簡単にできる特許検索
【2019年5月13日 J-PlatPatのリニューアルに伴い記載内容を更新 】
前回のコラムでは、“特許情報”から“技術情報”と“権利情報”が読み取れることを説明しました。
では、実際にそれらの情報をどうしたら検索できるのでしょうか。
契約している有料データベースがあれば、そちらを用いるのが有用です。しかし、そのような契約をしていない場合、出先でちょっと検索したいなど、有料データベースを使用できない場合でも、無料でインターネット上のサービスを利用して検索することができます。
今回は、このような「無料で簡単に特許検索できる方法」をご紹介します。
1.どこで検索できる?
有名どころではGoogleの提供する「Google Patents」があります。しかし、インタフェースが英語であるため、苦手意識を覚える方もいると思います。
そのような方にも使いやすいものとして、今回は、日本の特許庁が独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)と協力して提供している、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」をご紹介します。
2.どうやって検索する?(J-PlatPatの利用方法)
2-①.番号による検索
・簡易検索
「J-PlatPat」トップページが「簡易検索」という画面です(図1)。日本の特許であればこの画面ですぐに番号による検索が可能です。
(図1)
複数の検索をしたい場合、間をスペースで区切れば「OR」検索ができます。
番号を入力し、左の検索ボタンを押すと図1の画面の下に図2のような結果一覧が返りますので見たい公報の番号をクリックすれば該当公報の情報を確認することができます。
(図2)
番号の入力方式は図2の例の場合“特開2000-000001”と入力しましたが、桁数の省略ができ、かつ番号のみでも検索ができます。「2000-1」と入力したものが図3です。
図3では特許・実用新案で5件、意匠で1件、商標で1件該当しました。これは番号のみの検索の場合、種類を問わないため、図2のものだけでなく、他にも該当する番号があったためです。
(図3)
図3の特許・実用新案で該当した5件のものは、出願番号や公開番号が該当する番号として検索されています。
No.5の特許はリストには該当する番号が見当たりませんが、詳細を確認すると、国際公開番号が「2000-1」であり、様々な種類の番号が検索対象となっています。
・特許・実用新案番号照会/OPD
簡易検索では日本の特許であれば簡単に番号検索ができますが、特許・実用新案番号照会/OPDにおいては日本の特許だけでなく、外国の特許も検索することができます。
図1のトップページ画面左上の「特許・実用新案」メニューから「特許・実用新案番号照会/OPD」タブをクリックすると図4のメニューが開きます。
(図4)
(図5)
左の「発行国・地域/発行機関」列で国、真ん中の「番号種別」をプルダウンメニューにより選択し、右の「番号」列(テキストボックス)に検索したい番号を分けて入力します。例えば、「特開2000-000001」という番号の公報を検索する場合、左列で日本(JP)を、番号種別で「公開・公表特許公報(A)」を、右列に「2000-000001」を入力します。一つの欄で複数の番号を検索したい場合は、スペースで区切って入力します。
入力が終わったら画面中央下部の紹介ボタンを押すと簡易検索と同様に図5の画面の下に該当公報の一覧が表示されます。
国は日本以外にアメリカ(US)、EPO(EP)、WIPO(WO)、中国(CN)、韓国(KR)、イギリス(GB)、ドイツ(DE)、フランス(FR)、スイス(CH)、カナダ(CA)が検索可能です。
※「番号種別」について
「番号種別」は公報にも記載されていますが、下記のように把握も可能です。
日本の特許の場合、番号の先頭に付く文字(下記)の組み合わせから把握することができます。
“特”:特許、“実”:実用新案
“願”:出願、“開”:公開、“表”:公表、“公”:公告、“WO”:再公表
“第~号”:登録(特許公報)
(例:「特願00-000」は特許の出願番号、「特開00-000」は特許の公開番号、「特許第0000号」は特許の登録番号。)
番号の前に、さらに 平(平成)、昭(昭和)、大(大正)といった元号が記載されているものは、西暦に変換もしくは英字に変換する必要があります。
“平”:H、“昭”:S、“大”:T (小文字も対応可)
