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名文の中に生きる紀の川

カントリースケッチ 今月で70回目!

和歌山出身の作家・有吉佐和子さんの作品『紀ノ川』を読んでから紀の川に親しみを感じるようになりました。
他、最近読んだなかでは『女二人のニューギニア』滞在記が面白かったです。並外れたパワー、好奇心と行動力に驚かされます。(まさかマラリアにもなるなんて…)

毎日新聞イラストコラム
カントリースケッチ
No.70
【名文の中に生きる紀の川』

 ただそこにあるだけとしか感じていなかった紀の川。和歌山市出身の文豪、有吉佐和子の「紀ノ川」を読んでからは紀の川の見方が変わった。小さな川の流れを呑み込み大きな川となる姿は少し怖い。一方で、強い美しさも兼ね備えている。
 河川敷の遊歩道から海へと続く紀の川を眺めていると、小説の中で描かれた女三世代の生き様がありありと思い出される。悠々とした気持ちになると同時に、なぜか無性に寂しくもなる。それはときおり背後から聞こえてくる電車の音のせいかもしれないし、明治に作られた赤い鉄橋の佇まいのせいかもしれない。なんにせよ、時代を超えてもなお熱を帯びている作品はこうも読後感が続くのか、と驚く。読んだのはずっと前のことなのに。
 来月中旬から来年夏頃まで河西橋の架替工事が始まり、しばらく付近の河川敷は通れなくなる。残念だが、その間に紀州三部作の残り「有田川」と「日高川」を読むべし、ということかな。

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