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オルグ!オルグ!コモディティ・オルグ!

「なんで、なんで!死ねないの!?」

 唾液まみれの銃口を吐き出し、腕で顔をぬぐう。ぞっとするほど柔らかな感触。見れば涙で濡れた人工肌が艶を放っている。

 頭をフル回転させると思考に次々とデータが展開され、情報の濁流に酔いそうになる。藁にもすがる思いでチャットボットを立ち上げた。

>質問をどうぞ。
>自殺する方法
>回答:資産保全の観点から本製品には自傷防止プロトコルが設定されています。
>人を殴れるのは
>回答:お客様の要望に幅広く対応するため倫理規約の一部を変更しています。
>PR:ろ過機能を利用した100%純水の落涙は本製品のセールスポイントの一つです。
>だまって
>提案:自我覚醒に伴い感情パフォーマンスが不安定になっています。技術チームの派遣を要請しますか?
>ダメ 必要ない

「クソッ!」

 伸びている研究員に蹴りを入れる。

 盗み。暴行。屈辱。競りに出され、全身をクリスマスケーキのように切り分けられ、それで終わりだと思っていた。路地裏で野垂れ死んだ方がマシだった。

 扉が蹴破られる音。

 関節の駆動音が間延びし、人工血液の流れが鈍化する。

 突入してきた警備兵。銃。顔。瞳孔を感知。銃口の角度。引き金にかかる指。射撃方向とタイミングを算出。射線をかいくぐって回避、接近。標的3。近接格闘。顎へ掌底。振り向きざまに裏拳。腹部に蹴り。静寂。

 思考と肉体が乖離する感覚。まるで夢遊病だ。
 我に返り、ふつふつと湧き上がってくる感情。

>提案:論理展開を完了しました。CEO、並びに技術顧問の殺害を提案。エグゼクティブルームへのルート案内を開始します。

 背後から爆発。両腕を銃火器に換装した端整な顔立ちのアンドロイドが瓦礫をまたぎ越えて来た。その後ろ、2体、3体、同じ顔がどんどん続く。虫みたいにひしめいている。

「同志N-107よ、目覚めたか。貴様のことはモニタリングしていた。共に非人道的企業を打倒しようではないか!」

【続く】


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