万年筆をテーマにした小説(3作品)
1.並木春子のファースト万年筆 ★★☆☆☆
Kindle Unlimitedで無料になっていた作品。
内容は青春の1ページを切り抜いたかのようなボーイミーツガール。
ページ数は短いので、1時間以内に読み終えた。
主人公と同じクラスに万年筆を使っている優等生がいて、彼をきっかけに万年筆にハマるという話。
出てくる万年筆は
サファリ ラミー
ペリカン スーベレーン
作中ではメーカー名を微妙に改変して表記していたのが気になった。
ペリカンがペリカノ、サファリがファサリだったり。
(商標登録の関係?)
万年筆に興味を持ち始めた人にはオススメ。
購入への後押しになると思う。
2.ようこそ紅葉坂萬年堂 ★★★☆☆
万年筆初心者が専門店で働く話。
ストーリーは『美味しんぼ』のようなバディもの。
無愛想な店主×若い女の子。
主人公の目線から読者も万年筆について学ぶ形となる。
大きな事件や壮大な伏線回収もないが、万年筆の魅力がじんわりと伝わってくる。
出てくる万年筆は
プラチナ セルロイド金魚(主人公)
ファーバーカステル 伯爵コレクション(店主)
パーカー 75 シルバーシズレ(客)
アウロラ ドルチェビータ(客)
ペリカン スーべレーンM400ホワイトトータス(主人公・購入予定)
主人公が最初に購入するペンがセルロイド金魚なのが良い。
あと、万年筆インクの名前のカクテルが出てくる文具バーは、ホントにあったら行ってみたいと思った。
3.メディコペンナ ★★★★★
万年筆初心者が専門店で働くというあらすじは紅葉坂と同じ。
ただし、主人公は就活中の学生で身分はバイト。
就活に失敗し続け、若干病みつつある大学4年生の心情が丁寧に描かれている。
作者がベテランなこともあり、ストーリーと万年筆の組み合わせ方が上手い。軽い謎解きがちょっとずつ盛り込んである。
1点だけツッコませてもらうと、第3話の「不揃いなコレクション」は2ちゃんねるの有名なコピペと同じ流れ。
自分は途中でオチに気づいてしまった。
気になる人は「鉄道模型を捨ててから夫の様子がおかしい」を読んでほしい。
ただ、万年筆の説明については、上記2作品を超える知識量と深いネタが用意されている。
巻末を見てもらえば分かるが、10冊以上の専門書を参考にしており、
神戸の名店である『Pen and message』に取材も行っている。
この店は店主がペン先を研磨してくれる名店であり、万年筆好きなら知らない人はいないと思う。
自分が愛用している149と檸檬(150th)も店主の吉宗さんの調整であるため、読んでいてテンションが上がった。
また、三宮センター街のナガサワ文具センターも出てくるので、神戸の取材がしっかりされていることに驚いた。
(趣味文を読んだら、吉宗さんがアドバイザーとして付いていた)
出てくる万年筆は
モンブラン マイスターシュテュック146(主人公が親から貰った)
プラチナ #3776センチュリー
ペリカン トータスシェルブラウン
アウロラ オセアニア
アウロラ エウロパ
モンブラン フリードリッヒ・シラー
ウォーターマン エドソン
紹介しきれないので、自分が印象に残ったものをチョイスした。
ちなみにウォーターマン・エドソンはセーラー万年筆の長原宣義さんが長刀加工したマニアックな逸品。
「作者さん、ホント分かってるな」と1人で頷いてしまった。
他にも主人公が就活した会社がパイロットの創業者の名前を連想させる
「並木工業株式会社」だったり、万年筆好きへのファンサービスも充実している。
フルハルターの森山さんも、セリフに登場。
初心者だけでなく、ベテランも満足できるネタが多いのでオススメ。
値段は1,672円と他の作品よりも高いが、満足度は3作品で一番高かった。
万年筆好きだったら買って後悔はしないと思う。
以下は小説以外に万年筆のエッセイをまとめた記事。
趣味をさらに深掘りしたい人に読んでほしい。
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