは、ひどく寒い大晦日の夜の
 ことでした」
   少女、通りかかった男性に向かって、一歩踏み出す。
少女「(おそるおそる)あの、お願いです……」
   男性は、少女の方を振り向くが、すぐに視線を逸らし、立ち去ってい   く。
   茫然と見送る少女の目に涙がにじむ。
香乃N「一日中歩いても、誰も買ってはくれません。一枚の銅貨すらくれる 人はいませんでした」
   少女、うつむき、ショールの前を掻き合わせながら、歩き始める。
香乃N「このまま家に帰っても……」
   インターホンの音。
 
〇村山家・1階・香乃の部屋(昼)
   村山香乃(21)、文庫本を広げ、机に向かっている。
   インターホンの音。
   顔を上げる香乃、ちらりと机の上のスマホを見る。画面には「録音    中」と表示されている。
   インターホンの音。
   香乃、眉間にしわをよせて、立ち上がる。
 
〇住宅街・通り
   曇り空の下、ジャンパーを羽織り、大きく膨らんだエコバッグを提げ   た村山哲夫(51)が、鼻歌を歌いながら歩いている。
 
〇村山家・玄関
   香乃、伝票にサインをして、配達員に渡す。
配達員「では、良いお年を」
   出て行く配達員を、香乃は、腰に片手を当てて見送る。
 
〇同・1階・香乃の部屋
   入ってくる香乃。
香乃「まったく……」
   スマホを操作しながら、
香乃「いくら練習とはいえ……ねえ」
   文庫本を広げ、
香乃「(深呼吸して)『このまま家に帰っても、お父さんはけっして家に入 れてくれないでしょう。ひどくほっぺをぶたれるにちがいありません』」
 
〇村山家・外観~玄関前
   曲がり角に立つ二階建ての家。
   哲夫が歩いてくる。
   ドアの前に立つと、荷物を地面に置き、ジャンパーのポケットを探    り、
哲夫「あれ?」
   と、首を傾げる。
 
〇同・1階・香乃の部屋
   文庫本を手に、音読を続ける香乃。
 
〇(イメージ)ヨーロッパ某国・街角
   少女、家同士の間の小路に座り込み、手に息を吹きかけている。
香乃N「『そうだ』、と少女は思いつきました。『マッチをすってあたたま ろう』」
   少女、マッチの束から、一本を取り出し、壁にすりつける。
   あたりが明るくなり、
少女「うわあ……」
   少女、微笑んで、火に手をかざす。
香乃N「……少女はいつの間にか、勢いよく燃えるストーブの前にすわってい るような気がしました」
   少女が顔を上げると、大きなストーブが現れている。
香乃N「少女がストーブに手を伸ばそうとしたとたん……」
 
〇村山家・1階・香乃の部屋
   頭上から大音量で音楽が聞こえてきて、香乃は驚いて本を落とす。
 
〇村山家・玄関前
   哲夫、インターホンを押す。
 
〇村山家・1階・階段前
   二階から音楽が聞こえてきている。
   上を見上げる香乃、
香乃「(舌打ちして)あのバカ……!」
   拳を強く握りしめ、ゆっくりと階段を上がっていく。
   
〇村山家・玄関前
   インターホンを押す哲夫。
   しばらく待ってみるが、ドアは開かない。
哲夫「……出かけたのか?」
 
〇村山家・二階・リビング
   村山朱里(16)、部屋の真ん中に腹ばいになって、テレビを見てい   る。
   脇には、スナック菓子の袋が置かれている。
   テレビ画面には、ミュージカル映画の歌唱シーンが映し出されてい    る。
   香乃が大股で入ってくる。
香乃「ねえ」
   朱里は無視して、スナック菓子に手を伸ばす。
香乃「聞こえてるんなら、返事ぐらいしなよ?」
   朱里、リモコンを手に取ると、音量を上げる。
   室内に大きな音が響き渡り、香乃は耳を塞ぐ。
 
