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「最近キスしましたか?」と医者に問われ、


note.のお題で
#私だけかもしれないレア体験  と見たとき
真っ先にあの事件を思い出した。

忘れもしない、あれは高校2年生の時。

私服の高校ゆえ、
ブラジル国旗みたいな黄色と緑のジャージに
高架下の落書きみたいなジーンズを履いて
熱心に勉強していたクレイジーな12月某日。


久しぶりに高熱を出した。

38.3℃。

なかなかの高温だ。
抗インフル剤でトチ狂って
夜中に「はちみつ止めて」と静かに言い放った
あの小学生の頃以来の高熱かもしれぬ。



これは大変だ

と思ったものの、
とりあえず一晩寝た。

すると翌朝どうだろう、
すっかり平熱に戻ったのだ。


きっと疲れが溜まってお熱が
出ちゃったのね、なんて呑気に
過ごしていたら、夜にはまた38℃

その後、日中は平熱、夜だけ高熱という
奇妙な数日を過ごしたのだった。


これは一体。


仕方がないので病院へ。


なんらかの感染症かどうかを検査。

随分と待って、

本当にずいぶんと待って、

「もう結果はいいから帰らせてください」と
受付にすがりそうになった頃
ようやく呼ばれた。


付き添いの母と入室。

やっと会えたお医者さん。
ミッキー並みの待ち時間。

そしてそのお医者さんが開口一番、
私に向けて放ったのがこのセリフでなのであった。


「最近キスしましたか?」

娘、挙動不審。
医者に恋バナを展開されるというレアケース。

いや先生よ、
いくら私の羞恥心が永年故障しているとはいえ
思春期の人間に
そんな直球でハレンチな質問は
ナシではないか。いやアリなのか。

しかも後ろには母。
参観日さながらの緊張感で私を見守っている。

ピンチ!


とはいえ嘘を言うわけにもいかなくて
私は正直に答えた「いいえ」


そう、ピンチも何も答えはNOだったのだ。


医者が「キスしたかも知れない」と
見込んでいるということは、
もしかしたら私、キスしたのかしら
と記憶を辿ったが
「最近」の定義がいかほどであっても
YESと答えられる女ではなかった。


だがしかし、この状況下での「いいえ」に
一体どれほどの説得力があろう。

思春期&医者の前、そして母の前。
本当は「はい」であった学生のうち
何割が正直に答えただろうか。
一回、街頭調査してほしい。



パパとママに内緒で
ヤンキーの彼氏と付き合ってたりなんかしたら
うかうか「はい」なんて言ってられないし。


だが医者としても、ただ興味本位で
女子高生の恋愛事情を調査しているわけではない。

訳を聞けば、検査の結果
私はEBウイルスというものに罹っていて
それは主に濃厚な唾液の接触により
感染するものらしい。

なるほど、いや私は一体いつ
濃厚な唾液の接触をしただろうか
否、していない。


なぜ。


それらしい行動がなかったか
頭を巡らせているうちに
加えて言われたのがコチラ。

「肝臓の数値が異常に高いです。」

1つ目の問題を飲み込む前に
ビッグニュースをぶち込む先生。

そしてこの、
真面目で勤勉な学生からは想像し難い
ふしだらでアル中な検査結果。

詳しく検査した方がいいと言うので
言われるがままにCTスキャン。


再びしばらく待たされて、
今度は違う先生とご対面。


またもや単刀直入に一言、


「タバコ吸ったことありますか?」



いよいよ娘、ヤンキーな彼氏に影響されて
酒もタバコもやってる説濃厚。

よくわからないけど
親不孝な娘に育っちゃってごめんなさいだ。

「いいえ」と言うと
「一本も?」と先生。

いや、逆にタバコ一本が
CT画像を左右するのだろうか。

控えめに「はい、一本も…」と答えた。

そしてまたもや重大発表。
「ここ、肺に穴が開いているんですよね〜」


衝撃。

全く心当たりがない。
推しのライブが終わった寂しさで
肺に穴が開いたとでもいうのだろうか。

そして元々の用事だった肝臓も
肥大していると言われた。

今まで規則正しく生活してきた
10代の体とは思えぬ不健康ぷり。

母は大いに心配。
私はそれより、己の遍歴を2度も
暴露する羽目になった動揺で
頭がいっぱい。

へとへとな夕方、
聞いたこともないウイルス名と
2つの体内異常を告げられて帰宅。

こうして奇妙な
年末年始は過ぎていったのであった。


あれから数年、
結局肺は何ともなかったし
肝臓の数値も無事回復。

あのウイルスは一体何者で
どうやって侵入してきたのだろうか
謎は永久に未解決である。

当時は高熱に味覚障害で
新年明けられましても、
おめでとうなんて言ってられなかったが
今年は祝うことくらいはできそうだ。

来年は皆健康に、
穏やかな日々を過ごせることを
願うばかりである。



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