例えば、“特開平11-987654”の場合、“1999-987654”もしくは“H11-987654”が入力すべき番号となります。
外国の特許の場合、基本的には番号の後に付いているアルファベットで判断できます。例えば、“A”は公開番号、“B”は特許番号などであり、番号種別のメニューにおいても“公開番号(A)”、“特許番号B”などと表記されているため判別しやすいです。ただし、アメリカ(US)と韓国(KR)はアルファベットがない場合があり、その場合は番号の形式で区別が可能です。
アメリカ(US)の場合、西暦がスラッシュ(/)で区切られたもの(例えば2019/0000001)は公開番号、連続した数字からなるものは特許番号となります。ちなみに図5の画面ではスラッシュ(/)は使用できず、ハイフン(-)もしくは省略して入力する必要があります。
韓国(KR)の場合、先頭が10から始まっている場合は特許、20から始まっている場合は実用新案となります。さらに、10もしくは20の後にハイフンで区切られた番号が、さらに西暦とハイフンで区切られたもの(例えば10-2019-00、10-19-00)は公開番号、連続した数字からなるもの(例えば10-00)は登録番号となります。
ただし、中国(CN)や韓国(KR)は古いものになると番号形式が異なります。詳細はJ-PlatPatの番号照会ヘルプでご確認ください。
2-②.キーワードによる検索
・簡易検索
番号による検索と同じ「簡易検索」画面で、ボックスにキーワードを入力して検索ができます。複数のキーワードをスペース区切りで使用すると「AND」検索ができます。番号のみの検索は「OR」検索ですが、キーワードを指定すると「AND」検索となりますのでご注意ください。
簡易検索では、公報の中の「発明の名称」「要約/抄録」、「請求の範囲」、「出願人氏名」「発明者氏名」から検索します。
検索が完了すると下に検索結果の一覧表示される(図6)のは番号による検索と同じですが、表示内容が異なり、キーワード検索においては文献番号以外の書誌情報も表示されます。これらの表示内容については3.検索結果の内容は?で改めて説明します。
(図6)
件数が多い(図6では特許・実用新案で893件)場合、上部の検索一覧オプションにおいて年単位、分類単位で件数を絞ることが可能です。
・特許・実用新案検索
簡易検索では公報中の指定された箇所しか検索できませんでした。公報の全文を検索したい場合や、自分で検索箇所を指定したい場合は、トップページの「特許・実用新案」メニューから「特許・実用新案検索」に進みます。
(図7)
キーワードとして、和文か英文のいずれを用いて検索するかを選択できます(図8)。
(図8)
また、文献種別として図8の初期画面では国内文献(all)が選択されています。ここでは外国文献も選択することができ、国は日本以外にアメリカ(US)、EPO(EP)、WIPO(WO)、中国(CN)、韓国(KR)、イギリス(GB)、ドイツ(DE)、フランス(FR)、スイス(CH)、カナダ(CA)が検索可能です。
右上の詳細設定をクリックすれば種別、国を個別に設定可能です。(図9)
(図9)
「特許・実用新案検索」画面の左上に「選択入力」と「論理式入力」のタブが2つあります。(図10)
(図10)
「論理式入力」は検索コマンドを理解する必要があるのでここでは簡単に使用できる「選択入力」を解説します。図11は「選択入力」のキーワード入力画面です。
(図11)
使い方は左の「検索項目」メニューから公報のどの箇所を検索したいのかを選択し、右の「キーワード」ボックスにキーワードを入力し、「検索」ボタンをクリックするだけです。
複数のキーワードをスペース区切りで使用すると、簡易検索では「AND」検索でしたが、特許・実用新案検索では「OR」検索となりますのでご注意ください。「AND」検索をしたい場合は、各ボックスにキーワードを1つずつ入力することで検索できます。
また、ここでは文章の近い位置(近傍)にある2つのキーワードを指定して検索することもできます。「キーワード」ボックスの右にある近傍検索をクリックすると、図12の入力画面が表示され、2つの「キーワード」、キーワード間の「距離」、キーワードが使用されている「順序」を指定することができます。
(図12)
検索結果は簡易検索と同じ画面が表示されます。
キーワード検索の結果、該当件数が多すぎたり0件の場合は、指定条件を変えて何度か検索してみましょう。
3.検索結果の内容は?
