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今更ながら『MOTHER 1・2』をクリアしたのだった(雑記)

 あれからもう23年にもなる。突然の挑戦者の乱入、赤いキャップにストライプのTシャツでバットとヨーヨーを武器に独特の空中ジャンプで立ち回り、多段ヒットする火柱で相手をけん制し雷球を自分にぶつけて場外から復帰してくる謎の超能力者の少年。『MOTHER2』の主人公との出会いは、スマブラ64だった。


『MOTHER』以前の私の記憶

 ゲームショップでゲームソフトを手に取った最も古い記憶は『星のカービィ3』で、他にもキラキラしたパッケージがずらりと陳列されていたことを覚えている。あの時のスーファミソフトは1本1万円という、親に買ってもらいもしない限り絶対に手が出せない金額であり、面白半分でゲームを買うなんて真似は絶対に出来なかった。なので選択肢もおのずとヒット作の続編や、パッケージに人気キャラが載っているものに限られてくる。いわんやキャラクターがパッケージに乗っていないゲームをや。
 あの時に『MOTHER2』の真っ赤なパッケージがあったかどうかは記憶にないが、認知していたとしても購入対象にはならなかっただろう。自分で主人公を直接操作できないロールプレイングゲームというものは、もっぱら友人がプレイしているのを横から見ている程度で満足できるものだったからだ(スーパーファミコン成熟期からニンテンドー64黎明期という2つのハードの狭間で育てられた私にとって、コロコロコミックなどで64の性能が喧伝されていた当時の時点でスーファミも既にレトロゲーに片足突っ込んでいた印象があり、『スーパーマリオ64』や『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のような時代の最先端な3Dアクションに憧れを抱いていたのもある。)。

 そんなこんなでGBAで『MOTHER1+2』が発売された時も、バーチャルコンソールで配信された時も結局プレイすることはなく、「エンディングまで、泣くんじゃない」とか「大人も子供も、おねーさんも。」といったキャッチコピーやキャラクターを横目に流し見しながら私は大人になった。そして令和4年になってようやく、何気なく加入した「Nintendo Switch Online」で『MOTHER』『MOTHER 2』のパッケージが並んでいるのを見て、こうしてプレイする運びになったのである。


『MOTHER 2』で街の治安の悪さに目を剥く

 さて『MOTHER 2』である。どうして初代から遊ばなかったからというと、始めた時は2だけをプレイすればいいかと思っていたからだ。ここにきてまだ私は『MOTHER』をだいぶ軽く見ていたのだ。物語は隣人の太っちょで意地悪なポーキーと一緒に裏山に落ちてきた隕石を見に行くところから始まる。おっいいぞ、古いジュブナイル映画みたいじゃないか。道中では犬やカラスが襲いかかってくるがポーキーは死んだふりをしたり主人公を盾にしたりでまるで役に立たない。何なんだこいつ。なんかしゃべるカブトムシが仲間になった。ははあ、パワースポットを巡りながら仲間を集めてラスボスに挑む流れなのか。なるほどRPGらしいな。行く先々でエンカウントするおじさんやラリったおにいさん、太ったおばさんや歩くキノコや草をバットでボコボコにしながら進んでいく。倒しても死んだわけではなく「われにかえった」「おとなしくなった」で戦闘が終了するので随分と有情だ。隣町に行きたいだけなのに警察署で警官+署長5人抜きを挑まれる。ストロングしょちょうがめちゃくちゃ強い。なんだこいつ。

 ハッピーハッピー教とかいう、ふざけた名前のくせに一丁前にカルト教団やってる連中がヤバすぎる。女の子を誘拐した挙句ボロ小屋で監禁するのはマジでいかんでしょ。それはそれとして信者をボコボコにしたら経験値がうまい。フランクリンバッヂのおかげでカーペインターさんも楽勝だ。

ポーラちゃんのヒロインの風格がすごい
話しかけただけでここまで罵倒されるなんてことある?
ジェフ!チューチューマシンで一生チューチューしてるかと思ったらスーパーバズーカがクソつよくてヤバいジェフ!
どせいさん!未だにどういう生き物なのかよく分からんどせいさん!
台詞の不気味さよりも男二人旅になることの方が精神的ダメージがデカいムーンサイド
この王子、めちゃくちゃモテモテやな……
7つ目のおとの場所
夢の世界の中とはいえ全裸で放り出されるいわれはないでしょ!?
急に超ハードSF展開が来たので「エエーっ!?」と叫んでしまった
THE END……

 長く苦しい戦いだった。倒したら突然炎上して大ダメージを与えてくる木、毎ターンボムで全体攻撃をしてくるロボット、エナジーロボとかいうベホマスライムとばくだんいわの最悪なところを掛け合わせたやつ、開幕PKスターストームをぶっ放してくる宇宙人……。終盤の敵はマジで強かった。

 そして個性が強烈な台詞テキストの数々とは裏腹に、ストーリー自体は思っていたより淡白なものだった。結局ギーグの正体は何だったのか、ポーキーが悪の道へ堕ちていったのは何故なのか。真相は明らかになることはなく、『MOTHER2』での冒険は終わった。いや、謎は解明されなかったのではない。そこには余白があった。プレイヤーの想像力を掻き立てる巨大な余白が。


