【雑記】逆噴射小説大賞2024お疲れ様でした、そして近況、最近読んだ本について
お久しぶりです。azitarouです。
逆噴射小説大賞2024お疲れ様でした。今年は「空騒ぎフラッパー」で参加しました。
個人的な最近の流行に合わせてジュブナイルでメメント・モるような方向でつらつらと書いたのですが、「ちくしょう……このままだと辛気臭くてベンチでクジラを考える小説の亜種になっちまう……そうだ!生霊を出して夢バトルさせようぜ夢バトル!」という感じで後半の展開を盛ったのですが、800文字内でのバランス配分は非常に難しく、どうにも宙ぶらりんな感じになってしまった気がします。
投稿できたのは一作だけでしたが、既に続きを書いておりますのでそのうち完全版が投稿されるでしょう。よろしくお願いいたします。
ちなみに昨年の応募作品とその完成作品はこちらです。
もう一年経つのか……。
カクヨムにも小説を投稿しました
逆噴射小説大賞に先立って、カクヨムにて小説を投稿していました。
これは小説というよりも、フッと浮かんだシチュエーションと会話劇を文字起こししただけの実験的なものなので、全然人に読んでもらう体裁をとっていない作品になります。タイトルすら5秒で考えたものなのでマジで他人に読んでもらう気がない。ビュー数とかも全然気にしてないです。
とりあえず「学園もので性別不明ヒロインをやりてぇ~~~」という初期衝動で始まったやつなので、そういうのが好きな方はほどほどに期待していてください。全4~5話くらいで終わるのを想定しています。気長にお待ちください。
小説をモリモリ読んでいる
9月ごろから小説をモリモリ読んでいます。本当にたくさん読んでいる。ライトノベルとかミステリとかファンタジーとか、とにかく節操ない感じで片っ端から読んでいるのですが、それもこれもずっと読めずじまいだった本ばかりです。綾辻行人、米澤穂信、桜庭一樹、乙一……それこそ10年以上前から名前は知っていても、終ぞ手に取ることのなかった作者の小説を読みふける毎日で人生の周回遅れも甚だしいのですが、どれもめちゃくちゃ面白く、この年で読んでかえって良かったと思えるような出会いもちらほら。ブギーポップや西尾維新のようなシリーズものも引き続き読んでいきたいですね。ただ代償として、ゲームと映画に全く手がついておりません。可処分時間が全然足らなくて困る。
赤朽葉家の伝説 /桜庭一樹
一代の女を柱にした大河的な年代記であり、圧巻の物量。あとがきにて言及がある通り、「百年の孤独」のような史実と伝説が入り混じったマジックリアリズムが特徴の小説。序盤、日本の歴史をなぞりながら紅緑村の勃興をなぞっていく様は読み応えがありつつ、娘、孫と時代を下るにつれて、描かれる物語が神話の黄昏時からブッ飛んだヤンキーもの、そして祖母が遺したミステリへと変遷していくのには驚く。
アクの強い個性を持つ子ばかりが生まれる赤朽葉家にブエンディア一族をつい重ねてしまうが、あちらと違って雪が溶け新芽が芽吹く、未知の未来を暗示する着地点は美しい。エネルギッシュで不可思議を許容する混沌とした戦前〜高度経済成長期から、現代編の平成世代の冷めた描写によって夢から覚めたような心地がある。良い本です。
GOTH 夜の章・僕の章 / 乙一
殺人に異様に興味のある少年少女が猟奇殺人事件に遭遇し、好奇心から犯人調査に乗り出すクレイジーダークミステリで「教室で犯罪とか殺人の本を読んでるぼっち陰キャ学生」ド真ん中すぎてリアタイで読んでたらマジで危なかった。このナリで(失礼!)ちゃんとミステリをやっているのが変なところで真面目で関心する。
猟奇的殺人事件で叙述トリックで淡い青春でライトノベルで本格ミステリでもあり、「夜の章」では死のファムファタっぽかった森野さんがその実巻き込まれ系ヒロインで、「僕の章」を読み進めるうちにマジでヤバいヤツだったのは主人公くんという種明かしは痛快ですらあるが、いつ残酷物語に転げ落ちるのか非常にヒヤヒヤした。主人公くんと森野さんの滑らかな殺人&自殺トークが非常に心地よく、ジュブナイルらしささえ感じるのは思わぬ収穫。陰鬱で死体がいくつも転がってるのに素晴らしく爽やかな読了感。
失われたものたちの本 / ジョン・コナリー
「君たちはどう生きるか」が影響を受けた本ということで手を取った小説。異世界に迷い込んだ少年の冒険譚ということで児童文学チックな物語かと思ったが、ブラックユーモアに改変された童話がいくつも織り込まれており、なかなかにエグい内容。とは言えそれらもデイヴィッド少年が見て聞いて感じたことと心情描写に深く根付いており、ただただナンセンスな要素というわけではない。読んでいる間に感じたものとしては「君たちはどう生きるか」よりも宮部みゆきの「ブレイブ・ストーリー」に近いかもしれないと思いつつ、そしてそれらにはない最終章の重みに思わず長い息を吐いてしまった。子どもが大人へと成長する階段の踊り場に置くべき本。
ボトルネック / 米澤穂信
生まれてくるはずだった姉のいる並行世界に迷い込むと、そこは自分のいた世界よりもちょっとずつ良い世界だった。両親は仲睦まじく、兄は事故に遭わず、そして……恋人も生きている。自分と姉、二つの世界を照らし合わせるうちに「お前は間違い探しの間違い側だった」を突き付けてくる残酷さ。事あるごとに「お前は姉よりも劣っている」「お前じゃなく姉が生まれてこれば良かったのだ」を言外に突きつけてきて、読んでいるこっちがつらい気持ちになる。
正直言ってリョウが悪いことは何一つもないのだが、こうも姉との差を見せつけてくるのがマジでキツく、その姉もまたリョウをひっくり返したような機転と明るさと行動力を持ち合わせた光の姉すぎて、結果として弟の影がどこまでも黒く沈んでいくのが非常にクる。荒廃した家庭環境で育まれた生きるための術、つまり冷めた思考は自分のためにしかならないという残酷な答え合わせ。こんな薄い本なのに容赦なく心をベコベコに凹ませてくる。スナック感覚の猛毒。
八つ墓村 / 横溝正史
最高のエンタメ推理小説。おぞましい男の所業、忌まわしい因習、戦前の古い価値観が至るところに残る貧村で起こる連続殺人。全てが疑わしく見える登場人物に翻弄され、謎が謎を呼ぶ証拠品に頭を捻り、隠し穴から続く鍾乳洞の広大さに驚愕し、そして疑心と怒気に駆られた人間の恐ろしさにヒリヒリする。そして陰鬱なタイトルから想像もできないほどの大団円を迎える素晴らしい体験。犯人探しのミステリに宝探しの冒険にラブストーリーに本当の父親を巡る人情話と、今読んでも全く色褪せない面白さがある。本当にすごい。
(終わりです)