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睦ぶ東京

 令和2年8月中旬。世の中はようやく自粛を解く動きにあり、その流れに東京だけが取り残されていた。神奈川県と東京都の県境に住む私はどうしても行きたかったトーハクの着物展に行くつもりで知り合って7年目になる友人に声をかけた。ちょうど、都内の観光地が観光客の減少で悲鳴をあげている時期だった。


 「せっかくだから、行ったことないところも行こうよ」

 こんな状況だったから2人で出かけることが久しぶりだった。Instagramで広告されていた都民限定の割引プランを予約して、私たちは上野と浅草へ向かった。

 展覧会の後、私たちは真夏日の14時を歩いた。自粛期間に読んだ本の話、放送が遅れて完結していないアニメの話、家であったおかしな話。どれもLINEじゃ話しきれなかったことだった。重く私に乗った何かが軽くなった気がした。

 今週末、また彼女と少し遠出をする。外の風はあの日より冷たく鮮やかになっているのだろう。

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