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【山梨リニア実験線】見学施設「どきどきリニア館」を見に行く

はじめに

 山梨県にはJR東海のリニア実験線があります。実験線の総延長は42.8キロメートル、8割強の区間をトンネルで貫いています。
 ⼭梨リニア実験センターは中間地点である都留市に所在します。隣接して山梨県立リニア見学センター「どきどきリニア館」があるほか、不定期に体験乗車会を実施しています。幸いにも筆者は、体験乗車の機会を得ました。
 本稿では、山梨県立リニア見学センター「どきどきリニア館」を中心に紹介します。そしてnote200回となる次回、体験乗車会の模様を紹介します。
 トップ画像は展示されている1世代前の実験車両です。

こちらは、現役のL0系実験車両

山梨リニア実験線

 山梨リニア実験線は、起点:山梨県笛吹市境川町から、終点:山梨県上野原市秋山地区までの全長42.8キロメートルです。全体の82%、35.1キロメートルがトンネルで構成されています。
 実験線は、1990年(平成2年)から工事が始まります。しかし用地買収の遅れなどから、中間部分18.4キロメートルを先行区間として整備を進め1996年(平成8年)より先行区間による走行試験を開始しました。
 その後、2008年(平成20年)から延伸工事に着手し、2013年(平成25年)延伸工事が完了し、全長42.8キロメートルを使っての走行試験を開始しました。

実験線ルート概要図
出展 : JR東海HP

 1977年(昭和52年)旧国鉄により宮崎県にリニア実験線が作られましたが単線で7キロメートルと距離が短かったことから、昭和時代の終り頃、新たな実験線の建設計画に対し誘致合戦が行われました。
 トンネル、急勾配、急カーブなど実験に必要な地形に加え、将来の営業路線への転用を見据え山梨が選定されました。公式な資料にはありませんが、山梨出身の金丸信元自民党副総裁の働きかけによるものと言われています。おかげで全国新幹線鉄道整備法(整備新幹線)に含まれない中央新幹線の建設が確約されたのです。
 そして実用化の目途がついたことから品川-名古屋間を2027年開業のリニア中央新幹線として建設が進んでおりました。ただし静岡県の前知事の反対による工事の進捗の遅れ、開業時期は2030年代以降になると思われます。

 実験センターの至近には「道の駅つる」がありトンネルとトンネルの間の高架橋がよく見えます。

「道の駅つる」から見える実験線
中央自動車道富士吉田線をまたぐ小形山架道

 こちらの画像は、甲府盆地の笛吹市境川町付近のリニア高架橋です。俳人飯田蛇笏、龍太の居宅「山蘆」はこの先です。

「山蘆」を訪ねたときに撮影 2024年6月

どきどきリニア館

 2014年(平成26年)、実験線の延伸工事完了に伴い、山梨県立リニア見学センターの新たな見学施設としてとしてに開館したのが「どきどきリニア館」です。

 こちらは誰でも見学可能な施設です。実験車両の走行も展望デッキから見ることができます。走行スケジュール、体験乗車の募集はJR東海のリニア特設ページから確認できます。

一般の駐車場からは遠い
エントランス
館内を紹介するチラシ

「リニアを学ぶ」実験車両MLX01-2

 1階は開発の歴史の紹介とかつて使用していた実験車両を公開しています。
 展示車両は1世代前の車両MLX01です。1995年(平成7年)に山梨リ二ア実験線用に開発された車両です。
 先頭車MLX01-2はエアロウェッジ型という丸みを帯びた楔形の先頭形状です。

MLX01-2(エアロウェッジ先頭車)

 ちなみにもう1種類の先頭形状であるダブルカスプ型は鳥のくちばしの形です。MLX01-1がJR東海の鉄道博物館「リニア・鉄道館」にて公開されています。

MLX01-1(ダブルカスプ先頭車)
出典 : リニア・鉄道館HP

 2003年(平成15年)に世界最高速度となる時速581キロメートル記録しています。実験線の延伸工事が始まる2011年(平成23年)まで走行していました。
 この先頭車ですが、運転席に窓がありません。単眼のように見えるものは、カメラとライトが組み込まれたものです。時速500キロメートル運転となるため、運転士による操作ではなく、外部から制御しています。
 将来的にも営業線は運転手に依らない無人運転が計画されています。

現役時の写真と解説文
中に入ると座席が並びます
導線確保のためか反対側は座席が撤去されています

 こちらの展示は、リ二ア実験車両の変遷を模型で紹介しています。
 初期の型式は無人走行用です。ガイドウェーも逆T型にまたがる形でした。その後現在のU字型が開発されていきます。

