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#文舵練習問題9 #文体の舵をとれ

「どうするの?」
「どうするって、親権のことはもう話がついてるでしょ」
「いや、そっちじゃなくて」
「じゃあなに? 家のこと?」
「家のことも親権と一緒にかたはついてるだろ」
「じゃあなんなの? はっきり言ったら? もったいぶらないでよ」
「観葉植物! エリザのこと!」
「あ、ザベス?」
「ちがう、エリザだけど」
「ヤマドリヤシのことね、酔っぱらった勢いで高橋さんのところから引き取ってきたやつ」
「俺正直エリザのことめちゃくちゃかわいがってた自信るから。家の中で俺が一番エリザを愛してたから。だからもちろんおれが引き取るつもりだったんだけど」
「いや、でもそれ、マルコが気に入ってたやつだから。マルコは私と一緒に暮らすことが決まってるしさ、引き離すのはかわいそうじゃない?」
「俺だって可哀そうだよ、ひとりになるんだからさ」
「それに、これたぶん大きくなるよ。すごい大きくなっちゃったら、賃貸の家だとザベスがかわいそうだよ」
「いや、エリザだけど、エリザは俺と来たいって言ってる気がするんだよな、マルコにはよく爪とぎされて離れたがってる感じもしてたんだよな」
「いや、勝手に観葉植物の気持ちを代弁するなよ、気持ち悪いな。そういうところが嫌だったんだよ」
「最後くらいちゃんとしたいんだよ」
「ちゃんとってなに? なんなの……まぁいいよ、持って行きなよ、いいよ、それで君が満足するなら、それでいいよ」
「ありがとう。恩に着る」
「うん、これですっきり別れられるなら、安い気がしてきた。ばいばい、ザベス。大きくなるんだよ。おじさんさみしがりみたいだから、支えてあげてね」
「ばいばい、妻だった人」
「さよなら。元気でね」

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