新宿〜青梅間43kmの「かちあるき大会」がなくなっていたから勝手に開催した
「あ~日帰りでバカみたいな距離歩きたい~!」
そんな人には、「かちあるき大会」をおすすめします。
歩き旅のルーツ「かちあるき大会」
そもそも「かちあるき大会」ってなんやねん、と思いますよね。最初に説明しておきます。
かちあるき大会とは、自己鍛錬を目的として、飲まない&食べないで、長距離を歩く大会です。
さまざまなエリアで開催されていますが、新宿〜青梅間の43kmを歩く大会は最も歴史が長く、2019年には100回を迎えていました。
青梅街道をゼッケンつけてずらずらと歩く人を見たことがある人、いるんじゃないでしょうか。それです。
私は小学生のころ2回参加したことがあります。父親に手を引っ張られて感情ゼロで歩いていたので、「自己鍛錬」になったかは微妙ですが、無我の境地で悟りを開きそうになりました。
そのときは43kmを7.5時間くらいで歩き、少年・少女の部で表彰されてました。いま考えると時速5.7kmを7時間以上継続はエグすぎる。手を引いていた父親のスピードも早すぎる。
そんな経験があったものの、中学、高校、大学は歩き旅から離れていました。
それから社会人になり、コロナ禍になり、「密を避けた旅行のしかた」として、消極的な理由で始めた東海道歩き旅。思いのほか楽しくて、定期的に歩いている今に至ります。
歩き旅をしているとき、「うーん20kmくらいならなんとかなるんじゃないかね」と自然に考えている根拠は、ルーツは、よくよく考えたら「かちあるき大会」にあるのですよね。
子どもの頃できたという経験が、「たぶん行ける」という自信になっています。
そんなことにふと気づいてから、再び気になっていたかちあるき大会。どうやら2019年、100回大会を最後に、新宿〜青梅間の開催は終わってしまったようです。
そんな……せっかく改めて興味を持ったのに、もうこんな経験は一生できないのか……
なんて思っていましたが、よく考えてみたら普通にできますよね、これ。青梅街道を勝手に歩けば簡単に自主開催できます!
それに気づいてから、「いつかやりたいことリスト」に入れていたのですが、ちょうど歩きたい気分のこの日、「かちあるき日和」がやってきたようです。さあ、バカみたいに歩きましょう。
うかうかしてたら道に迷った、新宿駅前~吉祥寺
5月6日、朝8時台に起きれたので「ひとりかちあるき大会」を急に決行することとしました。なんの予約も必要とせず、思い立ったら始められるのが、歩き旅の魅力です。
新宿駅に着いたのは9時過ぎ。ここから長い1日が始まります。
大都会新宿から30分もすると、少しずつビルの背丈が下がってきました。
青梅街道沿いを走るランナーもたくさんいて、仲間意識が芽生えます。(青梅まで行く人は1人もいないでしょうが)
景色は背丈の低いビル群から、少しずつ並木道に変わって行きました。
街の雰囲気が変わったなと思ったら、杉並区にいました。区によって街道沿いもずいぶん違うものです。
このとき、Googleマップでゴールの青梅市までのルートを見ながら道なりに歩いていました。
いつのまにか荻窪駅に到着。
まっすぐまっすぐ歩いていたら、明らかに青梅街道じゃない路地になりました。
たしかに、Googleマップ先生の言う通り、この道を行けば青梅市につけるのかもしれないけれど、これはあくまで「かちあるき大会」。ちゃんと青梅街道を踏破したいのです。
ということで、すでに「踏破」ではないのだけど、軌道修正していきます。
吉祥寺駅前を通過してから、青梅街道の方面へ向かうため、路地に入ります。
ゴールに到着したような気分になりしたが、ただやっと正規ルートに戻っただけです。まだあと35kmくらいあります。まじかよ。
中央線民にはきつい、吉祥寺~東久留米
ここまで読んでくださった方には言います。私の地元は青梅市です。
だからこそ縁あっての青梅街道であり、かちあるき大会なわけですが、正直吉祥寺以降は全然知らない土地に入ります。
なぜなら、そのへんの青梅街道を交通手段として全く使っていないから。
車を持たない家庭で育った私が都心に出る手段は電車一択であり、青梅市民は青梅線を通って立川駅に出て、そこから中央線に乗るというルートで新宿に出ます。
よって、「吉祥寺」「荻窪」「中野」あたりは距離感や街の雰囲気が分かるのですが、「田無」「小平」「東久留米」あたりはさっぱりなんですよね。
もちろん、東京生まれ東京育ちですので、土地の名前としては知っています。けれど、たとえば「もう小平まで来たか〜」みたいな感慨深さがないのです。とても感覚的な話ですが、街道歩きにおいて結構これがきつい。知らない土地を永遠に歩く気分になります。
この辺は、車のある家で育った青梅市民なら感覚が違いそうです。そんな人がいれば教えてください。
