『鳥と港』
書きたいと思えば思うほど、私にはもう小説のことがわからない。けれど佐原さんの書く小説を、この先もかならず手にとって読まなければいけないということはよくわかる。
みずみずしい。とにかくこれだ。いつまでも幼い私(たち)は、この一連の青春小説の形をしていなければ、ちりばめられる示唆をまずもう受けつけられないだろう。
この本は『重版出来!』『虎に翼』と同じゾーンに漂う一冊だ。ちょうど今仕事をしていて、そして何年も何年も仕事をしているということをまだ信じられないのだけれど、一寸先はどうなるかわからないことはいつも自覚している。
ついこないだも寅ちゃんを静かに一生懸命に責めながら、いざ実人生に照らしてみればずるくて言い訳がましいことこの上なかった。
そのまま受けとれないものを先に後にキャラクターが背負ってくれているのだ。また家族が特段に心地よくファンタジーであって、それも必要なことだと覚えおく。私のとらえたい小説の正体をまたひとつ明かしてくれた。
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