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国内旅客輸送データを分析してわかった交通機関の現在とこれから

2020年、旅行者・観光業者ともにつらい時期ではありますが、いつかはまた気兼ねなく旅する時期が来ると思います。

今回は、これまでの国内旅行の旅客輸送ってどうだったんだろうという疑問が湧いたので、行政が公開する公共交通機関の旅客輸送データを分析・考察し、その結果を旅行者・観光業者に役立つ視点を交えて記事にしました。

データは2018年度までのもので出しています


いきなりですが、主な分析・考察結果から紹介します。

分析・考察結果

航空

1)国内線・国際線共に座席利用率が向上し、旅客数が伸びている傾向だった。航空会社視点では効率的だが、利用者視点では人気のフライトは早めに予約したほうが良い傾向が出ていたと考える。

2)人気の国際線フライトでは、希望座席を予約するのが少しづつ難しくなっていたと思われる。


鉄道

1)ビジネスマンの利用や、メジャー観光スポットがある新幹線の路線は旅客数が伸びる傾向が出ていた。ピークのタイミングでは、窓側や同行者でまとまってといった希望で予約するのが難しくなっていた傾向があったと考える。

2)定期外の旅客数が伸びていた新幹線路線があった。


バス

1)乗合バス輸送人員はここ10年ぐらいは大きな変動はなくなっていた。


ここからは、各分野の詳細データを見ながら紹介していきます。

前提

・可能な限り正誤表なども確認していますが、漏れて古いデータの場合がありますので、正しい数値を確認する場合は参照元をご確認ください
・データの取扱には注意していますが、加工途中でミスしていることがございますので、正しい数値を確認する場合は参照元をご確認ください


航空

旅客数と座席利用率推移

最初は、飛行機を利用した旅客数と座席利用率の推移です。

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

旅客数の推移は、2008年〜2011年にかけて緩やかに下落傾向の後、2018年まで伸びが続いています。

国内の主要ルート(羽田-新千歳、羽田-福岡など)も伸びていますが、国内ローカルルートと国際線の伸びが全体を押し上げています。

発着数増加や、LCC拡大による影響が大きのではと考えられます。


続いて座席利用率の推移です。

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

座席利用率は、2011年から上昇傾向にあり、直近までは国内ローカル路線でも70%に迫っていました。


国内線定期便の旅客数と座席利用率です。

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

座席利用率が向上したのはここ数年だったことがわかります。

航空機の最適化、LCCやインバウンドの普及など、複合的な要因が重なって効率的になってきていたと考えられますが、データが不足していて仮説としては弱い状況です。


国際線定期便の旅客数と座席利用率です。

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

国際線もここ数年で座席利用率が80%近くまで上昇していました。


国内線の運行回数・座席数の推移

次に、運行回数と座席数の推移を見ていきます。

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

運行回数は、「主要幹線」「ローカル」ともに2011年〜2014年で増えた後、あまり変化がなくない状態となっています。


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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

座席数は、比較的平坦な推移です。運行回数の変化と合わせて考えると、路線毎に最適な座席数の機体に変更した運用がうまくいっていたのではないかと考えられます。


次に、いくつかの路線の「運行回数」「座席数」「旅客数」推移です。

主要路線の「運行回数」「座席数」「旅客数」の推移

▼羽田-新千歳

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

羽田 - 新千歳の推移を見ると、運行回数に大きな変化はないですが、座席数減少の変わりに旅客数は増加しています。LCC就航はない区間なので、ANAやJALなどの数値がメインです。


▼羽田-大阪(伊丹)

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

先程の羽田-新千歳と同じくLCCは就航していません。推移的には羽田-新千歳と同じ動きをしています。


▼成田-新千歳

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

成田-新千歳はANA、JAL便もありますが、多いのはLCCです。特に2012年〜2014年の運行回数が大きく伸びているのと、2013年は「座席数」に対して「旅客数」に幅があったのが、2018年には差が縮まっていました。


全データを見ないと言い切れませんが、ANA・JALは既存路線をスケジュールや機体で最適化、ドル箱路線はLCC参入で旅客数が増えている状況が2020年入る前までは続いていたとも考えられます。



続いて、国際線方面別の推移です。

国際航空方面別輸送実績(旅客)推移

※インバウンドでの訪日外国人増加と、ビジネス利用が多い地域が変化の影響が大きく出ていると考えられます

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「航空輸送統計調査」のデータを加工して作成

その他のアジア(中国・韓国除く)」が大きく増加、インバウンド・ビジネス共に往来が多い中国と米大陸も、2018年までは旅客数が伸びていたのがわかります。


鉄道

鉄道旅客数の推移

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「鉄道輸送統計調査」のデータを加工して作成

JRと民間鉄道会社の推移を見ると、JRも伸びてますが、民間鉄道会社の伸び率が近年は顕著でした。


▼新幹線の利用者数(上は全体、下は定期外のみの利用者数推移)

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「鉄道輸送統計調査」のデータを加工して作成

東海道新幹線、東北新幹線、山陽新幹線、上越新幹線は利用者数の上昇傾向が続いていました。

一方、北陸新幹線は2015年の金沢延伸で利用者数が増えたものの、その後は横ばい傾向になっていました。九州新幹線と北海道新幹線についても、同じく横ばい傾向が続いている状態でした。

国内利用者の増加もあると思いますが、訪日外国人旅行者数の増加に伴いJAPAN RAIL PASSを使って新幹線移動する人が増加したのも一因ではないかと考えられます。



バス

バス輸送人員数の推移

最後に、営業用バスの推移です。

日常で利用する乗合バス、ツアーなどの貸切バスに分けて見ていきます。

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・出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
・【国土交通省】「自動車輸送統計調査」のデータを加工して作成

貸切バスの利用者数は、2004年あたりから横ばい傾向にありました。

乗合バスは1995年から2005年の10年間で大幅に減少した後、多少の増減はありつつも横ばいで推移していました。


最後に

今回紹介した2018年までのデータとは全く違った統計結果になりそうな2020年。データが公開されるのは早くて2021年、遅いと2022年になりそうですが、手に入った際にはどういう変化が起こったかご紹介しようと思います。

少し前までは、全体的に見ると比較的良い流れが多かっただけに、2020年でのブレーキは痛いなと感じる結果でした。

ここは違うんじゃないのか?もっとこういう分析が見たいなどあれば、コメント欄よりリクエストください。

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