見出し画像

『婚活中毒』を読みました


秋吉理香子さんの短編集『婚活中毒』を読んだのですが、なかなかの名イヤミス短編集だったので、せっかくなので紹介させていただこうかと思い、筆を執らせて頂いた次第です。 

内容は4作の婚活にまつわる短編が収録されているものだったのですが、どの短編もなかなかにラストに大どんでん返しを持ってきているものばかりで、読んでいて楽しかったです。

①「理想の男」

結婚相談所に通うアラフォーの女性がカッコよくて、気も合う理想の男性を紹介してもらう。だけどその男性を過去に紹介してもらった女性たちが次々と不審死を遂げているという事実を主人公は知る。おまけにその女性たちは主人公と容姿もよく似ていて……。

不穏な雰囲気で進んで行くお話がとても面白かったです。終始ヒヤヒヤしながら読み進めました。


②「婚活マニュアル」 

街コンに参加した男性が美人とお付き合いすることになる。女性は目を惹く美人だが、性格がかなり悪いという絵に描いたような悪女。次第にエスカレートしていく彼女の我がままに主人公の財布も底をつきていく。そんなときに、悪女と同じ職場の先輩の、見た目は良くないが性格の良い靖子と親しくなっていき、次第に主人公の心も揺れ動いていくのだが……。

美人だけど性格の悪い女性と、見た目は悪くても性格の良い女性との間で揺れ動く恋心。ある意味王道の組み合わせではあるのだが、そのベタなキャラクターを使って、ベタではない作品を描くのはやはり凄いと思う。

③「リケジョの婚活」 

婚活番組に出演した理系の女性が主人公。彼女は一目惚れした男性を落とすために、彼のプロフィールを完璧に把握することはもちろん、彼の3Dモデル付きの会話をシミュレーションできる装置まで作って婚活に備えます。その結果、彼の気持ちを向けさせることはできたのだが……。

一目惚れした相手を振りまかせるために、ひたすら理系としての能力を活かしていきます。彼との会話シミュレーション装置を作っている時点で、なかなか暴走してしまっているのですが、彼女の狂気がそんなものでは収まらない様が見ていて面白いような怖いようなという感じでした。


④「代理婚活」 

子どもの為に親同士が婚活して子どものパートナーを探していくというスタイルの婚活をテーマにした作品。婚活をテーマに扱っているのに、既婚者の男性が主人公。子どもの為にパートナーを探していたというのに、あろうことか、自分が他の参加者との恋に落ちていき……。

話が3回くらい転んで行って面白かったです。父親の歪んだ行動がいつバレてしまうのかヒヤヒヤしながら読んでいたら、話が予期せぬ方向に転がっていきました。収録されている作品の中でこの作品を一番最後に持ってきた感性は個人的には大好きです。

以上、婚活をテーマにした作品集でしたが、どれもまったく違う形での婚活のお話が書かれていて、とても良かったです!

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?