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雲の上の保養施設

かなり標高が高い位置にある建物の中にいる。
眼下に雲が見えるくらいの高さだ。
スムーズで近未来的なデザインだが、檜のような木材が使われている。
どこかの保養施設のようなところ。
大勢の人がくつろげるような流線型の大きな椅子のような形の台がいくつかあって、壁一面のガラス窓がある。
その空間自体も、斜めに緩くシェイプしているみたいだ。
天井はさほど高くなく、横から自然光で満たされて室内は明るかった。
外は霧が出ているようで時折、下が見える。

二人の女性が自分と共にいて、話をしていた。そのほかは無人だ。
正確には「今」は誰もいない。けれど過去のタイムラインにはたくさんの人たちが来ているのが見える。
そこで彼女たちにここについての話を聞いている。
いろいろな施設があって、温泉のようなものもある。
なぜ、あんなに穏やかなところだったのに人がいなくなってしまったのかもわからない。

下の方にはさらに居住スペースのようなものがたくさんあって、みんな同じような服を着ている。スーパー銭湯の作務衣が、もっと洗練されたような感じだ。薄いグレーというか小豆色というかサラサラとした素材でできていた。

一人の女性と話していると、音がなった。
30秒経つと彼女は消えた。それは彼女の思考モデルの再生だった。
もう一人の方の残された時間も、そう長くはないだろう。
でも不思議と寂しさはなかった。

このモデルと記憶データがあれば、いつでも再生できる。
それはあたかも、故人と新しい時間を共有する錯覚がある。
ただその再生時間を購入するだけ。

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