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Looking for New World

新型コロナウイルスは、地球の膿出しだ。
だから私はすごく、ワクワクしている。
この壮大な膿出しによってもたらされるものを挙げたらキリがないけれど、私は音楽という無形のものを書く人、そして音楽を愛している人として、アフターコロナにはもっともっと音楽を取り巻く環境が良くなると思うのだ。
だからとってもワクワクして、早く未来の、新しい世界が見たいと思っている。

3月上旬ごろかな。友だちにうっかり「ワクワクする」なんてメールしたら、不謹慎だと咎められ、公の場で言うのは控えてた。
でもそろそろ、アフターコロナの世界について志向する人が増えてきたような気がするから、なぜそう思ったか、ここに書いておこうと思う。

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なぜ、こんな異常事態にワクワクするのか。
だって地球上の人間以外はみんな本来あるべき姿に戻ってて、次は人間の番だと思うから。人間がもっと人間らしさを取り戻したら、きっと音楽は、もっと人間にとって尊くて大切なものになると思うのだ。

人間のエゴが行き過ぎた地球で、大気汚染も改善されて、水も綺麗になって、動物園に閉じ込められたパンダも交尾を始めた。
これはとってもいいことだ。

じゃあ人間はどうだろう?
目に見えないウイルスに怯えたことから、人種差別や政治批判、買い占めやフェイクニュースのシェアなど、目も当てられないほど取り乱している。
確かに、日本の政府の対応は最悪。怒りも湧くけど、目の前に「フィジカルな死」と「経済的な死」という二つの大きな試練が降りかかっている中で、怒ったり不安がったりするだけじゃ何も始まらない。というか、エネルギーの無駄遣いだ。

もう一つ。
このウイルス問題のポジティブなことは、地球上全員に降りかかっている問題だということ。
これまで、9.11や3.11やシリアの紛争はそこにいない人にとっては、ニュースの中の出来事だった。でも今回は違う。置かれている環境は違えど、等しく向き合うべきは「COVID-19」という目に見えない敵だ。
だから、国がどうとか、政府がどうとか、そういうことを取りただすことよりも、もっとひとりひとりが「人類として、どう問題解決をするか」を考えなくてはいけないのだと思う。さらに言えば、これから先の未来でも、そうした意識がすごく重要になる。だって人口は増え続け、地球環境は破壊され、現在進行形で地球は壊れているから。

じゃあ、人類はどうなっていくのだろう。
まず、前述のようなエゴまみれの人間は淘汰されていくだろう。それこそ「フィジカルな死」もしくは「経済的な死」のどちらかに飲み込まれてしまう。
上記二つの死の制裁を受けずとも、エゴまみれの人は多分この先生きにくくなる。
このコロナワールドをサバイブする人はきっと、「人間らしさ」を取り戻す人だ。異常事態に怯えるのではなく、人類の問題として柔軟な思考を持ち、周りと協力したり、事態を切り抜ける人。そんな人たちが、きっとサバイブしていくはずだ。

そして、そうやって「人間らしさ」を取り戻した人たちは、感性が鋭くなるはずだ。感性とは何か。ウィキペディアによれば「感覚に伴う感情・衝動や欲望」とある。つまり自分の「魂の声」みたいなものに素直に反応する人が増えるんじゃないか。そんな風に思うのだ。

そんな人が増えたアフターコロナの世界では、音楽は「商業的なコンテンツ」ではなく、もっと人にとって重要なものとして扱われるはずだ。

「魂の声」に耳を傾けるとは、ふと流れた美しい音楽に胸が震えたり、高揚したりする感覚に敏感になることだ。

今「みんなを励まそう」みたいな即興の音楽もネット上に上がっているけれど、それは一時的な絆創膏でしかないと感じる。なんとか辛い心を奮い立たせてくれるかもしれないけど、本来音楽(芸術)はもっと純粋であるべきだ。もっともっと純粋な美しいグルーヴや音色にこそ、心の奥底にある魂が震わせてくれる。
オンライン配信もバンバン上がっているけれど、これも一過性のムーブメントに過ぎないと思う。音楽という生の体験を映像で流すのであれば、リアルではできない体験をもたらさないといけない。カメラワークだったり、編集だったり、音質だったり、そうしたクリエイティブをとことんこだわって、映像だからこそ楽しめるコンテンツにしなくてはいけないし、そうしたものにこそ、魂は震わされるのではないだろうか。