〇村山家・玄関前
   哲夫、スマホで電話をかけている。
 
〇村山家・1階・香乃の部屋
   香乃の机の上で、スマホが鳴っている。
 
〇村山家・2階・リビング
   耳に両手を当てたまま、朱里を見下す香乃。
   平然とテレビを見続けている朱里。
   香乃は、リモコンを奪い取ると、朱里の頭を叩く。
朱里「痛っ!(振り向いて)ちょっと、何すんのさっ!」
   香乃、黙ってテレビを消す。
 
〇村山家・玄関前
   哲夫、スマホを片手にため息をつく。
哲夫「何で出ないんだよ、二人とも……」
 
〇村山家・2階・リビング
   香乃と朱里、睨み合っている。
香乃「せっかくいい感じにのってたのに、アンタのせいでぶち壊しじゃな  い」
朱里「だから、謝ってんじゃん?すみませんでしたーって」
香乃「(怒りを抑えつつ)……アンタ、その態度は何?」
 
〇村山家・玄関前
   ドアの前に座り込んだ哲夫。煙草をくわえ、マッチで火をつけてい    る。
 
〇村山家・2階・リビング
   香乃、ため息をついて、
香乃「そもそも、……アンタの耳一体どうなってんのよ?」
   朱里、しれっとした顔で、
朱里「お姉ちゃんこそ、よくああいう話、声に出して読めるよね」
香乃「何?」
朱里「そもそも、あたしさ、嫌いなんだよね~。ああいうぺしょぺしょした お涙頂戴系の話」
   香乃、むっとする。
朱里「しかも、部屋が隣だから、お姉ちゃんのへたっぴな朗読、丸聞こえ」
香乃「へた……」
   香乃、手の中のリモコンを強く握りしめる。
 
〇村山家・玄関前(夕)
   ドアの前に座り込んで、煙草を吸っている哲夫。
   足元には、吸い殻と、マッチの燃えカスが数本散らばっている。
   煙を吐き出しながら、空を見上げると、雪が降り始めている。
哲夫「……腹減ったなあ」


講師からのコメント

☆『マッチ売りの少女』を、『娘たち』と、ひねったのが効いています(^^♪
 『マッチ売りの少女』を朗読・録音する香乃←香乃は音訳ボランティア? を、次々
に邪魔する配達員・妹の爆音。日常あるあるのシチュエーションに、思わず
笑ってしましました������ 家の鍵を忘れた(失くした?)父親が、姉妹喧嘩
のとばっちりで締めだされるのも、いかにもありそう! 気の毒なのに、笑
っちゃいました(^^♪ 読みやすく分かりやすいシナリオ。楽しかったです
(^^♪
☆人物表の年齢下には、当人より重い役に対する関係を先に書くと分かりやす
いです。村山朱里(16)香乃の妹・高校生 ですね。
☆p1ノ2本目の柱。○(イメージ)同・街角(夜)と、(イメージ)は入れた
方が分かりやすいです。照明の指定(朝・夕・夜など)も入れましょう。
☆p3以降。香乃N。これはナレーションではなく、香の声 でしょう。
☆p4後半。柱の(昼)。昼の場合は書かなくていいでよ。←何もないと昼です。
☆p6の柱。玄関を柱にした時は、中か外か指定しましょう。中だとセット、
外だとロケになったりします。
☆p6・配達員「良いお年を」の一言で師走であると分からせたのはうまい!
☆p8の柱。〇村山家・外観~玄関前。この書き方だと、ハンディカメラで、
対象を追って撮影するイメージになります。〇村山家・表 でよいのでは?
☆p9・イメージの柱にも照明の指定(夜)と入れましょう。
☆p13のト書:脇には、スナック菓子の袋。とすれば1行になります。
☆ラスト。マッチの燃えカスと共にあるのは、少女ならぬ中年のパパ��
雪まで降ってきちゃいます⛄⛄⛄
ドラマのラストは主人公で締めるのは基本。このままでも面白いのですが、
2行の余裕もあるので、喧嘩する村山姉妹を見せてもいいかもです(^^♪

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