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Run away!!

4月はなんだか目が回るほど忙しかった。

クラウドファンディングの会社で働いていて、本来はファッションとアートの担当なのだけど、代官山débrisをはじめ、クラブ業界の方とのお繋がりがあり、ある程度内部事情も知っていることから、クラブやライブハウス向けの営業資料も作ったり。

別に「誰かに感謝されたい」とか「みんなのために何かしたい」とか、そういう慈愛の精神というのはあんまりない。
ただ自分にとって、とても大切な場所がもしもなくなってしまったらと考えると、何もしないで見ていることもできなかっただけだ。

THE ROOMのプロジェクトを皮切りに、全国各地の箱のプロジェクトがどんどん上がっている。その多くはCAMPFIREの優秀な音楽チームが担当していて、私は直接お繋がりのある方や、有難いことに「あずちゃんにお願いしたい」と言ってご紹介された箱のプロジェクトを担当している。
(特に藤沢chill out 酒場〜常夏〜オーナー/秘境祭/DRAMATIC BOYSの竜くん、DJ conomark a.k.a マサくん、RUBY ROOMメメちゃん。みんな大変な中で、いろんな人を紹介してくださり本当に感謝。みんな愛のある人たち。多くの人に愛されている理由がわかる)

箱のクラウドファンディングがどんどん上がって、一時的な補填ではあるけれど少しでもプラスのお金が生まれているのは嬉しい。

そして各プロジェクト内にある、アーティストからの「応援コメント」やプロジェクトページの「支援者」のタブにある、お客さんや関係者からのコメントには愛しかない。プロジェクトをやることで、シーンにある「愛」が可視化されていて、すごく胸が熱くなる。実際にプロジェクトをやってくれた箱は、そうした愛を再確認できてよかったと言ってくれている。

RUBYROOMに寄せられたアーティストからの応援コメント

RUBY ROOM存続支援 ~KEEP THE BEAT~ - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) 2020-04-25 23-23-18

青山蜂の支援者から寄せられたコメント

青山蜂の存続にどうかご協力をお願いいたします!の支援者一覧 - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) 2020-04-25 23-25-04


クラファンは寄付ではなく、ECと同様に物販をしているだけだ。ただ、想いを綴ったり、リターンを工夫することで「気持ちの乗ったお金の流れ」が生まれる仕組みになっている。プロジェクトを立ち上げたり、支援をすることで「お金」に対する価値観が少しずつ変わっていくのだ。これはまず体験してみないとわからない。

いつかクラウドファンディングがなくても、愛のある消費が当たり前に循環していく世界になったらいい。そんな世界を目指して、ずっとサービス提供という布教活動をしているので、これから消費のあり方が少しでも変わるといいと願っている。

でも、この状況の中でずーーっと苦しいことがある。

それは、アーティストやDJなど、音楽シーンの根源を創造する人たちへの救済措置がないことだ。
(もちろん美術界や演劇界など全てにおいて言えることだけどここでは音楽シーンに絞って話をする)
むしろ、彼らが前述の箱のプロジェクトを積極的に応援したり、先頭に立って政府に助成金を求めたり、みんなを先導してくれている。

そもそも、アーティストというのは、感受性が高い。だからアーティストになるのかもしれないけれど…。
だからアーティストの方が一般市民よりも世の中にある違和感(政治や資本主義や差別など)に気付きやすいのだ。
その結果、これまでも今も、彼らが先陣を切って政治批判をしたり、時代を切り拓こうとしてくれている。

でもちょっと待ってよ。

今、この状況の中で表現の場を無くしてしまった彼らは、収入も0になり、すごく厳しい状況にある。クラブやライブハウスと同じくらい、いやもっと苦しい状況にある。クラブやライブハウスも、もちろんすごく大変だ。でも、様々な人が関わり音楽だけでなく飲食も提供する「サービス業」として成り立っている「箱」と、個人のクリエイティブ活動を生業にするアーティストとでは、社会的な立場が全く違う訳で。

「ビジネス」として成り立っている箱と、「芸術活動」を行なっているアーティストでは、国からの助成や融資の条件も違う。さらにアーティストの場合、そもそもビジネスを目的に活動している人は少ないはずだ(儲けることを目的にアーティストをやっている人もいるけど)

そもそも論でいえば、コロナとか関係なく、インディペンデントなアーティストたちは社会的地位が低すぎる。音楽然り、アート然り、お金になりにくく、資本主義社会において地位が低くなってしまう。結局今の社会では、知名度があったり、著名人のお墨付きがあったりするとそれが評価軸になって、作品の価値が爆上がりしたりする。そうすると、アーティストとしてお金を稼ぐことができたりするのだけど、それってなんか変だ。

だって芸術って、個人の内側から生まれてくる表現だし、人がそれぞれみんな違うように、「みんながいい」と言うから優れているとかないはずだ。それよりも、純粋に自分の内面を表現しているその行為こそが尊い。そうした純粋性を孕んだ作品ってやっぱり心に響くものだし、お金では買えない「心の豊かさ」を与えてくれる。でも、物質的な世の中では、そういう「心の豊かさ」を与えてくれる精神性の高い音楽はなかなか評価されにくかったりする。メインストリームでみんなが求めるのは、わかりやすく盛り上がる曲だったり、歌詞が「エモい」ものだったり、時代性にあったようなものばかりだから。

