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北条義時の日記『ライバルが片づくトキめきの魔法』⑥

1214年(建保2年)

1214年2月4日

昨日はオールで飲み会。
今朝、実朝様の体調が悪いと周りがドタバタ。いや、飲みすぎただけだろ。
御所に来てたエイサイ和尚が「二日酔いなんてお茶でイチコロ。『一日一杯のお茶であなたも健康になれる』って本を書いたよ。ヒマだからな。読んでね」だって。
ヒマなんだ。

1214年6月13日

5月は日照り続き。実朝様が「ウチは年貢を3分の1に減らすよ」と言いだした。
優しい。けど勝手に決めないで。将軍の土地だけエコヒイキはマズイって。
この前、エイサイ和尚と祈ったら雨が降ったんで、変な自信をつけちゃったのかな。
お茶には雨を降らせる力もあるのか?

1215年(建保3年)

1215年10月2日

明け方に地震。近ごろ地震が多い。たまに大きいのも。9月はほぼ毎日。占いも悪い結果ばかり。なんで?
1月に父さんが死んだ。78歳。デキもので苦しんだそう。追放から10年。伊豆では幸せだったのかな。
6月にはエイサイ和尚が死んだ。75歳。腹を壊して。お茶の飲みすぎ?

1216年(建保4年)

1216年6月15日

チンナケイが御所に。むかし頼朝様に「人殺しキライ」とヌカして会わなかったブレイなヤツ。今回は呼んでもないのに鎌倉に来た。
「実朝様ワタシの師匠の生まれ変わり。会いたかったヨー」だと。はあ?
実朝様は「やっぱり!5年前の6月3日に夢で見たよ」だって。えぇッ?

1216年閏6月14日

大江広元殿が大江広元殿になった。えーと...大江殿ってホントは中原広元だったんだって。
マジ?大江殿!って呼んだらフツーに返事してたじゃん。
もともと大江だったのを中原に変えたけど大江の家がツブれそうなんで実朝様と朝廷のOKもらって戻した。
けっこうオオゴト!

1216年9月18日

大江広元殿と相談。実朝様が大将になりたいと言ってる件。
出世はイイけど早すぎ。今でもタイシタことしてないのに中将なんだから。まずは実績あげようよ。ヘタに出世すると、子孫に悪い影響あるっていうからさ。
こんな感じで、大江殿から実朝様に反対してもらうことに。

1216年9月20日

大江広元殿が泣きながら御所から帰ってきた。
子孫のことを考えて、大将になるのはもう少し待ちましょと実朝様に意見したら
「うん、わかってるよ。けど源氏の本家は自分でオシマイ。だから出世して源氏の名前を高めときたいんだ」との返事。
どういうこと?オシマイって?

1216年11月24日

実朝様が中国に行くぞと言い出した。デッカイ船を作るんだ、一緒に行くメンバーも決めたよなんてことも言ってる。
どういうこと?
船を作るのはチンナケイ。黒幕はオマエか?
大江広元殿と必死で止めたけどダメ。別に旅行の仲間に入ってないから反対なわけじゃないやい。

1217年(建保5年)

1217年4月17日

中国に行く船が完成。進水式を実朝様と見学に。
「さあ、ミンナ元気に引っ張るヨー」と言ったときのチンナケイの得意げな顔。
でも昼から夕方まで引いても全然海に浮かばない。当たり前だろ。ここいらは遠浅だよ。
実朝様は怒って帰っちゃった。そのときのチンナケイの顔!

1217年6月20日

頼家の息子コウギョウが鎌倉に帰ってきた。
政子姉の手配で鶴岡八幡のトップに。園城寺で6年修行。武術の修行じゃない、と思う。
「願いがあるので1000日連続オコモリをやる」と言ってる。
いきなり1000日はハードル高いんじゃないかな。まずは10日くらいから始めてみたら?

1217年12月10日

先月から病気だった大江広元殿が元気になった。
目の調子が悪くなり、ハレモノもできた。
一時はキトクに。神頼みで出家までした(仏頼み?どうでもイイな)。
オレが見舞いにいったときはホントにヤバそうだった。
治って良かった。でも、目はまだほとんど見えないって。

1218年(建保6年)

1218年4月29日

政子姉が旅から帰ってきた。2月から熊野モウデに。ついでに京都も。
ついで?まあ、京都でのミッションは極秘。
なんとジュサンミに出世。オレより上じゃん!
後鳥羽上皇から会いにきなと言われたけど「お恥ずかしゅう」と断ったって。会ったら取り込まれそうだから。同感。

1218年5月5日

昨日、政子姉と旅してたトキフサが帰ってきた。行きは一緒、帰りは別々。ケンカしたわけじゃないよ。
トキフサが御所で報告。なんと3日連続で後鳥羽上皇にケマリを見せたんだって。「ケマリのことわかってんな」とホメられたとドヤ顔された。
オレも京都いけば良かったな。

1218年6月27日

実朝様が大将になったお礼に鶴岡八幡宮でパレード。
源ナカアキラがチョコマカ実朝様のお世話をしてた。京都からゲストがいっぱい来てるしね。
リッパな行列だったなぁ。
いっぱい集まった観衆は熱狂。政子姉と実朝様の奥様は仲良く見物。オレの妻も友だちと見にきてたよ。

