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「最近キスしましたか?」と医者に問われ、
note.のお題で
#私だけかもしれないレア体験 と見たとき
真っ先にあの事件を思い出した。
忘れもしない、あれは高校2年生の時。
私服の高校ゆえ、
ブラジル国旗みたいな黄色と緑のジャージに
高架下の落書きみたいなジーンズを履いて
熱心に勉強していたクレイジーな12月某日。
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久しぶりに高熱を出した。
38.3℃。
なかなかの高温だ。
抗インフル剤でトチ狂って
夜中に「はちみつ止めて」と静かに言い放った
あの小学生の頃以来の高熱かもしれぬ。
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これは大変だ
と思ったものの、
とりあえず一晩寝た。
すると翌朝どうだろう、
すっかり平熱に戻ったのだ。
きっと疲れが溜まってお熱が
出ちゃったのね、なんて呑気に
過ごしていたら、夜にはまた38℃。
その後、日中は平熱、夜だけ高熱という
奇妙な数日を過ごしたのだった。
これは一体。
![](https://assets.st-note.com/img/1672464603520-kUkK146HBb.jpg?width=1200)
仕方がないので病院へ。
なんらかの感染症かどうかを検査。
![](https://assets.st-note.com/img/1672464631133-voHhmIuXXo.jpg?width=1200)
随分と待って、
本当にずいぶんと待って、
「もう結果はいいから帰らせてください」と
受付にすがりそうになった頃
ようやく呼ばれた。
付き添いの母と入室。
やっと会えたお医者さん。
ミッキー並みの待ち時間。
そしてそのお医者さんが開口一番、
私に向けて放ったのがこのセリフでなのであった。
「最近キスしましたか?」
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娘、挙動不審。
医者に恋バナを展開されるというレアケース。
いや先生よ、
いくら私の羞恥心が永年故障しているとはいえ
思春期の人間に
そんな直球でハレンチな質問は
ナシではないか。いやアリなのか。
しかも後ろには母。
参観日さながらの緊張感で私を見守っている。
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ピンチ!
とはいえ嘘を言うわけにもいかなくて
私は正直に答えた「いいえ」
そう、ピンチも何も答えはNOだったのだ。
医者が「キスしたかも知れない」と
見込んでいるということは、
もしかしたら私、キスしたのかしら
と記憶を辿ったが
「最近」の定義がいかほどであっても
YESと答えられる女ではなかった。
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だがしかし、この状況下での「いいえ」に
一体どれほどの説得力があろう。
思春期&医者の前、そして母の前。
本当は「はい」であった学生のうち
何割が正直に答えただろうか。
一回、街頭調査してほしい。
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パパとママに内緒で
ヤンキーの彼氏と付き合ってたりなんかしたら
うかうか「はい」なんて言ってられないし。
![](https://assets.st-note.com/img/1672465713868-5ZDW8mxDWC.jpg?width=1200)
だが医者としても、ただ興味本位で
女子高生の恋愛事情を調査しているわけではない。
訳を聞けば、検査の結果
私はEBウイルスというものに罹っていて
それは主に濃厚な唾液の接触により
感染するものらしい。
なるほど、いや私は一体いつ
濃厚な唾液の接触をしただろうか
否、していない。
なぜ。
それらしい行動がなかったか
頭を巡らせているうちに
加えて言われたのがコチラ。
「肝臓の数値が異常に高いです。」
![](https://assets.st-note.com/img/1672467093776-M1cb7MJ0Tb.jpg?width=1200)
1つ目の問題を飲み込む前に
ビッグニュースをぶち込む先生。
そしてこの、
真面目で勤勉な学生からは想像し難い
ふしだらでアル中な検査結果。
詳しく検査した方がいいと言うので
言われるがままにCTスキャン。
![](https://assets.st-note.com/img/1672467421087-MrTuzrFNI3.jpg?width=1200)
再びしばらく待たされて、
今度は違う先生とご対面。
またもや単刀直入に一言、
「タバコ吸ったことありますか?」
いよいよ娘、ヤンキーな彼氏に影響されて
酒もタバコもやってる説濃厚。
![](https://assets.st-note.com/img/1672467922520-2P1fdlNI0g.jpg?width=1200)
よくわからないけど
親不孝な娘に育っちゃってごめんなさいだ。
「いいえ」と言うと
「一本も?」と先生。
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いや、逆にタバコ一本が
CT画像を左右するのだろうか。
控えめに「はい、一本も…」と答えた。
そしてまたもや重大発表。
「ここ、肺に穴が開いているんですよね〜」
衝撃。
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全く心当たりがない。
推しのライブが終わった寂しさで
肺に穴が開いたとでもいうのだろうか。
そして元々の用事だった肝臓も
肥大していると言われた。
今まで規則正しく生活してきた
10代の体とは思えぬ不健康ぷり。
母は大いに心配。
私はそれより、己の遍歴を2度も
暴露する羽目になった動揺で
頭がいっぱい。
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へとへとな夕方、
聞いたこともないウイルス名と
2つの体内異常を告げられて帰宅。
こうして奇妙な
年末年始は過ぎていったのであった。
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あれから数年、
結局肺は何ともなかったし
肝臓の数値も無事回復。
![](https://assets.st-note.com/img/1672469859197-f3kBmkzOTj.jpg?width=1200)
あのウイルスは一体何者で
どうやって侵入してきたのだろうか
謎は永久に未解決である。
当時は高熱に味覚障害で
新年明けられましても、
おめでとうなんて言ってられなかったが
今年は祝うことくらいはできそうだ。
来年は皆健康に、
穏やかな日々を過ごせることを
願うばかりである。
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