マジカルミライ2018のBDを見た
実際にボーカロイドのライブを生で見たのは、2012年のニコニコ超パーティと、5周年の東京ジョイポリスでのミニライブの2回だけだ(それからミクの日感謝祭は昔BDで見たことがある)。これまでのマジミラは見たことがなかったが、映像技術、演出ともにレベルアップしていっているのはわかるし、ミクのMCも普通のアーティストのライブと遜色ないくらい流暢にしゃべるし本当に感情がこもっているようで驚いた。
去年は初音ミク10周年ということで、久々に現在のヒットしているボカロ曲を聴きあさってみたが、どれも曲もPVもクオリティが高く、下手なバンドやアイドルよりも聴きごたえがある。ただ一方で、創作用のツールとしてリリースされたボーカロイドがすっかりいちアーティストとして定着してしまった感があり、数年前にボーカロイド文化を説明する際によく用いられた「CGMの連鎖が~」といううたい文句も今ではいまいちピンとこなく感じる。
今は自分自身で歌唱したボカロ曲を再アップしたり、ボーカルの人を起用してバンドやユニットを組む人をよく見るようになり、メジャーデビューの足掛かりとしてボカロ曲をアップしている人が多く感じる。もちろんこれは自分の主観の話であり、有名ボカロPがネットメディアで取り上げられるのが珍しくなったこともあると思う。ただ、現在ボカロ曲を作っている人は確実に代替わりし続けていて、今ボカロ曲をアップしているメインの層にも一人のリスナーとして普通にボカロ曲を聴いて育った人も少なくないはずだ。だから、人が歌うか、ボーカロイドに歌わせるかの境界線は確実に薄くなってきているし、Tell your worldが投稿された時のような、初音ミクスゲーという、ボカロを新しい文化として持ち上げるような熱狂も今では随分とおとなしくなってしまった。
それはボーカロイドが世の中に受け入られて、一定の支持層を得たということだけど、一方で、数年前に感じていた、これまでに見たことのない、予測不能な、未知との遭遇のような出来事も随分と減ってしまった。毎年定期的にコンサートやライブを行い、人気曲はメディアミックスされ、有名Pは別名義、あるいはバンドでメジャーデビューする…そういう出来事が珍しいことではなくなった。ボーカロイドという範疇が一体どこまで広がっているのか今の自分では全く見当がつかないために、音楽メディア等で記事になることばかり目にするおかげで、そう印象を持つようになっただけかもしれない。
ただ一つマジミラ2018を見て思ったのは、俺が本当に見たかった未来は、多くのオーディエンスの前で瞳を潤ませ声を詰まらせるミクさんじゃなくて、砂漠の中でただ一人になっても平然と中指を立てて前へ進み続けるような、そんなミクさんだったということだ。