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仕事人間、だから子供は愛おしい

女性の社会進出というものが叫ばれて久しい。
今年2月1日に発表された最新の労働力調査(総務省統計局)によると、15-64歳における昨年の女性就業率は71.3 %に上るそうだ。
10年前(2011年)のデータでは60.2 %ということだから、この10年だけでも大幅に女性の社会進出が進んだとも言えるだろう。

かく言う私も、この10年の間に社会人の仲間入りを果たしたうちの一人である。

仕事人間、母になる

私はいわゆる「仕事人間」で、仕事の時間は半分趣味の時間だと言っても過言ではない類の人間である。
残業も度を越さなければ殆ど苦にならないし、自分が休みの日も何となく仕事の進捗が気になって、仕事のメールや日常連絡をついついチェックしてしまう。
それは今の仕事が好きだという単純な理由もあるのだろうが、昔から「人の役に立ちたい」という意識が強くある、というのもあるのかもしれない。

そんな仕事大好き人間の私には今、大切な3歳の子供がいる。

子供が産まれる前は、それこそ全国出張も含めてバリバリに働いていた。
小さい会社の小さいチームながらリーダーを任され、仕事の成功や失敗に喜怒哀楽し、仕事の締切間近には会社でコンビニおでんを突きながらメンバーと笑いあったりした。

そんな生活も(時に厳しく)とても楽しかったが、幸運なことに第一子を授かり、妊娠・出産を経て私の働き方はガラッと変わった。

仕事と育児の両立で感じる不安

会社の配慮で外勤のない部署に異動させてもらった私は、そこから時短勤務の生活を始めた。
有難いことに朝は夫が子供を保育園に送り届けてくれるため、私は既定の時間に朝から出社。
帰りは子供のお迎えのため、自分の定時になると慌ただしくタイムカードを切って足早に駅へと向かう。
延長保育にかからないギリギリの時間に迎えに行くと、自宅に帰った後はできる限り子供と触れ合う。

それでも「メシ・風呂・寝る」の最低限の行動に時間を取られて、子供とは大した時間を取れずに就寝する。
それが、ここ最近の平日の過ごし方だ。

そんな生活を続けていると、ふとした拍子に「子供に寂しい思いをさせていないか」と不安にかられる時がある。

3歳になったばかりの子供はかわいい盛りで、週末になると「おとうさん!」「おかあさん!」と一緒に遊ぶことをせがんでくる。
平日にあまり時間を取れていない分、勿論(親の体力の限り)全力で遊ぶ。
だがそんな時にふと頭をもたげるのが、子供が日々感じているであろう「寂しさ」である。

長い時間保育園に行かせて、つらい思いをさせていないか?
平日ももっと一緒に、親と遊びたいのではないか?

そんな、恐らく今後もずっと付き纏うであろう考えがむくむくと雲のように湧いてきて、少し立ち止まってしまう時がある。

しかしそんな時、私の背中をそっと押してくれるのはやっぱり「仕事」だった。

自分と子供だけの生活

思い出すのは、まだ子供が0歳で育休期間だった頃。
入園手続きの関係で少し長めの育休を取った私は、1年以上子育てに没頭する日々を送っていた。

産まれたばかりの我が子との生活は非常に濃密で充実していたが、それでもほぼ育児メインの生活は、何となく自分の色々な視点をせばめている感覚があった。

端的に言えば、育休期間は「我が子」のことばかりを考える生活だった。

お昼寝が上手くできないのは何故だろう。
離乳食でアレルギーが出たらどうしよう。
突然熱を出したらどうしよう。
母として不出来なことばかりをしていたらどうしよう。

そんな事ばかりがぐるぐると頭を巡り、少ない自由時間で正解のヒントを得るべく育児雑誌を読み漁ったりもした。
今振り返れば、「子供と自分」という一対一の関係の中でしかお互いを見られなかった時期なのだろう、と思う。

時が経って保育園が無事に決まり、私は子供を預けることで元の会社に復帰した。
そうして仕事人間の私は、先に述べたような慌ただしい生活を始めることになる。

違う時間を過ごしてわかる子供の愛おしさ

仕事と育児の両輪駆動を始めてしばらく経った頃。
ある日子供と遊んでいた私は、ふと自分が子供の行動に以前よりゆとりを持って対応できていることに気がついた。
もっと具体的に言えば「子供と笑顔で接する時間が前よりも長くなった」と感じられるようになっていた。

迎えに行って腕の中に抱きしめる我が子を、たまらなく愛おしく感じた。
「仕事」という自分の時間を設けることで自分と子供のことを客観的に見られるようになり、改めて子供を大切に思う気持ちに気付かされた。

育休中であれば恐らく疲れた顔をしてしまったであろう事にも、「どうしてそうしたいの?」「じゃあそれが終わったら帰ろうね」と言えるようになった。
身が倒れそうになるタックルを受けながら「あぶないよー」と優しく笑えるようになった。

元々大切だった「仕事」と同じ目線で比較したことで、改めて子供の大切さを自覚できたのかもしれない。

多様化する働き方の中の、私の答え

子供を預けて働くということは、もしかしたらこの先もずっと賛否両論ある事象かもしれない。
それでも男女ともに働き方が多様化するこの時代、私は子育てをしながら働くことができて本当に幸せだと思う。

「仕事人間」として勤務時間はバリバリ働き、仲間と笑い。
仕事が休みの日は子供の愛おしさを噛みしめて、全力で遊び、家族と笑う。

保育園ではもうそんなことをしてるの? 今度お母さんにも見せてね! と、自分だけの子育てでは気付けなかったであろう子供の成長を喜びながら、私はこれからも働き続ける。

「おかあさーん!」「なあに?」
満面の笑みで私に突進してくる我が子を、今日も私は母の顔で抱きしめた。

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