1218年7月8日

実朝様が鶴岡八幡宮で大将のユニフォームをオヒロメ。
またパレード。ゲストは京都に帰ったんで、少しこぢんまり。
三浦義村とイトコの長江アキヨシが、ドッチが左に並ぶかで「どうぞどうぞ」とゆずりあい。
そのせいで出発が遅れた。「オレがやるよ!」って言えばよかった。

1218年7月9日

こんな夢を見た。自分の枕元で犬の神様が言う。「今年のお参りは無事に終わった。だが来年は参加しないように」
どういうこと?
お寺を建てたらどうかなと言ったら「今年はパーティー多かったから、みんな金欠」とトキフサと泰時に反対された。
わかってる。自腹でやるよ。

1218年12月20日

右大臣になった実朝様が、今日から本格的に業務スタート。
「右大臣実朝」...まあ、ヒビキはカッコイイよね。
27歳で右大臣になるとかトントン拍子すぎて、おとぎ話みたい。
でも前に実朝様が言ってた、源氏の本家はもう斜陽、自分でグッド・バイってどういう意味だろう?

1219年(建保7年)

1219年1月27日

実朝様が右大臣になったお礼に鶴岡八幡宮でパレード。デジャブ?
夜になり出発。すごい雪。
八幡宮の門のところに白犬が。それを見たら急に吐き気が。ドウキもひどい。まっすぐ立てない。
将軍の刀を持つ役を源ナカアキラに代わってもらい、家に帰った。雪は積もってる。

ウチで休んでたら、その知らせが。実朝様がコウギョウに殺された。帰りの石段で。「父のカタキ」と叫んだそう。
コウギョウは実朝様の首を持って消えた。周りのヤツらは何やってんだよ。
源ナカアキラも殺された。これってもしかして...俺たち、入れ替わったから?

しばらくして三浦義村からタレコミが。
コウギョウから「私を将軍にするよう手配しろ」と連絡がきたので「まずはウチに来てください」と返事したと。
いまはオレが仕切るしかない。コウギョウを殺せと命じた。
またしばらくすると義村がコウギョウの首を持ってきた。

1219年2月1日

コウギョウの一味をミナゴロシに。どの坊主が仲間だったかは慎重に調べた。
ヨシトキよくやってんじゃんとホメられてるが、オレがやるしかないんだ。
京都に連絡もした。あとはなにやればイイ?
実朝様の奥様が出家した。100人以上の御家人も。オレに出家する自由はない...

1219年2月13日

政子姉が京都に使者を。
後鳥羽上皇の息子、マサノリ親王かヨリヒト親王を新将軍にするって約束を急いで守って、と。オレらもお願い!って手紙を出した。
実朝様の死が伝わると京都は大騒ぎに。だけど上皇が「シズまれぃ!」と言ったら収まったって。上皇パワーすげぇな。

1219年2月23日

妹アワと亡き全成殿の息子、阿野トキモトが今月11日に静岡でムホン。
天皇の許可をもらって東国を支配してやるとホザいたらしい。
すぐに政子姉が反乱軍を討てと命令。
今日、トキモトが自殺したとの報告が。
バカなことを。あのときもっと話を聞いてやれば良かったのかな。

1219年3月9日

後鳥羽上皇の使者が政子姉にクヤミを言いに。実朝様のことはすごく残念だと。警備が甘いとイヤミを言われず良かった。
新将軍の話はナシ。
それはそうと、上皇の愛人の土地の地頭を代えろとオレにプレッシャーをかけてきた。これはダメだよ。頼朝様が決めた地頭なんだぞ。

1219年3月15日

弟トキフサが政子姉の代理で京都に。新将軍を早く決めて鎌倉にヨコしてってお願い。
あと地頭を代えろってムチャブリの回答。政子姉、大江広元殿、トキフサ、泰時と話し合ったけど結論は変わらない。ダメ。
上皇パワーに対抗するため、お供は1000騎。プレッシャー返しだ!

1219年7月19日

未来の将軍、ミトラ様が鎌倉に。2歳。父親の母親の母親の兄さんが頼朝様。
ひいおばあちゃんの兄弟ってなんて呼ぶんだろう。うーん...他人?
まずはオレのウチに来てもらった。このために新しい家建てちゃった。
夜にさっそく仕事開始。当面は政子姉が面倒みるんだけどね。

1219年7月25日

京都にいる妻の兄、伊賀ミツスエから使者。
13日に源ヨリモチが殺された。将軍になりたいと言い張って上皇の怒りを買い、攻め滅ぼされた。
ホントか?ヨリモチは源氏の名門だけど、将軍になりたがるかなぁ?
この戦いで天皇のおウチが火事に。宝物がいっぱい焼けちゃった。

1219年11月21日

明け方から激しい風。6時間くらい吹き続け、トキフサの家が倒れた。新築なのに。かわいそう。
占ってみたら、モノスゴく不吉だって。
知ってたよ。今年はロクなことない。実朝様は殺される。ムホンだなんだが起こる。大火事で鎌倉中が焼ける...
来年はイイ年にしたいな。

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