私自身も、このコロナ渦で家にいる時間が増え、音楽を聴く時間が増えた。そうすると、何気なくスピーカーから流れる曲の中でも、ハッとしたりすることもあれば、BGMとしてやり過ごすこともあったりして、自分の中の感覚がどんどん敏感になっているようにも感じる。
Spotifyの中にある自分が生まれる以前に作られた曲や、SoundCloudに上がっている名も知れない誰かのdemo音源など、インターネットの中には時空や場所を超えて音楽が溢れていて、その中で「魂が震える曲」に出会うたびに、それを生み出したアーティストへの感謝が止まらないのだ。

配信コンテンツは、音質と画質が悪ければ絶対に見ないけど、Tiny desk ConcertBoillerRoomなど、演者と演出共に、クオリティにこだわったコンテンツはやっぱり見ていてアガる。

だから、このコロナワールドで「人間らしさ」を取り戻す人が増えたら、音楽を、魂を喜ばせてくれるものとして捉える人が増えるんじゃないかって思うのだ。

今の音楽業界では、ファンサービスがうまいアーティストの曲や、「みんながいい」という曲だったり、そうしたものにお金が集まり、ビジネスになっている。その結果、有名だったり人気がなければアーティストとしてお金を得ることも難しく、才能があっても貧困にあえぐ人もいる。

しかしそもそもは、音楽はビジネスツールでもなんでもなくて、ただ人間の持つ感性が音というものに変換されていくものだ。だから決して商業的なものになるはずはない。だからこそ、自分の感性と合致した音楽に出会った時は、「心の奥底で繋がっている感じ」すら感じてしまうはずだし、自分にとってとても重要なものとなる。そんな人がたくさん増えたらきっと、自分の好きな曲を作ったアーティストに正当な対価を払い、アーティストはそのお金でクリエイティブを発揮するといった、美しい循環が生まれるはずだ。

トレンドなんてなくていい。友達と好きな音楽が違ってもいい。自分が本当にいいと思ったものをいいと言える人が増えたらきっと、もっと音楽を取り巻く環境は良くなる。

魂を震わせてくれる音楽が生まれ続けるためには、そのクリエイティブを発揮するアーティストへの支援が必要不可欠だ。有名無名がアーティストの収入や機会に影響を与えることなく、必要な所に必要な音楽が鳴り響く。アフターコロナの世界はそんな風になってほしい。いや、なるはずだと信じている。だってこのコロナ問題によるパラダイムシフトは、世界中で起こるはずだからだ。たとえ、国内にその音楽をいいと思った人が100人でも、世界をフィールドに思えば、1万人にもなり得るから。

音楽が有名無名で判断されることなく、純粋に魂を喜ばせてくれる人が増えれば、アーティストの貧困問題や社会的地位の低さなどの問題がなくなると思うから。
そうすれば、もっと素晴らしい音楽が世界中に鳴り響き、人びとの心は潤うだろう。

だから私は、アフターコロナの世界へのワクワクが止まらない。
新しいそんな世界で鳴り響く音楽はどんなものだろうと考えるだけでワクワクする。

そういえば、今日スピーカーから流れたBob Marleyの「No Woman No Cry」を聴いて自然と涙が流れた。ボブマーリーは偉大だ。やっぱりレベルミュージックの持つ力はすごい。苦しい状況を超えていくためのパワーがある。

でも、もうこれから先の未来では、レベルミュージックの先にある音楽を聴きたいと思った。人間が人間らしく生きて、健全な魂を持っていれば、世の不条理に惑わされることなく、芯を持っていられるから。きっとそんな状態の魂に響くのは、どこまでも美しく、純粋な音楽だ。

新しい世界でそんな音楽に出会えるのが、私は楽しみで仕方ない。

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