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色即席ラー油で炒めた厚揚げとインゲン


色即是空、空即是色とは般若心経の一節。
魔物や悪霊を祓う効力があると言われる経文。果たして、その効果があったのかなかったのか、そんな話を妄想しながら料理した記録。


材料

厚揚げ   1枚
インゲン豆 1パック(15本位)
生姜    1欠け
大蒜    1欠け
葱     少量
胡椒    少々
胡麻油   大匙3
豆板醤   小匙1
醤油    大匙1
酒     大匙1

昔、食べるラー油って流行りました。今や定番商品になっているのかなあ?時々、スーパーで見掛けます。ただ加工品は添加物とか保存料とかが心配なので、似た物を自作してみようと思い立つ。
即席ラー油、般若心経の色即是空ならぬ色即席ラー油ということ。


生姜、葱、大蒜を微塵切り。

般若波羅蜜多寺で始まる般若心経、それを全身に書いたものの、完全には魔を撃退出来なかった昔話。
耳なし芳一。
ラフカデイオ・ハーンこと小泉八雲の「怪談」でもっとも有名なお話。


インゲン豆と厚揚げを食べやすい大きさに切る。

長門国(山口県)の壇之浦(下関)近くの阿弥陀寺に盲目の琵琶法師。名は芳一。
平家物語の弾き語りをさせると右に出る者なしと言われる腕前。
或る晩、住職や他の小僧達が法事に出掛けてしまい、芳一は留守番。
そこへ鎧を着ているかと思われる金属音を響かせた来客。
「我はさる高貴な御方に仕える者。そなたの琵琶が聞きたいとの仰せにより、迎えに参った」という口上が芳一の耳に聞こえる。
その言葉に従い、芳一は迎えの武者の後についていく。
盲目なので様子はわからないものの、大勢がいる気配の場所へと誘われる。
「壇之浦の下りを所望」
平家一門の盛衰を綴った「平家物語」ですが、元々は琵琶の演奏に合わせて語る弾き語り。
壇之浦とは平家一門が最後の戦に敗れて、次々と海へ散っていく場面。芳一の名調子に、すすり泣く声が聞こえ始める。

写真を撮り忘れましたが、刻んだ香味野菜に胡麻油と豆板醤を混ぜる。これにて即席なラー油。

すっかり気に入られた芳一、七日七晩の演奏を求められる。
「ただし、お忍びで来られているので、このことは他言しないように」
それから毎晩、鎧武者が迎えに来て、芳一は出掛けて行く。
日に日に芳一はやせ細り、見る見る内にやつれていく。
様子がおかしいと感じた住職は、寺男に命じて芳一の言動を見張らせる。
寺男は見た。
鬼火が飛び交う墓地で必死に琵琶を弾じる芳一。
その墓地は平家一門の墓。平家の亡霊が自分達の最後に聞き入っていたという次第。それが六日目の晩のこと。


油を引いたフライパンで厚揚げとインゲンを炒める。厚揚げに軽く焼き目が付くまで。

事情を知った住職、このままでは芳一は亡霊達に冥途に連れていかれてしまうと危惧。約束の七日目だが、住職は法事に出掛けねばならない。出先に芳一を連れて行くことは憚られる。亡霊が檀家まで追いかけてくるかもしれませんから。
そこで住職は芳一の体に、魔を退ける力がある般若心経を書き込むことに。頭から足先までびっしりと経文を書き込む。
「亡霊が来ても決して返事をしてはならぬ。身動きもするな」と芳一に命じて、住職は後ろ髪引かれる思いで、、、しまった坊主だから髪はなかった。
ともかく出掛ける。


醤油と酒を投入した後、

「芳一」
夜更けて、やがて聞こえる武者の呼び声。
言われた通りに芳一は座禅を組んで、返事をせずにじっとしている。
「おかしい。姿が見えぬ」
どうやら亡霊には、般若心経が書かれた芳一の姿が見えていない様子。
「仕方がない。見えている耳だけもらっていこう」
どうやら耳にだけ般若心経が書かれていなかった様子。
こうして芳一は耳たぶを引き千切られる。


いい感じに煮絡まった。

命の代わりに耳を失った芳一は以後、耳なし芳一と呼ばれることに。というのが「耳なし芳一」という物語。

物語の舞台になっている阿弥陀寺ですが、明治の神仏分離令で赤間神宮という神社に。安徳天皇の墓があるので、寺ではなく神社になったということでしょう。その境内にあるのが平家一門の墓地。
墓地が整備されたのは江戸時代という話。海に沈んだ平家一門、まともに埋葬された訳ではないので、はっきりした墓はなく、近隣に供養塔が散在していたのを、ここに集めて供養したという経緯。
耳なし芳一の物語も同じ頃に成立?


色即席ラー油で炒めた厚揚げとインゲン

刻んだ香味野菜を胡麻油と豆板醤で混ぜた即席ラー油。大量に作って置いておけば、更に味が熟成するかもしれませんが、胡麻油がそんなになかったので、取り合えずすぐに使う分だけ作成、さっと料理。その内、即席ではなく自家製ラー油を作ってみるか?
厚揚げによく絡むラー油、インゲンのシャッキリ感がアクセントになり、食が進む。程よい辛さにご飯が進む。
厚揚げからタンパク質、インゲンから鉄分や亜鉛、ビタミン、大蒜や葱のアリシンと栄養豊富。

ところで、どうして芳一は耳を取られてしまったのか?一般的には耳だけ経文を書き忘れたと言われますが、本当だろうか。
昔話には何等かの意味や教訓が隠されているのではないかと妄想。
住職だけが芳一の変化を気遣ったというのが気になる。他の坊主や寺男は何も気にしなかったのは何故?
住職という上役に言われるまで、芳一は誰の言うことにも耳を貸さなかった?それが耳なし芳一という意味?
自分の琵琶は高貴な人の魂まで揺さぶるのだという自負から、同僚の忠告は妬みからだと感じて黙殺?言っても無駄だから、やがて誰も忠告しなくなった?若しくは誰かが住職に相談?
体に般若心経を書く時、住職だけではなく他の者も手伝ったとすれば、意図的に耳にだけ経文を書かなかった?その心は、こいつはどうせ人の言うことに耳を貸さないのだから耳は要らんだろう。怨霊への手土産に呉れてやれ。
この妄想の通りだとすれば、亡霊より生きている人間の方が恐ろしい。
そんなことを思いながら、色即席ラー油で炒めた厚揚げとインゲンをご馳走様でした。

ここからはおまけな話。
最近、よく見ている家田荘子チャンネル。残念ながら暫く更新をお休みしていますが、普通に生活しているとなかなかお目に掛かれないような人がようけ出てくる。
坊主頭のストリッパーと対談している動画がありました。↓

御覧の通り、耳なし芳一よろしく経文を書いたお体。
ご興味ありましたら、御覧下さい。

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