フォノイコライザーのSN比

フォノイコライザーのSN比の話です。(取り止めのない書きぶりです…)

プリメインアンプを含め、あらゆる音質改善の重要ファクターのひとつはSN比だと思います。
SN比が上がることで、バックグラウンドがより黒く、音像/音場が綺麗に出現するようになるからです。
フォノイコライザーの場合は、CD等デジタル音源よりはるかに小さな出力電圧のレコードカートリッジの増幅も担っているので、露骨にSN比の違いが出てきます。

値段を上げれば当然SN比も良くなるだろう…とはならないのが、この機器の選定の難しいところです。しかも、デジタル音源のように基準になるカートリッジの出力電圧はないので、単に「SN比: XXdB」と書かれたのでは、いくつの入力に対する値なのかが不明瞭で、入力値を操作すれば見せかけのSN比をよくすることが可能です。その点、入力換算雑音は実力値を知る上で便利な指標のようです。

以下は経験上の話です。当時は値段をあげれば当然音が良くなるものと考え、20万円クラスのフォノイコライザーを購入しました。当然音数は増えるのですが、何かモヤモヤしたものを感じました。スペックを見るとMM/-120dBV台、MC/-140dBV台と、今日的にはごく一般的なスペックです。そのモヤモヤとは、アキュフェーズ並の入力換算雑音の低いフォノイコライザーに入れ替えたことではっきりしました。クラシック音楽を中心に聴く場合、「ホールトーンが今まで希薄だった」「音像が大きく感じていた」「ピアノの中音域に濁りがあり、左右手の交差が表現できていなかった」。それらの不満は全て解消し、静かで表現の硬さが取れしなやかさまで出てきました。それもそのはず、このフォノはMM/-140dBV, MC/-156dBVと、直前まで使っていたフォノとSN比スペックがMM/MCとも-20dBVレベルで違っています。しかも出力電圧の低いカートリッジ程その差は大きくなります。
無音時のスピーカーに耳を傾けてみます。それまでのフォノは通常聴取音量から少し上げたところでサーノイズが聴こえてきますが、新しく入れ替えたフォノは全くノイズ音が聴こえません。

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ところで、アナログオーディオ全盛期のフォノはどうだったのか?を調べてみると、当時のプリアンプは高級機になる程著しくフォノのSN比が高いことに気づかされます。入力換算雑音MM/-130dB以上、MC/-150dBV以上は当たり前、ヤマハの場合、MC入力で-160dBVレベルに達しているモデルもありました。
これが現代になると、どうしてハイエンド価格帯のものでMC/-150dBVを切ってしまっているのでしょうか…。当時の設計ノウハウの断絶、最適部品のディスコン等色々あるのでしょう…。試しにテスト用として入手したヤマハCX-1はアナログ終焉冬の時代に入り始めた頃のプリアンプですが、それでもMM/89dB(2.5mV入力≒-141dBV)、MC/84dBV(0.25mV入力≒-156dBV)あり、やはり広大な音場感を楽しめました。同モデルはフォノ入力に定評ありますが、納得のいくものでした。

もちろん、昨今のアナログブームで再度フォノ入力にも力が入り始めた傾向はありそうです。
ifi audioは廉価ながら良さそうなフォノイコライザーをリリースしていますし、テクニクスはプリメイン内蔵のフォノ入力に力を入れているような記載が見られます(手持ちのテクニクスSU-GX70はコスト、音色、SN比のバランスが取れていると思います)。同社トップエンドのSU-R1000ではクロストークキャンセラー等デジタル技術を駆使した新しい取組もあります。

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新時代においても、SN比の優れたフォノが続々とリリースされればな、と思うのでした。

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