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「明日天気になれ」(中島みゆき)君は、絶望の中でも希望を捨てずに生きることが出来るのか。

中島みゆきの「明日天気になれ」は、日常に潜む悲観と楽観の狭間で揺れ動く心情を描いた作品です。人間の持つ弱さや諦め、そしてその一方で捨てきれない希望が表現されており、自己矛盾や感情の揺れが繊細に描かれています。以下、歌詞の解説をしていきます。

1. 絶望的観測と慎重な姿勢
「なんにつけ一応は 絶望的観測をするのが 癖です」

歌の冒頭部分では、何事にもまず悲観的に考えてしまうという主人公の癖が語られています。楽観的に期待することを避け、失敗や裏切りに対して事前に自分を守ろうとする防御的な姿勢が感じられます。

「わかりもしない望みで 明日をのぞいてみたりしないのが癖です」
ここでは、不確かな希望に期待を持たないことで、自分を失望から守ろうとする姿勢が強調されています。夢を抱くことに慎重で、希望を持つこと自体を避けようとしています。しかし、心の奥には実は微かな望みがあることも感じ取れます。

2. 夢と欲望の存在
「夢もあります 欲もあります かなうはずなんて ないと思います」

この部分では、主人公が夢や欲望を持っていることを素直に認めていますが、その夢や欲望が叶う可能性を自ら否定しています。夢を持ちながらも、それに期待することを避けるという、現実主義と夢見心地の相反する気持ちが入り混じっています。

「夢に破れて あてにはずれて 泣いてばかりじゃ いやになります」
夢を追いかけても、結局うまくいかず、涙を流すことが多い。しかし、その状態に嫌気が差しているという感情がここで吐露されます。夢を持つこと自体が苦痛にもなり、失敗の繰り返しに疲れ果てている様子が表現されています。

3. 雨が象徴するもの
「雨が好きです 雨が好きです あした天気になれ」

「雨」が主人公にとって重要な象徴として登場します。雨は悲しみや孤独、または浄化の象徴でもあり、主人公はその雨に心地よさを感じているようです。しかし、その雨がいつまでも続くのは望んでおらず、「あした天気になれ」と、未来への微かな希望を抱いています。雨に対する愛着はあるものの、やはり晴れ間を期待しているという、複雑な感情がここに現れています。

4. 宝くじに託す期待と現実
「宝くじを買うときは 当るはずなどないと言いながら 買います」

ここでは、宝くじに対して表面上は冷静に構えている様子が描かれています。宝くじが当たるとは思っていないと自らに言い聞かせながらも、実際には希望を持っていることが示されています。

「そのくせ 誰かがかつて 一等賞をもらった店で買うんです」
期待しないと言いつつ、当たった実績のある場所で購入するという矛盾した行動に、内心の期待が垣間見えます。自分を諦めさせようとしながらも、実は少しでも可能性に賭けたいという人間らしい心の葛藤がここで描かれています。

5. 愛と孤独
「愛が好きです 愛が好きです あした孤独になれ」

「愛」が主人公にとって求めるものの象徴でありながら、「あした孤独になれ」と逆説的に孤独を受け入れようとしている姿が見えます。愛を求めつつも、その愛が叶わないことを予測し、孤独になることを覚悟している様子が描かれています。この矛盾した心情が、歌全体を通してのテーマである「悲観と希望のせめぎ合い」を強調しています。

6. 総括
「明日天気になれ」は、現実に対して悲観的でありながらも、どこかで希望を捨てきれない人間の姿を鮮やかに描いています。主人公は自らを守るために、表向きは「夢も愛も叶わない」として絶望的な態度を取る一方で、内心ではその夢や愛が叶うことをどこかで期待しているという微妙な感情の揺れを抱えています。

雨が降り続いても、その先に晴れ間を待ち望む気持ちが込められており、この詩全体を通して「明日天気になれ」というフレーズは、希望を持つことの大切さを象徴しているといえます。

中島みゆきの「明日天気になれ」における教訓は、現実の厳しさに直面しても、心の奥底に希望を持つことの大切さだと言えます。この詩を通して、以下のような教訓を導き出せます。

1. **期待と失望を受け入れつつ生きる**
人は、夢や欲望を抱きつつも、それが叶わないことに慣れてしまうことがあります。この詩の主人公も、何度も夢に破れ、失望を味わってきたため、表面上は期待しない姿勢をとります。それでも、諦めきれずに希望を持つ自分との葛藤が描かれています。この姿から、「失望や失敗はつきものだが、それでも夢を見ることを止めない姿勢」が重要だという教訓が浮かび上がります。

2. **悲観と楽観のバランス**
詩全体で描かれるのは、悲観的な思考と楽観的な願いのバランスです。「絶望的観測をするのが癖」と言いながら、宝くじを買ったり、「明日天気になれ」と願ったりする行動には、心の中に微かな希望が存在しています。人生の中で悲観的になる瞬間があっても、どこかで楽観的な期待を持ち続けることで、前に進んでいけるという教訓が示されています。

3. **希望を捨てない**
「明日天気になれ」というフレーズは、人生における様々な困難や失望にも関わらず、どこかで明日への希望を持ち続けることの重要性を表しています。雨(困難や悲しみ)を経験したとしても、その後には晴れる瞬間がやってくるという考え方が、詩全体に込められています。希望を抱き続けることが、どれだけ困難でも前を向いて生きるためのエネルギーになる、という教訓です。

4. **夢と現実を両立する強さ**
夢を抱くことは時に現実的ではないと感じられますが、この詩ではその夢と現実を両立させる心の強さが描かれています。主人公は「かなうはずなんて ないと思います」と自らの夢に対する期待を否定しつつも、夢や欲望を捨てていないことを認めています。この姿勢から学べるのは、夢と現実をしっかり見据えつつ、どちらも否定せずに受け入れる強さです。

5. **困難に対してのユーモアや皮肉を持つことの大切さ**
この詩の中では、宝くじを買うときや、夢に破れたときに、どこか自分に対して皮肉を込めたユーモアが感じられます。「当たるはずがない」と言いながら宝くじを買うように、人生の不確実さに対してユーモアを持ち、自分を客観的に見つめる力が必要です。自分の失敗や期待が外れることに対して笑ってみせることで、困難を軽減し、前向きに進んでいく力が生まれます。

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総合的な教訓
この詩から得られる最大の教訓は、**「絶望の中でも希望を捨てないで生きること」**です。どれだけ失望や現実の厳しさに打ちのめされても、希望や夢を持ち続けることで、明日がより良いものになる可能性を開くことができる、という強いメッセージが込められています。

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