#小説
黒髪儀礼秘話 ー第三話 L女子中学入学前夜ー
ー一ー
あれほど降った雪はどこへ消えてしまったのだろう……
佳奈は通学路にすっかりと泥にまみれ小さくなった雪の固まりを見て小さく首をかしげた。
ついこの前までは天気予報のおじさんがいかにも心配げな顔で「今年は例年にない大雪で……」という言葉をあんなに繰り返していたのに、今では明るい表情で「各地の桜の見頃」を予想している。
そういえば小学校に通うのもあと一ヶ月足らずだっけ……。裕子ちゃ
黒髪儀礼秘話 ー第二話 R高校野球部男女対抗戦秘話ー
見よ、わたしはすぐに来る。報いを携えてきて、それぞれのしわざに応じて報いよう
ヨハネの黙示録二十二章十二節
ー一ー
R高校女子寮から公園まで往復約三キロ半のランニングを終えると、美樹はゆっくりと乱れた呼吸を整え柔軟体操にとりかかる。
入念に体をほぐし終えると、美樹は頭の上で団子状にきつく結い上げた髪をほどいた。
背中を隠すほどの癖の無い真っ直ぐな黒髪がバサリと美樹の
彼女が髪を切った瞬間 ー朋子の場合ー
ー1ー
「今日はやけに静かだな」
俺は二メートルと離れていない隣の朋子の部屋をカーテンの隙間から覗いた。
いつもは演劇部の練習なのかリズミカルな音楽をかけて踊っていたり、時には大きな声を出して発声練習をしていたりするのだ。
一番近い俺としてははた迷惑もはなはだしいのだが、たまに役得もある。
いつもは背中の真ん中であるつややかなポニーテールにまとめている髪をほどく時だ。
彼女がリボンを