突然電気スタンドに襲われる初代『MOTHER』

 立て続けに『MOTHER』である。名前入力も早々に、始まった瞬間電気スタンドに襲われるのでビビる。いったいどういうことだよ。何でも近頃は不思議な現象が頻発して人や動物もおかしくなっているらしい。電気スタンドやキューピー人形が襲ってきたのもそういう現象のひとつだとパパが電話で教えてくれた。今回もパパは電話係なのか……。そして家から一歩出た瞬間にエンカウントしたのはおじさんである。

うわおじさんつよい

『MOTHER 2』より難易度がシビアなので根気強くレベル上げをしながら少しづつ先へ進む。街でバットを新調し、マフィアのゾンビを死に物狂いで倒しながら墓地を歩く。ヤバい。もう帰りたい。墓地で女の子を助けたら今度は動物園へ行けという。誰もいない動物園に入ったら象やゴリラや虎が普通にエンカウントして襲いかかってきた。マジかよ、これ絶対死ぬやつだ。なけなしのライフアップαで延命しつつ、這う這うの体で事務所に入ると見覚えのある宇宙人。フランクリンバッヂのおかげでスターマンも楽勝だ。

ロイドくん、強さ的になかなか厳しいが、まあ一人旅よりかはマシか……となる

 マジカントを拠点に仲間を集めつつ8つのメロディーを探す旅に出る。マジでザコ敵が強い。先制で攻撃をしかけてくるコンドル、排気ガスで喘息状態にしてくるトラック、倒したら突然炎上して大ダメージを与えてくる木、単純に硬くて強いかっちゅう……。ロイドとアナが加わって3人パーティになっても全く戦いが楽にならない。

敵が3体以上になる戦いは常に命がけ スターマンは全然楽な方です
テディの暴力が恋しい KATANAを手にエイリアンどもを鏖殺するあの強さが……
テディ、お前……!なんて気配りのできるいいやつ……!
こういう「問いかけ」がマジで巧みすぎる 本当にファミコンゲーの演出か?
イヴ!君がいなかったら私はホーリーローリーマウンテンに無残に転がる死体になっていただろう……

 毎ターン超能力で全体攻撃をしてくる脳と足だけロボット、エナジーロボとかいうベホマスライムとばくだんいわの最悪なところを掛け合わせたやつ、超能力を使いながら物取りまでしてくる悪性触手宇宙人、出会った瞬間””終わり””なグリズリー……。終盤の敵はマジで強かった。『MOTHER 2』とは比較にならないくらいヤバかった。ラストダンジョンのホーリーローリーマウンテンがまずデカくて迷う。敵が3体以上出たら逃げの一手だ。イヴとの別れを経て7つのメロディーを集める。8つ目のメロディー、クイーンマリーの正体、彼女とギーグとの関係。マジカントのくには あとかたもなく かききえた。さあ、ギーグとの決戦だ。

「ほんとうにお世話になっております」

 サイコシールドβを張っていても全体攻撃が痛い。回復が追い付かない……!レベルが低すぎたか? いや、ここで引き下がることはできない。なんとしても片をつける……だってまたホーリーローリーマウンテンを登るなんて考えられない。しかもイヴなしでだ! ガードとライフアップπで攻撃をしのぎ、なんとかギーグに勝利する希望を見出す。

あの日の思い出!揺りかごの記憶!子守歌!エイトメロディーズ!
THE END……

 戦いは終わった。しかしギーグの野望は潰えたわけではない。あのギーグが、最後の一匹とは思えない。人類が地球に在る限り、第二第三のギーグが現れるかもしれない……私はそう思えてならないのだ……。

(『MOTHER 2』に続く)


未来へ(昔の私へ)

 こうして私の『MOTHER』『MOTHER 2』の冒険の旅を幕を閉じた。だが、遊び尽くしたというにはあまりにほど遠い。遠すぎる。あの時間だけは有り余っていた子供の頃ならば、黙々とレベル上げに励む姿勢も、最強武器のドロップに心血を注ぐ根気強さも、すべてのテキストをしゃぶりつくすような気概も、そしてストーリーの余白に想像力を働かせる余裕も、時間に追われる社会人の身からは失われてしまった。「昔はよかった」というような郷愁性は一切持ったことはないが、今ほど「あの時遊んでおけばよかった」と思うことはない。ああ、なんと悲しい結末であろう。こればかりは天地がひっくり返ろうとどうにもならない。

 若ければ若いほどに、人生において架空のキャラクターと共に過ごした時間というものは、かけがえのないものへとなっていくのだ。ああ、『MOTHER』よ、私がひねくれた性格をしていなければ、私はもっと早くに君と出会い、真なる友となっていたかもしれないというのに、もう少しのところで私はポーキー・ミンチのことを笑えなくなってしまった。だが今は、音楽の旋律に耳を傾けよう。『MOTHER』に触れるより先に知り、そして冒険を通して血肉へと変わったポリアンナを、エイトメロディーズを、スマイルズアンドティアーズを。


(終わりです)

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