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水を縫う

通勤電車の中で読んで、何度も涙が出そうになった。
気持ちの噛み合わない家族の思いが痛いほどわかる。自分の思いを飲み込んで生活している家族の姿が、とても歯痒い。家族の、家族でいるが故の葛藤なのであろう。

父として、母として、妻として……ではなく、あなたらしく自分の人生を生きてほしい、そんな作者の思いに気づかされる。

私が、良い母、良い妻、良い娘、良い人をやめたのは、5年ほど前であろうか。それまでの生活と比べると、ずいぶん生きやすくなった。私は私で良いのだと思えるようになった。

刺繍が好きな高校生の弟、かわいいものが苦手な結婚直前の姉、良い母になれなかった母、良い父になれなかった父、良い嫁を務めてきた祖母、姉の結婚を期に彼らは「自分らしさ」に向き合っていく。

家族のあり方はそれぞれであるが、その心は偽りのないものでなければならない。

少し背筋の伸びる思いがする。

すべての家族の幸せを願う。

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