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【勝沼の甚六桜】スイッチバック駅の跡に咲く桜(2023.3.26)

はじめに

 JR中央本線の勝沼ぶどう郷駅は、甲府盆地を望む山の上にあります。かつてスイッチバック駅でした。現在スイッチバックの引き込み線跡は公園となっていて、シーズンになるとおよそ1000本の桜並木に包まれる名所のひとつになっています。
 訪れた日はあいにく小雨が降る天気でしたが、引き込み線跡の桜の様子を紹介します。

甲府盆地を望む

甚六桜

 この桜並木は甚六桜と呼ばれています。勝沼ぶどう郷駅のある菱山地区の後継者グループ「甚六会」によって、1977年(昭和52年)からソメイヨシノの苗木が植えられ、手入れされてきました。その数はおよそ1000本となっています。

駅建物より下り(甲府方面)
ゆるくカーブしています

 途中、当時のホームの一部が残されています。ホームの上にもしっかり育った桜の木が花をつけています。

保存されている旧ホームの一部
旧ホームの説明版
現在のホームと駅名標

 桜は引き込み線の跡である南側の他、線路を超えた北側へも広がっています。
 甲府方面へ進むと本線がだんだんと低くなってきて、この先で合流するような形になっています。

現在のホームの甲府方先端
本線と引き込み線跡の合流点は近い

勝沼駅とスイッチバックの跡

 駅名は1993年(平成5年)に勝沼駅から勝沼ぶどう郷駅に改称されています。
 中央本線の甲府開業は1903年(明治36年)です。それより遅れること、1913年(大正2年)に地元からの要望で勝沼駅として設置されました。
 笹子トンネルからの急勾配を避けるという地形上の制約から線路は塩山駅へ向かい大きく迂回しています。その途中の菱山地区に駅が設けられました。甲州街道の勝沼宿と離れた山の上です。

 1968年(昭和43年)に複線化と電化が完成したことでスイッチバック方式は役目を終え、ホームは現在の勾配のある本線移されました。
 農協の倉庫前の広場にEF64電気機関車が静態保存されています。2021年(令和3年)にクラウドファンディングにより資金を集め塗装の塗り直しを行っているため保存状態は良好です。

EF64電気機関車と桜

 この先に大日影トンネル遊歩道へ上がる階段があります。すぐ隣にスイッチバックの引き込み線の終端となる橋脚の跡が確認できます。

解説板と向こうに見える橋脚

大日影トンネル遊歩道

 駅の上り方(東京方面)には、中央本線開業の明治36年より平成9年まで使用されていた大日影トンネルと深沢トンネルの2つのトンネルがあります。2005年(平成17年)JR東日本から旧勝沼町へ無償譲渡され、2007年(平成19年)、大日影トンネルは遊歩道、深沢トンネルはワインカーブ(貯蔵施設)として整備されました。
 大日影トンネルは全長は 1367.8メートルです。笹子トンネルと同時期に作られたレンガ積みのトンネルには蒸気機関車時代の煤などが残っています。

現在の上り線と下り線(左2つ)とトンネル遊歩道(右)
トンネル遊歩道の説明版

 しかし、その後トンネル内の漏水や劣化が激しく2016年(平成28年)より閉鎖が続いています。修復費用が多額になることから今後の方針が決められずにいましたが、今後通行できるよう修復することが決定しています。

閉鎖の看板
トンネルのことを伝えるパネルがあります

おわりに

 引き込み線跡に作られた桜の名所を紹介しました。県内の中央本線の駅はスイッチバックが数多く設置されていました。現在、スイッチバックはすべて廃止しています。桜としては、ほかに韮崎市の穴山駅の引き込み線の跡が穴山さくら公園として有名です。

EF64電気機関車の周りの桜




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