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【黒曜石体験ミュージアム】星糞の山を歩く

はじめに

 長野県長和町の「原始・古代ロマン体験館」の見学を終えて次に向かったのが同じ町内にある「黒曜石体験ミュージアム」(以下、ミュージアム)です。
 こちらは、黒曜石をテーマにした体験型の展示施設です。2004年(平16年)開館で、ブランシュたかやまスキーリゾート(長和町出資の第三セクター)の中に所在します。
 ミュージアムの背後の山には国史跡の星糞峠黒曜石原産地遺跡があり、中腹の「星くそ館」では黒曜石採掘の断層を見学できます。

黒曜石ミュージアム

 スキーリゾートの中を奥まで車で進むと、看板が見えてきます。原始・古代ロマン体験館からは10キロメートルは走ったように思います。長和町と共同して発掘調査をしている明治大学黒耀石研究センターが手前にあり、その奥の建物がミュージアムです。

「星くそ館」の案内板があまりに大きい

 建物は木を使った山小屋風の建物です。中央に開放的なエントランスに受付とグッズコーナーがあります。向かって左手が黒曜石に関する展示、右手が体験室が並びます。
 検温、チェックシートを書いてからチケットを購入して中に入ります。

チケットカウンタ(左)と「星くそ館」入山受付のスタッフ(右)

 館内の撮影は自由ですが、ほかのお客様に配慮をとのこと。夏休みでしたので体験室を中心には親子連れが多かったです。

展示室

 先に展示室を見学しました。展示室は意外と静かでした。

展示室の入口

 展示は、導入展示として黒曜石の採掘跡が移設されています。

 続いて、黒曜石ギャラリーとして照明を落とした部屋のケースに黒曜石の逸品が浮かび上がります。

まるでジュエリーのような展示

 旧石器時代に続いて、縄文時代と時代ごとに分けて黒曜石の流通や石器作りなどを説明していきます。

旧石器時代の展示
縄文時代の展示

 最後に、1955年(昭30年)の遺跡発見と地元の考古学者児玉司農武の業績を紹介しています。本格的な遺跡の発掘と研究はその後、スキーリゾート建設によるものとのことです。

体験メニュー

 体験メニューは個人向けと団体向けとがあり、個人向けは、黒曜石を使った矢じり作り、ペンダント作り、勾玉、織物などおよそ20種類もあります。料金は300円から2000円。所要時間から受付終了時間があります。また、感染対策で休止中のメニューもあるので事前に確認が必要です。
 体験室は3部屋がありますが、中をのぞくと親子連れで大盛況でした。

星くそ館

 ミュージアムの隣の虫倉山中腹の星糞峠黒曜石原産地遺跡(国史跡)に作った展示施設です。2021年(令3年)の開館の新しい施設です。
 地元では黒いキラキラとした透明な石たちを「星糞」と呼んでいましたが、江戸時代から呼んでいたようですがはっきりとしたことはわかっていないそうです。
 「星くそ館」へ行くには、エントランスにある受付スタッフに申し込み(無料)をします。すると、大きな鈴を渡されます。「クマが出るのですか?」一瞬の緊張です。クマが出ることもあるそうです。
 鈴をカバンにつけて、チリンチリンと鳴らしながら山に向かいます。

いざ、黒曜石の山へ

 高齢者、妊婦さん、足が不自由な方はミュージアムから送迎するそうですが、特に理由が無ければ徒歩を勧められます。

整備された山道を進みます

 手渡されたマップ通り山を登ることおよそ30分、星くそ館に到着します。
黒曜石を採取した約7000年前から3500年前の地層の断面を剥ぎ取って展示しています。この場所は縄文人による黒曜石採取を裏付けた「第一号採掘址」の上に建設しています。

つい裏口かと思ってしまった入口

 剥ぎ取った地層にプロジェクションマッピングで20分ごとに解説映像を投影しています。

左右に地層を見ながら進むと出口です
破片が転がっています

 周囲を歩くとすぐに、黒く透き通った黒曜石の破片が見つかりますが、持ち帰りはご法度。眺めるだけにしましょう。
 登ってきたルートで山を下り、ミュージアムの受付に鈴を返して、星くそ館の見学は終了です。

おわりに

 ミュージアムの展示室で遺跡から出土した矢じりや尖頭器の美しさに感動しました。でもその後に山へ入りパラパラと散らばる黒曜石に会ったほうが感動的でした。
 筆者には、飾られたケースの中の矢じりよりも、野に捨てられた光る石の破片のほうに生活の痕跡が感じられました。
 いずれにせよ、いい体験になりました。

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