書籍流

諸兄は書籍流をご存知だろうか。

念のため記すが、書籍の流儀ではないし、書籍と言う名の流派でもない。

積み上げた本が、ミシミシと言う前兆音を上げ、土石流のごとく崩れ落ちる様相。私はそれを、書籍流と勝手に呼んでいる。

私は本、とりわけ漫画が大好きで、中学時代から基本的に本を捨てていない。泣く泣く売却した本はあるが、数日したらその倍近い本を嬉々として買ってくる。

現在の推定冊数は40000冊。二階の自室は軋み、重量で床が2㎝ほど凹んでいる。地震と相まって家にヒビが入り、同居する両親は早く本を減らせと絶叫するが、悲しいかな本は増えるばかりである。父の書斎はおろか、階段、一階居間、食卓、結婚して家を出た弟の部屋までも、本が堆積している。トイレにないのは、トイレットペーパー代わりにされかねないからであり、風呂場にないのはふやけるからである。燃えても困るから、台所とストーブの周囲にも置かない。しかし逆に言えば、本はそれ以外のほぼ全ての場所に積まれている。

その本が、ある日突然、唸りを上げて崩れてくる。幸い、本日までの怪我人は私だけで、本に囲まれて身動きができないのも私だけである。本に潰されて死ぬのなら本望だが、その後に両親が本を捨てるのは目に見えているので、まだ倒れるわけにはいかない。

書籍流は、積んであった本が怒濤のごとく崩れてくるので、命の危機を感じる反面、昔に買って積んだ珍しい本が出土することもあり、とても楽しい。

なお、本の類型は、漫画、ややエロい漫画、ハウツー本、エロ本、エロ漫画、エロ雑誌など多岐に渡る様でいて結局エロが多い。これだけ本がありながら、女性が表紙でない物を探す方が困難な有り様である。もっと広範なラインナップを目指したい。

書籍流が起こったら、ひたすら積み直すのが日課である。我が家を視察した福祉関係者は、まるで賽の河原の様だと評した。今日も積み直しが楽しい。下になる本は読めなくなるのがやや心苦しいが。

蔵書が全て整理できた時、私の精神病は終わると予言した福祉関係者がいた。そんな日がいつかは来るのだろうか。



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