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【西嶋和紙の里】「望月勅雄と墨酔会の歩み」を見に行く

はじめに

 西嶋和紙の里は、和紙で有名な身延町西嶋地区にある、美術館を併せ持つ和紙の体験型施設です。
 この和紙の里は、1998年(平成10年)、当時の中富町によって、なかとみ和紙の里としてにオープンしました。2004年(平成16年)に下部町、中富町、身延町が合併し現在の身延町となり、現在は身延町の運営となっています。
 2021年(令和3年)、西嶋和紙の里と名称変更するとともに、構成施設のひとつであるなかとみ現代工芸美術館は、みすきふれあい館に名称変更されました。

西嶋和紙

 西嶋和紙の書道用紙は、にじみが特徴です。また、やわらかく、書きやすいと言われています。それは、故紙、稲藁などの短い繊維が主原料のためです。ただし、薄くもろいため紙漉きには高い技術を要求されます。
 西島和紙の始まりは、武田信玄公の家臣、望月清兵衛が1570年(永禄13年)伊豆にて「修善寺紙」の製法を学んで持ち帰ったことに由来しています。
1571年(元亀2年)、西嶋ではじめて和紙を製造し信玄公に献上したところ信玄公は大変喜び、武田割菱の朱印を清兵衛に送り、西嶋及びその附近で紙を漉くことと、清兵衛を紙の役人に命じたと伝わります。
 江戸時代までは西嶋を中心とする峡南地域(山梨県の南部)において盛んに製紙が行われましたが、明治以後は除々に少なくなり、現在では西嶋だけとなっています。

駐車場の隅にある由来の碑

参考URL
http://www.nishijima-washi.jp/about/index.html
西嶋和紙工業協同組合ホームページ (2022.10.25閲覧)

西島和紙の里

 西嶋和紙の里は3つの建物があり、その中に4つの施設があり構成されています。
 ・手漉き和紙の体験施設「漉屋なかとみ」
 ・和紙や紙製品の販売施設「紙屋なかとみ」
 ・郷土料理の飲食施設「味菜庵」
 ・美術等の展示施設「みすきふれあい館」
です。

建物の配置図と展示の案内

 また、2001年(平成13年)6月は、天皇(現上皇)ご夫妻ごが訪問され、西嶋和紙や紙漉工程をご覧になっています。

両陛下行幸の碑

 正面に向かって左手にある建物に、体験施設「漉屋なかとみ」と販売施設「紙屋なかとみ」が入っています。
 入り口から入ると、手漉き体験の受付があります。また周辺の観光案内も兼ねていて、多数案内パンフが取り揃えてあります。

陛下訪問の写真とか、サイン色紙がいっぱい

 手漉き体験は有料になります。うちわやタペストリーなど6アイテムあり、所要時間は乾燥を含め50分~90分です。和紙だけを漉くこともできます。

体験コーナーは誰もいませんでした

 「紙屋なかとみ」は、外からの入口がありますが、紙漉き体験のエリアから廊下でつながっています。途中には宇宙飛行士若田光一さんが国際宇宙ステーションで書いた書が展示されています。

若田光一さんが西嶋の和紙に書いた書

 「紙屋なかとみ」は全国の和紙などを多数取りそろえています。書をたしなむ方や、アートの作家さんなどの中には、こちらまで出向いて購入されている方も多いと伺ってます。
 また、紙製のアイテムもいろいろと取り揃えてあります。季節に合わせた商品も多数あり、見ているだけでも楽しくなります。

落ち着いた雰囲気です

 「味菜庵」は正面から見て、左手の小さい建物になりますが、昼営業のみのため訪問した時間には閉まっていました。

別の日に撮影した営業中のカット

みすきふれあい館

 「みすきふれあい館」は中央の奥にあるひときわ大きな建物です。展示があるときのみの開館です。元は「なかとみ現代工芸美術館」でしたが、2021年(令和2年)休館ののち、みすきふれあい館として再オープンしました。もっとも名称のほか表立って違いは分かりません。一説には、美術館からふれあい館にしたことで学芸員の配置義務がなくなるということもあるようです。

かなり重厚なエントランス

 入るとチケットカウンターがあって、呼び鈴を鳴らすと職員がやってきました。チケットは名刺サイズの西島和紙にプリントしたものでした。
 エントランスロビーには、ソファーがあって美術雑誌も最新号が取り揃えてあります。ピアノもあったりして、行政の規模からしてだいぶ立派なものです。

ピカピカのロビー、しかも貸し切り
反対方向ピアノの裏から
雪見窓から庭を望む

望月勅雄と墨酔会の歩み

 望月勅雄(ときお)氏の作品展を鑑賞にやってきました。
 氏の作品展は、一昨年から毎年行われていて、本年は3回目です。筆者はこれまでも足を運んでおります。

風景と植物が今回の作品テーマ
裏面は、会のみなさんの作品
展示室の前

 望月氏は地元で郵便局長を勤められ退職後に水墨画を習ったそうです。御年92歳 これまで2回は、望月氏の作品のみでしたが、望月氏の水墨画の会員の作品展となります。
 2つある展示室を使用していて、手前の展示室が墨酔会会員の作品でおよそ25点です。奥の展示室は望月氏の作品でおよそ50点です。過去の2回展示をしていますが、毎回、別々の作品を出品なさっておられます。
 望月氏の作品は地元(身延など県の南方面)では有名なようです。木喰の里微笑館には、氏の描いた四国堂の水墨画が他の寄贈作品らとともに飾られております。
 今回の氏の作品は植物画と風景画をテーマに展示されていました。たいへん素敵な作品です。

望月勅雄
昭和5年、身延町塩沢に生まれる
平成3年3月、郵便局を退官
平成3年9月、山梨文化学園絵画講座入門
平成9年10月、山梨文化学園講師
平成19年、南部町に「ギャラリー墨酔」開館
平成25年、墨酔会主催
令和2年9月、「望月勅雄が生み出すふるさとの色」開催
令和3年9月、「望月勅雄が描く花と実と」開催

館内の作者略歴より抜粋

おわりに

 西嶋和紙の里は、紙漉き体験など、半日近く楽しめるスポットです。周辺は地元スーパーと葬祭場ぐらいしかないところですが、観光シーズンには他県から訪れる人が多いです。
 ところで、せっかくの水墨画の展示会でしたが、唯一残念な点を指摘します。観覧料(300円)を徴収するのはいかがなものでしょうか。望月氏のレベルはたいへんに高いことは分かります。また筆者も鑑賞目的で参りました。しかし、みすきふれあい館と名乗る以上は、市民ギャラリーです。また会員の作品がそのうち半分ならばなおのことです。ぜひ再考を期待します。


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