どうしようもなくて #2
夢にまで見た一人暮らし、環境が変われば自分も勝手に変われるなんて、どうして信じていたのでしょうか。
大学は自由、学ぶも学ばないも自由。わたしは、楽なほうの道を選びました。
授業は起きてzoomに入ってまた寝るだけ。サークルはつまらなかったので半年で辞めて、大学生ってつまらない人間ばかりなんだな、と決めつけて、初めてできた彼女と自堕落な生活を続けていた。
彼女のことは全く好きではなかった。とりあえず童貞を捨てたくて、そうすれば彼女がいない人間には勝てる、と思い込んだ。
手に届く範囲のもので、手頃な小さい欲求を満たすだけの日々。それがわたしの2021年だった。
またひとつ、空白のままページをめくるね。
飽きた。愛のない交際に飽きたわたしが次の遊びに選んだものは、FPSゲームだった。デスクトップPCを購入して、インターネットの友達と毎日朝まで遊んだ。そんな生活を続けたまま、2022年の夏がくる。生きる理由を見失った夏。わたしを殺す夏。
ひとつ知ったのは、確かに愛されていたのだということ。わたしは元彼女に愛されていて、わたしを求められること自体が生きる理由になっていた。
どうしてこんな当たり前のことを、19年生きてきて知らなかったのだろう。
朝方にゲームを終えて通話を切ると、必ず虚脱感と希死念慮が襲いかかるようになった。
きみはどうして生きてるの。ねえ、なんで、どうして。人の愛を無下にして、それできみは何を手に入れたの。何も持っていないきみに生きる価値なんて。
ある眠れない夏の日の朝。ここ最近ずっと眠る前に泣くことが当たり前になっていたけれど、その日はいつも以上に苦しみが強くて、このままじゃまずい、とおもった。
近所の精神科を探した。もう営業が始まっていたので電話を掛けると、初診は半年待ちだった。
それでも諦められなかった。諦めたらわたしは終わるのだ、という漠然とした衝動がわたしを動かした。そしてなんとか、駅前の精神科を1ヶ月後に予約することができた。
1ヶ月後の2022年9月、わたしは案の定、鬱病の診断を受けた。抗うつ薬と睡眠剤をもらった。
この日から、わたしの長い闘病生活が始まることになる。始まってしまった、と表現した方がいいかもしれないね。
わたしは、鬱病なんて一時的なものだろうし、薬を飲めば良くなるだろうと勘違いしていた。
実際はわたしの心の状態に名前がついただけなのに。その名前を、わたしは何かから逃れる手段として使っていた。
何かができないのはわたしのせいじゃない。ぜんぶ鬱病のせいだ。わたしは悪くない。
ほんとうは排除するべき病気をわたしは、わたしを守る盾として使った。それを排除する努力をしないまま、冬は過ぎていった。
そのことに気づいた頃には、もうすべて手遅れだったよ。
ぜんぶ手遅れになってしまってからあらためて問い返す、わたしの存在意義。
夏に溶ける - *sakura
そうしてわたしは、わたしを探す旅へ出ます。
またね。
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