ここからはヒットした特許文献のどのような内容が確認できるのかをご紹介します。
前述の通り、番号による検索の結果一覧(図2、図3)では番号のリストが表示されるのみですが、キーワードによる検索の結果一覧(図13)では文献番号だけでなく、出願日、公知日(公報発行日)、登録日、発明の名称や出願人、付与された特許分類を読み取ることができました。
(図13)
一覧から文献番号をクリックすると当該公報の内容が確認できます。番号、キーワードによる検索結果一覧のどちらからも同じ内容が表示されます。
(図14)
この公報の内容を確認する際、キーワードによる検索をしていれば、使用したキーワードがハイライトされた文字列として表示されています。
画面左側に明細書、右側に「図面(指定した図)」が表示されています。画面上部には表示中の公報に対する様々な情報を確認できる以下のリンク群があります(表示中の公報により変化します)。
•「延長出願」・・・特許権の存続期間の延長情報
•「関連公報」・・・公開公報、登録公報、公告公報、実用新案全文明細
•「文献単位PDF」・・・表示中の文献のPDF
•「経過情報」・・・経過情報
•「OPD」・・・審査に関するワン・ポータル・ドシエ情報
•「開放特許DB」・・・開放する意思をもった権利の情報
•「検索キー」・・・付与されている最新の分類や審査官フリーワードの情報
•「URL」・・・情報を共有する際に使用可能な該当文献の固定URL
4.検索における注意点
ここまで検索方法を説明しましたが、あくまでも簡易的な検索であり所望する特許情報のすべてをこれらの方法により検索できるわけではない点に注意してください。
まず、それぞれの検索サービスにはデータの収録範囲があります。この収録範囲は、どの種別の公報データがいつからいつまでの発行分を収録しているかという検索可能なデータ範囲を指します。したがって、その収録範囲から外れたデータを入手したい場合は別の方法を検討するしかありません。
次に、キーワードによる検索では、自分が指定したキーワードと同じキーワードを他人も使っているとは限りません。例えば、「自動車」の場合、他の人は「乗用車」や「四輪車」、「車両」、あるいは単に「車」を使用したり、また「移動体」などの上位概念のキーワードを使用している場合があります。したがって、これらのキーワードをどのように選び、どのように使うかに注意して検索しなければなりません。
5.まとめ
今まで特許の検索をしたことが無い方、分からない方のために簡単にできる特許情報の検索の仕方を「J-PlatPat」を用いて説明しました。
しかし上記の方法はあくまで現時点での使い方です。「J-PlatPat」においては機能の改善が2019年5月7日に更新されたばかりですが、現在も検討がなされており、使用方法の変更が発生する可能性があります。また、有料の検索サービスにおいても様々なことができるように多様化されています。このような情報検索サービスの変化に対して、各特性や注意点を理解し、かつ目的に応じて使いこなすことが特許調査における一つのスキルとされています。
また、実際に特許出願をする場合や、研究方針の基礎資料とする場合、他者の特許を侵害していないかを充分に把握する場合などでは今回ご紹介した検索だけでは不十分と言えます。その際には自社の知財部門や特許調査会社へぜひ相談してみて下さい。
参考HP
特許情報プラットフォームJ-PlatPat
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
調査事業部 永岡
弊社へのご依頼はWebサイトへ。ご相談にも乗りますので、まずはお気軽にお問い合わせください。 http://aztec.co.jp/