『悲しみレンズ』
三角定規で透かした空の
突き抜けた青さは
残酷なほど空っぽで
誰もいない公園で
のざらしになったブランコは
今日も静かに揺れるでしょう
赤いハサミは
伸びた前髪を切るためじゃなく
引き裂かれた制服は
どこにも行けないわたし
頬にタイルの冷たさと
指の隙間に屋上の風
厳格な祖母の尖った声と
暗い倉庫の錆びた匂い
生きている言い訳を
糸みたいにたぐりよせ
死んではいけない理由を
アルパカの瞳のように
雄弁に語れたら
自分の呼吸を見つけられただろうか?
夏の太陽も好きになれただろうか?
いまはただ
月と星の間に落ちていたい
まっさらな命になって
世界が夜に目覚めないうちに
世界が夜に目覚めないうちに
水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。