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あたらしい季節。あたらしい始まり。

柔らかく窓から入ってくる日差しが、ぽかぽかとあたたかい。
「ぽかぽか」という言葉で”あたたかさ”を感じることができる日本人はなんて感受性が豊かなのだろうと、物思いにふけってみる。

世界がこんな状況になってしまってから、図らずも自分の時間が増えた。
いや、「もともと自分の時間はあったけれども、目をそらしていた自分の時間にようやく目を向けるようになった」といったほうが正しいのかもしれない。

 

「本当なら今これをやっていたはずなのに。」

当初の予定だったジョージア移住は延期になり、1年住んでいたタイも、ゆっくりお別れを言う暇もなく慌てて離れることになってしまった。
言い出したらキリがない。
いくらでも文句は言えるけれど、少し考え方を変えてみる。もしかしたらこれも予定調和なんじゃないか、そう考えると不本意にも日本に帰国した今を大事にしないといけないなという気持ちにさせられる。

幸いにも今はフリーライターやカメラマンをしているので、仕事への影響はほとんどと言っていいほどない。1年前の春。2年間勤めた旅行会社を退職して、この働き方を選んで正解だったのかもしれない。今になってそう思う。

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今からちょうど1年前。2年間働いていた会社を退職して、フリーランスに転向した。
仕事が嫌いだったわけではない。
会社が嫌いだったわけでもない。
むしろ、
誰かの思い出を一緒に創り上げられる仕事が大好きだったし、
一緒に働いていた同僚や先輩、上司も大好きだった。
会社はいわゆるホワイト企業で残業なんて繁忙期以外は基本的にしていなかったし、よく言う「めんどくさい上司との飲み会」とも無縁だった。

そんな恵まれた環境を離れる決意をしたのは、ひとえに、「旅と生きていきたい」という自分の想いに気づいてしまったからだった。

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「旅が好きになったきっかけは?」

よくそんな疑問を投げかけられるけど、実は今も答えが見つからないでいる。でも、気づいたときには、一緒に生きていきたいと思えるほど旅が好きになっていた。海外だけでない。国内の旅も等しく、私にとっては大切な旅であることは間違いない。

そんなに旅の何が好きなのだろうか。
せっかくできた自分の時間を使って、絡み合った自分の「好き」をゆっくり紐といていく。

旅の中の好きな瞬間はあげだすとキリがない。
写真で見てた絶景が目の前に広がっているとき。
たまたま入った食堂のご飯がおいしかったとき。
宿で仲良くなった旅人と夜通し話した夜。
困っている私に優しくしてくれたおじちゃん。

中でも一番好きなのは、「生きている」という実感に似た感情を揺さぶられる瞬間。旅をしているとこの瞬間に出会える時がある。
別に死の危険に直面するわけでもない。行く先をなくして途方に暮れた経験があるわけでもない。でも、旅をしていると、どうしようもなく感情が揺れ、見える景色がきらめく瞬間がときどき、私の中をふわりと駆け巡る。

私はこの瞬間を集めるために旅をしているのかもしれない。

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「心むくままに」

前日に決めていた予定でも、もっとときめくものを見つけたら迷わずそっちに歩いていく。
これが私の旅のマイルール。

その先でときめく出会いがあることもあれば、もちろん何にも出会えないこともある。それでも私は、気の向くままに、どこ吹く風のように、先を決めずに流れるように歩く旅が好き。

 

今は旅ができないでいるけれど、それでも旅と生きていくことを諦めない。
1年前の自分との約束を頭の中で反芻する。

重く降り積もった雪が溶けるその日を信じて。
今日も私は少し先で待つ春を見据えている。

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