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「働きがいのある会社調査」へのエントリーを終えることにしました。

こんにちは、渡辺です。
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズという会社で、経理や人事の仕事をしています。

今回は人事の話です。
ケンブリッジは9年間、「働きがいのある会社調査」に継続してエントリーしてきました。
しかし社内で議論した結果、この調査を活用するフェーズは超えたと判断し、今年でエントリーを終えることにしました。

この意思決定について、書いてみます。

「働きがいのある会社調査」とは何か

「働きがいのある会社調査」とは、株式会社働きがいのある会社研究所が実施する企業サーベイです。
世界150カ国、日本では600社以上が参加するため、企業サーベイとしては大規模なものと言えるでしょう。

調査は年1回。
・企業がお金を払ってエントリーする
→社員個々に匿名式のアンケートが届く
→社員が回答する
→アンケートの集計結果が会社に公開される
→ランキングが発表される
という流れです。

今年発表されたランキングでは、ケンブリッジは中規模部門15位でした。
ありがたいことです。

エントリーを終わりにする理由

ケンブリッジはこの調査に2016年から9年連続でエントリーしてきましたが、2024年2月に発表された回をもって、エントリーを終わりにすることにしました。

理由①調査→改善のサイクルを回しにくい

組織サーベイは、単にアンケートをとって終わりではなく、その後の改善につなげることが重要です。
しかし「働きがいのある会社調査」のレポートは残念ながら、サーベイ後の組織改善につなげにくかった、というのが本音です。

その要因として
a)性別・年齢・在籍年数などの属性情報で集計された結果しか分からない
b)解釈に迷う設問がいくつかある
が挙げられます。

a)に関しては、生データを企業側に公開してしまうと、回答者を特定できてしまう→回答者が本音で回答しづらくなる→サーベイそのものの信頼性が失われる、という事情は容易に想像できます。

ですが、属性ごとに集計されたデータをもとに分析をしようにも、推測の上に推測を重ねる分析になってしまうんですよね‥。
この点が最も大きい理由でした。


今回も文字ばかりの記事なので、先日食べた冷やし中華の写真でもどうぞ。
夏到来ですね。

理由②「あらかじめ働きがいが用意されている会社」というミスリードをうむ懸念があった

以前は「働きがいのある会社ランキング第〇位!」というメッセージを、主に採用広報の文脈で前面に押し出していました。
しかし、数年前から採用広報で「働きがい」をアピールするのを控えるようになりました。私が会社紹介スライドを使って応募者の方にプレゼンするときも、働きがいのページだけスキップしたりしていたんです。

経営学者・楠木建は次のように言っています。

「仕事と趣味は違う」の原則
自分以外の誰か(価値の受け手=お客)のためにやるのが仕事。自分のためにやる自分を向いた活動はすべて「趣味」。趣味は家でやるべき。仕事と混同してはならない。

出典:仕事の一般原則

この観点に立つと、「働きがいを第一義に据える人は、本質的にはクライアントではなく、自分の方を向いているのではないか」という懸念が生まれました。

コンサルティングサービスは、クライアントのために働くこと。
「クライアントのために滅私奉公しろ」とか「自己犠牲が当たり前だ」と言うつもりはありません。
しかし時代は変われど、「クライアントのために働き、その対価をいただく」構図には変わりがありません。

以前、ケンブリッジ社内のハイパフォーマーなコンサルタント数人と、働きがいについて議論したことがあります。
すると、皆一様に
「働きがい?あんまり考えたことないなぁ」
「そりゃ、ないよりあった方がいいけどね」
っていうぼんやりした回答なんですよね。

働きがいは、それ自体が目的ではない。
自分以外の誰かのために価値を提供したその結果、附随的に生まれるのが働きがい。

「私たちは働きがいのある会社です」というメッセージは、その目的・結果を逆転させる誤解につながるのではないか。
あるいは、「働きがいがすでに整っている環境です」というミスリードもあり得る。働きがいは自分でつくるものなのに。

そんな懸念が拭えず、特に最後の3年は「働きがいのある会社」というメッセージは採用広報ではまったく使っていませんでした。

理由③費用対効果を感じにくかった

①②の理由により、その効果を存分に刈り取れない一方で、エントリーの負荷も高かった。
社員数、平均年齢といった定量情報はもちろんのこと、この1年間の社内の改善事例、経営方針の浸透といった取組みをかなりの文字数で書かなければいけません。

そうした費用対効果の低下から、調査へのエントリーを終わりにすることにしました。

おわりに

決して「働きがいのある会社調査」を批判するつもりはありません。

「働きがいのある会社調査」への9年間のエントリーを通じて、社外からの認知度を高められただけでなく、社員の自社に対する認知の在り方も変わりました。
また、「サーベイ結果をもとに議論する」という習慣が根づいたのも、この調査にエントリーし続けた効果です。

自社の成長段階を踏まえると、「働きがいのある会社調査」を利用するステージを終えたということなのだ、と私は解釈しています。

「働きがいのある会社調査」へのエントリーをやめたら、次はどうするの?という論点もあるので、また考えていかなきゃな、と思っています。

以上です。

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