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三毒史/椎名林檎 聴いた。見た。勝った

 聴いた、見た。勝った。

 信心の足りない私は届く直前まで「通常版でよかったのではないか」などと徳の足りないことを考えていた。杞憂だった。むしろ限定生産盤でよかった。まず歌詞カードあるだろ。あれがな。まるで小説みたいなんだよ。そして収まっている写真にあのほくろがある。なんでか甲冑姿の姐さん。

 甲冑。西洋の。あの重いやつ。


 そして肝心の中身だが。これがいいんだよね。文句の一つも出てこねぇや。毎回大好きな人の新作は、今度こそ大嫌いになる覚悟で聴く。それが愛や礼節と言うものでしょうよ。でも今のところ全部好きだし聴くたび好きになっていく。好きでいさせてくれてまじありがとうございます。

 まず一曲目「鶏と蛇と豚」に心を掴まれる。何事!? 事変じゃ! って感じで頭の中の姫を叫ばせてください。そっから「獣ゆく細道」宮本さんの声の伸びが奥行きあっていい。林檎さんの声は低いのに細くて前に出てくるから二人合わさるととても広さのある空間にいるように感じる。「マシェリ」なんかでもこれ娘と母親の歌だと思っちゃったんだよな一瞬。うらら。好き。「駆け落ちもの」ふたりともかなり細くて震えた高音が特徴なので聴いてるとけっこう苦しい。繊細さ倍加、という印象。聴くのに気合が要ります。「どん底まで」タイトルに反して明るい! 好きだ!「神様、仏様」英語タイトルがいいね!好きに決まってるでしょこんなん。大好きに次ぐ大好きの中の大大大大好きだよ。聴いてるだけで極楽に行ける。

 アルバムのど真ん中で満を持して「TOKYO」。これ、アルバム聴いた人がみんな褒めてて、私はラジオで聴いた限りだと「いや私はそうでもないと思います」とかかっこつけて思ってたんですがアルバムの中で聴くともう最高で大好きでかっこよすぎて苦しかった。歌詞カード見て? いいから読んで。それにつきる。美しい短編小説です。小説と違って歌詞には時間と方向性というしばりがあるけどうまい作曲兼作詞家はそれを利用して情報量マシマシで曲を作ってくるのでやってらんねぇなという思いです。「長く短い祭り」のMVに出てた女の独白だとするともう最高だし文学性ありまくりで芥川賞ものじゃないでしょうか好きです。

 「長く短い祭り」あかんはずがない。伴奏が死ぬほどかっこよくて好き好き好き好き。歌詞の刹那的な思想。もうこれ新しい宗教じゃろ。完璧、瑕疵のない曲だと思います。たたたたらたたーたたたたたらたたったららったらたったらたー!
 「至上の人生」二枚目のアルバム出したころの姐さんの歌を思い出しました。曲も。終わり方も。
 「急がば回れ」めっちゃ好きだ。愛だろう。わいな。っていう林檎さんが好きすぎるのでやめないでほしい。まじあの不安定な音階のやりとり好きすぎる。最後がほんとに好き。いうなれば。
 「ジユーダム」がってん!がってん!がってん! 「目抜き通り」たのちい。トータス松本さんの声の伸びの良さ好きだな。椎名純平さんとのデュエット曲もすごく好きだったけど、目抜き通りはあのころよりもバージョンアップされている感じがしてほんとに好きです。「あの世の門」意外とこれ私怖いと思わなかった。ポジティブに受け取りました。なんだけっこういいとこじゃん。落ち着く。思ったよりも怖くないよ。ただ自我が溶けていくような。ひとここち。もうこれ以上暗いところなんかない。


 ああああよかった!!!!!聴いた!!!!満たされた、ごちそうさまでした。とてもいいアルバムでした。みんなも聴いてみて! 聴き終わったら未聴の人は『加爾基 精液 栗の花』聴いて! 「映日紅の花」もカルキに通じる雰囲気あって好きなので聴いて!


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