道中、ヤマザキのパン工場が見えてきました。
こ……これは覚えている!!小学生のころ、かちあるき大会でここを通りました。
「飲まない、食べない」を律儀に守っていた当時は、ここから香ってくる焼きたてパンの香りに激しく誘惑されたことを覚えています。
この日は飲んでるし食べているから平気でした。
東久留米の陸橋。ここも……覚えてる!!たしかここは……
小学生のころ、この観覧車を見て、「まだ西武ゆうえんちなのか」と絶望したことを覚えています。
しかし、大人になって行動範囲が広がったいま、「もう西武ゆうえんちか」と思いました。
もちろん足は痛いし、先の長い絶望感はあります。けど、今住んでる都心から、西武ゆうえんちまで行くには結構かかります。そんなところまで歩いてきたのかという感慨深さがありました。
このエリア、私にとって「かちあるき大会でしか行かない」からこそ、かちあるき大会の思い出が驚くほど強烈に残っていました。20年経っても思い出せるなんて。
気づいたら意識が飛びそうになる、東久留米~瑞穂
ずいぶん進んできました。けど、もうすでに自分のキャパは超えています。私のキャパは「1日あたり20km」。この時点で25km以上歩いてるんですから。
そろそろ、脳が強制シャットダウンを始めるのか、歩きながら寝そうになります。うっかり信号無視しそうになるので、せめて視界だけは保つようにギリギリの精神で歩いています。
そして、相変わらず知らないエリアが続きます。
知らない土地を這いつくばって進むと、やっと知っているキーワードが出てきました。
羽村は、青梅の隣にある市の名前です。青梅線のなじみある駅でもあります。やっと希望が見えました。
疲れよりエモが勝つ、瑞穂~青梅市総合体育館(ゴール)
瑞穂の終わりから、青梅市内に入ってきて、意外な現象が起きました。みるみる身体の辛さが消えていくのです。
いや、消えてないのですが、懐かしいという感情が疲れに勝って、アドレナリンだかドーパミンだかがどばどば出る感覚です。つまり、「エモい」という感情で胸がいっぱい。
この辺は、私の実家からの自転車行動圏内です。右を見ても左を見ても、行ったことがある場所ばかり。20年経っても案外お店は潰れていないものなのですね。驚きでした。
こちらの登山グッズなどを扱う「好日山荘」は当時、店舗内にボルダリングの壁が設置されてました。親が登山グッズを選んでいるあいだに、私はボルダリングの壁をよじ登っていたことを一気に思い出しました。そういえば、ボルダリングという言葉が流行るずっと前から、ボルダリングに触れていたんですね。
そのほか、目に映るものすべてが懐かしいです。懐かしすぎて、ひとつひとつ言及していたら壮絶な身バレになりそうなので、できないくらい、懐かしいのです。
人生で初めてバイトして、すぐ辞めてしまったカフェ。
子ども用プレイルームが楽しそうだったけど、引っ込み思案で思うように遊べなかったマック。
スポーツチームの練習帰り、夜遅い時間に初めて食べた牛丼、吉野家。
あれもこれも、幼きころの人生が詰まっていました。
想定外に胸いっぱいの感情になりながら、ゴールがある体育館の最寄り、河辺駅に到着。
人生で1番長い時間過ごした駅です。たぶん。(実家最寄り)
さて、ゴールに向かいましょう。
河辺駅から徒歩3分ほど。無事到着!!!!
ボロボロのボサボサなんですけど、生きてました。
歩いた結果
結果、44kmを9時間で歩きました。
小学生のころのタイムはやっぱり異次元なので超えられませんでしたが、なんとか完歩、かつ9時間でゴール。
かちあるき大会のリミットが10時間以内だったので、これが本番であればなんとか間に合っていたことでしょう。
不意にかちあるき大会の記憶が呼び起こされたり、小中学生のころの記憶が走馬灯のようにどんどん溢れたり、予想外に感情が動いたかちあるき大会でした。20年越しにやったからこそ、故郷の思い出が甦りますね。
ゴール後は河辺駅前の温泉に浸かり、館内でそばを食べて帰りました。
ツイートしましたが、やっぱり駅前に温泉って立地が神だなぁ。
ひとりで勝手に歩いてるだけだったんたんですが、「かちあるき大会出たことあります」とか、「河辺温泉いいですよね」とか、たくさんTwitter上で声かけてもらって嬉しかったです。
かちあるき大会じゃなくても、自分の地元をゴールに、街道歩きをやってみるのをおすすめします。想像の3倍はエモいです。
もちろん、かちあるき大会も気になる方はぜひ!福岡とかでもやってるみたいです。
応援ありがとうございました。ではまた次の旅で。
最後までお読みいただきありがとうございます!もしよろしければサポートもよろしくお願いします。新たなひとり旅の旅費となります!たぶん。