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産後ケア施設インタビュー#2:島袋夫婦(助産師と起業家、zeroplace)


こんにちは!
あずかるこちゃんの園田です。

今日は、沖縄県浦添市で産後ケアに取り組むzeroplaceのお二人に、インタビューにご協力いただきました。
大学病院で助産師をしていた綾香さんと、新聞社や外資系企業を経てビジネス視点を持っている創平さん。パパにも気兼ねなく利用してもらいたいと、ジェンダーを意識させない色づかいにしたり、ネスカフェやヨギボーと提携したり。その先進的な取り組みについて、じっくり伺っています。
産後ケアをまだ利用したことがないという方にも参考になるお話でしたので、ぜひご覧ください。 

島袋夫婦(助産師と起業家、zeroplace)

【プロフィール】
・氏名:島袋綾香
・所属:zeroplace 助産師
・略歴:琉球大学病院や大阪市立吹田市民病院の産科やベビー室で勤務。退院後のママとベビーをサポートしたいという思いからzeroplaceを設立。産後ケア実務助産師認定や骨盤ケア認定助産師などの資格を取得し、産後のママとベビーのスペシャリストを目指している。
・施設ホームページ:https://www.zeroplace.jp/ 

・氏名:島袋創平
・所属:zeroplace管理
・略歴:掃除・洗濯・ミルクづくり、施設管理・利用者対応・営業活動・経理・経営、とにかく雑務をなんでもこなす。社会課題の解決を目指し、妻である綾香とともにzeroplaceを立ち上げた。

▼産後ケア施設を立ち上げた経緯を教えてください。

綾香:もともとは大学病院で助産師をしていて、2021年の9月にzeroplaceを立ち上げました。病院だと、ママと赤ちゃんに深く関われるのはだいたい1ヶ月健診くらいまで。だけど退院後の生活では、育児が不安な方、支援者がいなくて不安だという方もたくさんいます。そんな方々をもっとサポートしたいと思ったのが立ち上げのきっかけになっています。

創平:僕は新聞社や外資系の企業で働きながら、将来は社会課題の解決に関する事業をやってみたいな、と考えていました。そんな矢先に、妻である綾香と出会って、産後ケアについての課題感や現場が直面している状況を聞いたんです。何とかしたいというのはもちろんですし、国の制度が整ってきたタイミングということもあったので、継続可能な事業にしようと決めて、zeroplaceをオープンすることにしました。今では、産後ケア施設をオープンしたいと考えている方に向けたコンサルティング事業も行っています。

▼お仕事のなかで、やりがいを感じたエピソードはありますか?

綾香:双極性障害の妊婦さんがとても印象に残っていますね。その方は辛いことがあると、お腹を殴ってしまったり、赤ちゃんの心音を聴かせて欲しいというと、拒否されてしまったりという方で。薬を飲みたくないと、部屋に薬が投げ捨てられていることもありました。あるとき、ゆっくり話を聞かせてもらうと、被虐待歴があるということが分かったんですよね。今までの生育歴のなかでは、本人も母親像のイメージがしづらく、人への不信感もあるということが見えてきた。妊娠中から産後まで、どんなサポートができそうか、ご家族も巻き込みながら、細かく一緒に考えていきました。双子ちゃんを妊娠されていたのですが、なんと39週で初産にして経腟分娩で二人出産することができたんです!「自分の力でやれた」ということが、かなりの自己肯定力になったようで、産後は自分から支援を受け入れてくれるようになりました。今でもときどき子どもたちに出産時の話をしているそうで、育児に前向きになってくれてよかったなあと思います。

▼施設をつくる上で、意識されたことがあれば教えてください。

創平:パパも気兼ねなく来られるような場所にしたいと考えて、ピンク系の色は使わず、グレー、ネイビー、グリーンを基調にしました。HPやSNSに掲載する画像も同じトーンに揃えています。

綾香:パパが行きづらいと、パパとママの間で一線できてしまうんですよね。それが嫌なので「一緒に行こうよ」って言えるような、ジェンダーを意識させない雰囲気にしています。実際に、パパと赤ちゃんだけで来ることもありますよ。

▼実際に利用されているパパやママの反応はいかがですか?

綾香:パパからは「妻が元気になっているのが有難い」というお声をいただきましたね。産後ケアにママと赤ちゃんで来ると、パパも一人の時間ができるので、それぞれの時間ができる。だいたいはどちらかが赤ちゃんの面倒を見ることになるけれど、産後ケアで赤ちゃんを預けられると、それぞれが一人の時間を持てるので、気持ちにゆとりができますよね。だから、旦那さんに「産後ケアをどんどん使いな」と言われているという方もいらっしゃいました。

▼zeroplaceは、ネスカフェとヨギボーからサポートを受けているのが特徴的です。どうやって協賛に至ったのでしょうか?

創平:ネスカフェに関しては、僕の元同僚が働いていて、産後ケア事業に賛同してくれたことがきっかけです。施設オープンに合わせたクラウドファンディングの際には、マスコミを集めるお手伝いもしてくれました。いまだに新聞やTVで観たと言っていらっしゃる方がいるので、かなり認知を広げてもらいましたね。ヨギボーはネスカフェからの紹介です。ヨギボーの始まりは、実は創業者が「妊娠中の妻のストレスを減らしたい」とクッションをつくったところから。想いが重なるということで、協賛していただきました。

綾香:zeroplaceには、カフェラウンジがあって、そこでどちらも楽しめます。施設を立ち上げるとき、出産を経験した方にアンケートを取ったのですが、助産院は知っているけど行ったことがないという意見が8割でした。敷居が高くて、理由がないと行けない、というイメージを持たれていたんです。だからこそ、zeroplaceでは「赤ちゃんと一緒にゆっくり過ごせる場所」として、まずは見学しに来てもらえればと、ラウンジを設けることにしました。

▼最後に、読者に向けてメッセージがあればお願いします。

創平:zeroplaceの事業ミッションとして「子育ては、パパママだけでするのではなく、社会でするのが当たり前になってほしい」というものを掲げています。ある利用者の方が「子どもが1歳になったらzeroplace使えなくなっちゃうから、もう一人産もうかな(笑)」と言っていて。もちろん冗談ですが、実際に先日2人目を妊娠されたそうなんです。産後ケアを利用することで、子育ての負担が少しだけ減って、もしかしたら2人目をつくることを考える動機になったのかなと。産後ケア施設がもっと増えたら、もしかしたら少子化対策に繋がるのかもしれません。

綾香:ママとパパの気持ちを緩めることができるのが、zeroplaceの最大の魅力だと思うので、産後で気が張り詰めていたり、夫婦ですれ違ったり、いろいろあるとは思いますが、頼れる先があるということを知ってほしいですね。利用した方から、「ママになったから頑張らなきゃ」と思っていたけれど、zeroplaceに来て「休みたいと言ってもいいんだ」「産後でもゆっくり食事や入浴、睡眠をしても良いんだ」と気付けたという声を聞いて、産後ケア事業をやっていて良かったなと思いました。初めてお産される方は特に「産後ってこんなにしんどいんだ」と感じていると思います。そんなときに受け入れられるよう「しんどくなったらいつでもおいで」という気持ちでお待ちしています。

ライター:今井夕華(https://imaiyuka.net/


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