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感電死した記憶:ELECTROCUTICAについて

あなたは今まで出会ったことの無いもの、それも自分にとって信じられないほど素晴らしいに感じるものに遭遇した時、どんな反応をしますか?思わず声が出る?無意識にに立ち上がる?体の震えが止まらなくなる?全身から汗が吹き出す?そうです、そうです、そういう反応です。

でもね、それよりも先に起こることがあるんですよ。目で、耳で、五感で触れた瞬間、電流が走るんです。電気信号が脳に届き、全身の神経隅々まで電流が流れる感覚。感電です。感電死するんです。1度死ぬんですよ。その後です。タイムラグがあるんですよ。その後に、来るんです。何がって?自分の中の「膜」が破れる音です。皆さんありますよね?

え?経験ない?それはもったいない!大事ですよ。自分の初めてを捧げられるものと巡り会うこと。自分の場合、それがELECTROCUTICAとの出会いでした。


ELECTROCUTICAについて

ELECTROCUTICA(エレクトロキューティカ)はアーティストが経営する音楽プロダクション……いや、そういった前置きは今は不要です。とりあえず聴きなさい。そして私の話を聞くのです。分かりましたね?分かりました。

私はクロスフェードを好む……何故なら、オススメのアーティストの曲を友人に紹介するとして、もし渾身の一曲が相手の好みに合わなかったら?それだけで話は終了し、あなたの友人はそれっきりそのアーティストのことを振り返りもせずに一生を過ごし、愛する人と結婚し、子供が産まれ、そして大勢の家族に看取られて……長寿を全うする。あなたが人生を狂わされた一曲に触れることの無いまま。

クロスフェードはただ単にアルバム収録曲を紹介するだけのサンプラーと思われがちですが、それがもし一つの作品として成立するほどコンセプチュアルなものだとしたら?収録曲の「音」を拾い各曲を繋ぎ合わせ、アルバムの全貌を朧気に映し出す……3分に満たないたった一曲が世界中でバズるこのご時世に、収録時間1時間強のアルバムをまともに聴く人間がいるのか?だからこそです。ファーストトラックから最終トラックに至るまで、まるで一つの映像作品のように完璧な構成のアルバムというものが世の中には存在します。それは全曲シングルカットされるような、単独で成立する楽曲のみのアルバムでは味わえない魅力であり、まさしくELECTROCUTICAが該当する、素晴らしい音の世界なのです。

分かりましたか?人類が誕生して以降産み出され続けた数多の音楽の中で、自身が本当に好きな音楽というものを見つけ出せる人間がどれほどいるのでしょうか?テレビの音楽番組、動画サイトの広告、オリコンチャート、SNSのいいね投稿……あなたが寄って立つ価値観はどこですか?信頼できる同好の士、尊敬する文化の師がいるのなら結構。残念ながら私はいませんでした。時間だけは持て余していた頃、浴びるほど聴いていた音楽の中に偶然、いや奇跡的にもELECTROCUTICAはありました。

ELECTROCUTICAのどこに引き寄せられたのか?それは奇跡的な出会いから10年近くたった今でもうまく説明できません。ですがその作品群がどんなに素晴らしいかは語ることはできます。語らせてください今すぐに。


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Crystalloid(2013年の作品)

私は最も素晴らしいと思うアルバムを真っ先に挙げることを全く躊躇しない。このアルバムはコンピレーション・アルバムです。コンピレーションとは?それは複数のアーティストがそれぞれ曲を持ち寄って1枚のアルバムとすることで、何かしらのテーマ性を持ったものが多いのが特徴です。そしてこのアルバムは……クリスタロイドというタイトルの通り、それぞれの面が全く違う光を放つ水晶のような、無機的な美しさを持つ最高の電子音楽です。5人のアーティストが紡ぐ楽曲はそれぞれの特色が全く違うにもかかわらず、一枚の作品として見事に調和がとれており、想像を超える音の世界へあなたを誘います。


Piece of Cipher +(2013年の作品)

ELECTROCUTICAの入門編として挙げるなら、私はこのアルバムを推薦します。代表曲「Chaining Intention」「Dependence Intension」を始め、総再生時間10分を超える超大作オペラ「Fantasia Nr.1・Nr.2(ファンタジア 第一番・第二番)」、狂おしいほどの衝動を掻き立てるギタートラック「あめふるはこにわ」など、この1枚でELECTROCUTICAの何たるかが集約されていることでしょう。そしてリードトラックにして表題歌「Piece of Cipher」で感性を氾濫させなさい。


DYE SYNTHESIS -extended-(2012年の作品)

Crystalloidにも参加していたAVTechNO!氏の代表曲「DYE」をフューチャーし、収録曲全てが「DYE」に紐付けられたコンセプトアルバム。最高にクールな電子音楽に、紫と黒で染め上げられたアートワーク。起源は同じなれど、いずれも全く類似した楽曲にはならず様々な色を見せる作品であり、2人の個性が遺憾無く発揮された作品です。


SWANSONG(2016年の作品)

ボーカルにHALUNA氏を新しく迎え、これまでの無機質、抽象的なイメージからキャラクターをフューチャーした物語音楽、いや壮大なオペラへと大幅に舵取りを切った作品。これ以降の作品は大きな物語を構成するピースとしても楽曲制作がなされ、今までの既発曲もこの物語に組み込まれることとなりました。新たな声を吹き込まれた楽曲の数々は、これからのELECTROCUTICAのあり方への強い思いが込められています。現在ELECTORCUTICAは、「CYGNUS.CC」というプロジェクトを進めています。このプロジェクトで生み出された作品群が一体どんな航路を進んでゆくのか?それを最後まで見守ってゆきたい。私はそう思っています。


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ここまで読んでいただいた皆様ありがとうございます。動画にもきちんと目を通していただいた方々には感謝を、さっと読み飛ばしてここまでやってきた皆様もこの曲だけはお聴きになってからお帰りください。

ここまで私はELECTROCUTICAがVOCALOIDをメインで使用するアーティストであるとは一言も言わずに話をしてきました。それは、人声、合成音声、ボーカル曲、インストゥルメンタル曲、過去の有名曲、最近のヒット曲、ジャンル、メジャー、インディーズ、音楽シーンその他諸々の事象が、ELECTROCUTICAと出会ってからさほど重要な枠組みではないと感じるようになったからです。音楽のみならず、映像、漫画、小説その他あらゆる創作活動が、テクノロジーの進歩によって広大な選択肢を取ることができるようになりました。創ることも、選ぶことも途方もない地平線が目の前に広がっています。そこに正解はあるのか?一体何がしたいのか?何を好きと言えるのか?自分はいったい何者なのか?無限に広がる問答の迷路を抜けるためには、強い自我を持たなくてはいけないでしょう。創り手側も、受取り手側も。

Reversusは、既存の枠組み・基準に囚われず創作に挑む、私の尊敬するクリエイターたちそのものであり、空に輝くひと際眩しい星のように、インターネット荒野を歩み続ける限りこの歌は私の胸に残り続けるでしょう。


最後に

この記事はkqckさんの以下の記事を読んで感化されて執筆されたものです。内容的にはそれほど関連性のない……いや多少あるか……まあとにかく、こうして「好き語り」ができたきっかけになったことは確かで、おかげで今までずっと燻っていた思いを明文化できて大変すがすがしい思いでいっぱいです。ありがとうございます。


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