で、そういう精神性の高い作品を作ったり、奏でるアーティストの人たちは、今このコロナ禍で収入だけではなく、精神的にもしんどい部分があるんじゃないかって思う。めちゃくちゃな政府へのイラつきとか、不安な状況の中でどんどんあぶり出されている人の汚い部分とか、そういうウイルス以外の「生きづらい空気感」を、感受性の高いアーティストたちはきっと人一倍感じているはずだ。

そんな中でも、クラウドファンディングを応援したり、配信をやったり、物販をしたり、そういう「クリエイティブ以外」のことをしなければいけない状況にあるっていうのが、私はとてもしんどいし、悔しい。それに、配信では自分の本当に表現したいことができず、やりたくない人もいるはずだ。そして、「作品を対価にしてお金を稼ぐこと」すらしたくない人だっているだろう。そんなことを言うと「お金にならないならやめればいいじゃん」とか言う人も出てきそうだけど、でもそのくらい純粋に自分のクリエイティブにこだわっているという行為はすごく尊いと私は思う。

だからここ最近、そういうアーティストたちには「森(俗世間と離れたところ)に逃げて!!」と心で叫んでいる。このおかしな世界の空気感に影響されず、純粋にクリエイティブと向き合えるような環境にいてほしいから。

本当は、そうした音楽に助けられた私たちが、何かできればいいのだけど、私をはじめ、ディープミュージックラヴァーはあまり裕福ではないのも事実。レコードや音源の購入、配信への投げ銭だけじゃ全然足しにならないし、もっと抜本的な改革が進まないと、クリエイティブが止まってしまう。

前回のブログでも書いたけど、コロナによって一掃された「新しい世界」では、「心の豊かさ」を大事にする人が増えるはずだ。その時のためにも、心を豊かにしてくれるアーティストのクリエイティブは絶対に止めてはいけない。

ではどうすればいいのか。
私は音楽作品やライブのチケットを売るという「ファンビジネス」として成立している今の体制を見直して、クリエイティブ活動に対しての継続的な支援ができる仕組みを作るべきだと思う。それで制作環境が十分にあったり、表現ができる機会が増えたりしたら、きっともっと素晴らしい作品が生まれ、人びとの心は豊かになる。
そのためにはファンからの支援だけではなく、国や企業といった大きな資本から、継続的な資金が捻出される必要がある。つまり、これからの社会ではメセナ活動や、パトロン(本来の意味での)の存在が重要だ。

メセナ(フランス語: mécénat)とは、企業が主として資金を提供して、文化・芸術活動を支援することである。(中略)mécénat は、フランス語で「文化の擁護」を意味する。これは、ローマ帝政時代の初代皇帝アウグストゥスの政治的助言者であったガイウス・マエケナスの名に由来するものである[2]。彼は経済的に恵まれないウェルギリウスやホラティウスといった若い詩人たちを後援者したことでも有名で、文化の擁護や育成に尽力した[2]。
パトロン(英: patron)とは、後援者、支援者、賛助者、奨励者、または特権を持つ人や財政支援をする人をいう。(中略)美術史や音楽史においてのパトロネージュは、王や教皇、資産家が、音楽家、画家や彫刻家等に与えた支援を指す。また、教会聖職禄授与権、得意客が店に与えるひいきや愛顧、また守護聖人を指すこともある。

(どちらもwikipediaより引用)

アフターコロナの世界で、メセナやパトロンシステムが構築され、富の再分配が実現すれば、きっともっと息がしやすい世界になるはずだ。

なんだかまとまらないブログになってしまったけど、最後に先日読み終えた、石田昌隆さんの著書「黒いグルーヴ」の中にあるFela Kutiの言葉を書き起こしておこう。

一九八一年六月二十一日に、精霊にとりつかれて三時間ばかり向こうの世界に行っていた。そのとき、いま自分がどういうミッションを担っているのか、いまこの世界はどういう状態にあるのか、というようなことをいろいろ教えてもらった。政治とか社会の機構はフェイクだ。素直にならないとスピリットをつかむことはできない。わたしには美しい未来が見える。ナチュラルなことが次々に起こる。これからはよきものとあしきものが分離する。そのときわたしのシュラインは世の中にパワーを送り出す重要なソースになるだろう。テクノロジーや科学ではできない変化が近いうちにかならず起こる。それは今年かもしれない。その変化ははじめ、悲劇的なことに見えるかもしれないけど、よきことにつながる変化だ。そのためにも教育がもっとも大切だ

前回のブログでも書いたが、私はこの先の世界でレベルミュージックの先にある音楽が聴きたいと思っている。Bob MarleyやFela Kutiのように、レベルミュージックを産んだアーティストの存在は偉大だ。だからこそ、彼らが残してくれた作品から「気づき」を得た人たちが、それぞれ行動を起こし、世界を良い方向に変えていく必要がある。時代はそういうターンに差し掛かっている。

これからは、一人の革命家やアーティストに賛同し、彼らに未来を託すのではなく、ひとりひとりの市民が革命家となり、行動を起こす時代であってほしい。




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