手前から奥に向かい新しくなる

 さらに山梨リニア実験で走行した車両の模型です。下からMLX01型(ダブルカスプ型編成)、MLX01型(エアロウェッジ型編成)、MLX01型(ロングノーズ先頭車)です。

MLX01型、先頭形状が異なる

 そして、現役実験車L0系のうち、改良型と呼ばれる最新型の先頭車です。

L0系改良型

 かつて宮崎実験線の実験車MLU001に取り付けられていた超電導磁石です。「MLU」の「U」はガイドウェーがU字型を意味します。「ML」は「magnetic levitation」で磁気浮上の意味です。

超電導磁石

 高温超電導磁石(模型)です。世界初の永久電流を達成したものの精巧な模型です。
 電気抵抗が限りなく0になる超電導現象を起こするための温度が-269度だったものが-253度で可能になったことから、高温超電導といいます。高温と聞く印象からほど遠いですが。しかし機器上で冷やすことが可能になり車両への搭載が可能になったといいます。

高温超電導磁石(模型)

「リニアを体験する」ミニリニア

 2階の展示は、実際に乗れるミニリニアなど、リニアの世界を体験することができます。
 また、走行試験実施中には窓の外は実験線のリニアが通過します。窓側に走行位置が分かるモニタがあります。

2階の概観

 こちらの磁石を張り付けたガイドウェーを走る模型など、科学館的な体験系の模型があります。

走らせるところが見たかった

 そして人が載れるミニリニアです。リニア車両と同じように磁石の反発力で浮上して引き合う力で推進しています。ただしこちらは超電導磁石ではなく永久磁石を使用しているとのこと。スピードも歩くより遅いです。

大人が乗っても楽しそう

「山梨の未来が見える」ジオラマと展望デッキ

  3階はジオラマとシアター展望デッキ、休憩用の展望ラウンジになっています。
 見学センターには、飲食施設はありませんので待ち込むか道の駅で食事をとることになります。

フロア図

 展望ラウンジから停車中のL0系が見えました。もちろん走行中なら高速で一気に駆け抜ける姿が見られます。通過時は一瞬すぎてシャッターを押しても撮影できません。

展望ラウンジから

 「山梨の未来が見える」などと大きなテーマを付けているのはこのジオラマが山梨の街並みを鉄道模型などで再現しているからです。ただしプログラム映像は観光案内の要素が強く、いまひとつです。

プログラム上映中のジオラマ

 そしてリニアシアターは、リニアに乗った雰囲気を映像と座席振動から体感できるものです。

リニアシアター上映中

わくわく山梨館

 もうひとつ見学用の建物があります。グッズ販売と観光情報用の施設である「わくわく山梨館」です。先行区間のみで実験をしていた時代の旧見学センターの建物です。

わくわく山梨館のほうがずっと手間にある
元見学施設の「わくわく山梨館」

 1階はリニアグッズや、山梨のお土産を販売しています。その名も「ショップ2027」2027年品川―名古屋間の開業にちなむ名前ですが、前述のとおり計画の遅れで開業は2030年代へ遅れることが確実になっており、悲しい名前になってしまいました。

エントランス
グッズの一部

 人気商品はプラレールのL0系車両とか。

プラレールL0系車両

 2階は観光情報コーナーになっています。ディスプレイ映像や観光パンフなどがあります。ほんとうに観光情報だけのフロアです。

観光情報コーナー

 3階が展望室です。旧見学センターだった時代からのある展望室です。二リア車両の走行位置も分かるようになっているので、こちらからでもよく見えます。

模型とパネルなど

 こちらの展望室のほうが停車位置に対しては近く見えます。

停車中のL0系

 ガイドウェーもよく見えます。横にびっしり超電導磁石が並んでいます。

板状の白い物体が超電導磁石

 そして、わくわくやまなし館の隣にやや薄汚れたコインロッカーになっている建物があります。延伸工事が始まる2006年(平成18年)までの使われていた乗車会の会場でありガイダンスルームの跡なのです。

いまはコインロッカー室

おわりに

 リニア実験線に隣接する見学施設の紹介でした。山間部へ少し入ったところにあり見学施設のほかは工場の一部のようでした。体験乗車会参加者のほかに夏休み期間中ということもあり、見学者で賑わっていました。
 次回は乗車会の模様を紹介します。

時速500キロメートルの車内


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