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「地上の星」(中島みゆき)は、未来を照らすのか。

中島みゆきの「地上の星」は、社会の中で名声や成功に目を向ける一方で、見過ごされ、評価されることのない人々や事象に光を当てる歌です。この詩は、輝かしいものや成功を追い求める人々が、その足元にある「地上の星」、すなわち目に見えない努力や価値ある存在に気づかないまま進んでいく様子を描いています。

1. 見えない存在と見送られない努力
「風の中のすばる 砂の中の銀河 みんな何処へ行った 見送られることもなく」

この冒頭の部分では、風の中に消えていくすばる(星)、砂の中の銀河といった美しい存在が、気づかれることなく見過ごされている様子が描かれています。ここでは、人々の目に留まらず、評価されないまま消え去っていくものたちが象徴されています。輝かしい名声や成功を追う一方で、見送られることのない存在があるという現実が強調されています。

2. 見守られない者たちの孤独
「草原のペガサス 街角のヴィーナス みんな何処へ行った 見守られることもなく」

続いて登場する「草原のペガサス」「街角のヴィーナス」も同様に、注目されることなく消え去っていく存在として描かれています。これらの存在は、神話や美しさを象徴するものですが、彼らもまた見守られずに消えてしまう。つまり、どんなに価値があるものでも、それが気づかれなければ評価されないという無常観が表現されています。

3. 人々の視線は空へ、見えない星たちの孤独
「地上にある星を誰も覚えていない 人は空ばかり見てる」

ここでの「地上にある星」とは、名もないが、努力し続ける人々や無名の存在を指していると解釈できます。「空ばかり見てる」というフレーズは、人々が名声や成功といった上ばかりに目を向けていることを象徴しています。その結果、地上に存在する多くの「星」たちは見過ごされ、誰にも気づかれずに孤独に存在しているのです。

4.つばめの役割と問いかけ
「つばめよ高い空から教えてよ 地上の星を」

つばめは、空高く飛びながら地上を見渡す存在として描かれています。ここでは、地上の星(無名の存在や努力)を見つけてほしいと願う、切実な問いかけがなされています。空ばかり見上げて輝くものを追い求めている人々に対し、地上にある見過ごされたものの価値を問いただす役割を担っているのがこの「つばめ」です。

5. 「名立たるもの」への執着と「氷」の象徴
「名立たるものを追って 輝くものを追って 人は氷ばかり掴む」

ここでは、人々が「名立たるもの」や「輝くもの」を追い求める様子が描かれています。しかし、その結果として掴むものは「氷ばかり」。氷は儚く、溶けやすいものとして、短命な成功や虚しさを象徴しています。目に見える成功を追い求めても、それが長く続かないものであるという教訓がここに込められています。

6. 再び地上の星への問いかけ
「つばめよ地上の星は今 何処にあるのだろう」

再び、地上の星に目を向けるようつばめに問いかけています。この繰り返しのフレーズは、何度も無視されてきた「地上の星」、無名の努力や成功を掴めない者たちが、なおもそこに存在し続けているという現実を強調しています。

総括

中島みゆきの「地上の星」は、社会の中で名もなき努力を続ける人々や、見過ごされがちな存在に光を当てた詩です。輝くものや成功ばかりを追い求める現代社会の中で、誰にも知られずに地道に働き続ける「地上の星」に注目するよう促しています。この詩は、NHK総合のドキュメンタリー番組『プロジェクトX 挑戦者たち』の主題歌として使用されたことで、無名の挑戦者たちが成し遂げた功績や、社会を支える陰の存在に対する讃歌としての意味を強調しています。彼らの努力と犠牲は、表舞台に立たなくても、確実に未来を照らす「地上の星」として輝いていることを、この詩は私たちに教えてくれます。

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