顔
棺の中のその顔に
そっと顔を近づけて
刻まれた皺を乾いた唇を
目に焼き付けた
参列者が帰ったその後に
もう温度を持たないその顔に
何度も顔を近づけて
白くなった眉毛を地黒に隠れていたシミを
繰り返し焼き付けた
許されるならば
このまま
冷たいままでいいから
目を開けなくていいから
ずっといてほしい
灰になんてならずに
その姿のままで
生身であるという現実感をもって
感じていたい
忘れたくない
何があっても大丈夫だと思えた
大好きだった優しいその顔
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