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☆My Story☆ My special you⑰ #ナムジュニと私

【私side】
4月。ジンさんに続いて、ホソクさんが入隊した。
バンタンにとって2人目の入隊ではあるけれども、それぞれ続けてきた活動にいったんピリオドを打つ重み、アミたちの切ない気持ちが溢れて、これはきっと何回経験しても慣れることはないんだろう。
2月18日のセンイルW-Live配信でアミに心の内を言いたいのに言えないもどかしさを抱えていたホソクさん、入隊を発表してからは吹っ切れたように輝いた笑顔と優しさにあふれて颯爽と18ヶ月の旅に出発した。

ジュニは、同じ94年生まれの親友の見送りに、だいぶ堪えているようだった。少し心配になって、今日はジュニの家で過ごしている。

「ほんとに、一緒の時期に行こうって思っていたんだ・・・」

ジュニの真面目な表情に、わかっていても驚きを隠せず、たたんだTシャツの山をリビングの床に落としてしまった。

「去年のPROOFをまとめる前くらいまでは、だよ。」

そういって私の頭を優しくなでると、床に散らばったTシャツを拾い集めてくれた。

「ごめん・・・びっくりしちゃって・・・」

おいで、といってソファに一緒に腰掛けた。
視線の向こうのロニホーンが、夕暮れの光を受け止めて床を柔らかく輝かせている。
ジュニに身体をあずけると、心地よい低音が優しく身体中に響いてくる。

PROOFをリリースして、バンタン会食を経た後、ホソクさんはソロ活動の先頭を切ってロラパルーザへ。なにもかも初めてのソロ活動を、ホソクさんは一歩一歩切り拓いた。12月にはジンさんが、メンバー初の入隊を果たし、そして今月末からは、ユンギさんのソロワールドツアーが開幕する。

「ジンヒョンも、ユンギヒョンも、ホビも、メンバーが誰も経験したことないことに初めて挑戦して、手本を示してくれているんだ。とてつもなく勇気のいることだよ。」

僕は・・・僕は何が出来るんだろうって、考えて・・・

そこまでジュニが言うと、たまらず隣の大きな身体を抱きしめた。

「ジュニ。ジュニはずっと・・・私が出逢ってからもずっと、止まらずに歩き続けているじゃない。どんなに急な上り坂でも・・・」

抱きしめながら切実に訴える私のおでこに、そっとキスをひとつ。

「ユナが隣にいてくれるようになって、本当に良かったんだ。独りだと考えすぎちゃうところがあるから、僕って。」

ジュニの言葉に、うんうんとうなずく私。

「僕はバンタンのリーダーだから。10周年のFESTAに7人は揃わないけれど、この10年のアミの愛に心からお礼を伝えることがリーダーとして僕の果たすべき役割だって思ったんだ。」

6月のFESTA、ジュニは何を準備しているんだろう?

ジュニを見つめる私の瞳を見て、ふふふっと微笑む彼。

「ユナはアミだからね。内緒だよ。」

そういって優しいキスをひとつ落とすと、拾ったTシャツをしまいにクローゼットに消えていった。

「6月17・18の週末は、休み取っておいて!」

リビングまで聞こえる大きな声が、クローゼットから届く。明るい声、安心する。

「はーい!」 わたしも負けずに大きな声で返事。

あぁ、この人はもう、入隊までに自分がやるべきこと、したいことが整理されているんだ。

「お~ユナ!いいね、大きな声だ!
 広い会場で僕とコール&レスポンスできるね!」

嬉しそうにリビングに戻ってくる。
広い会場でコール&レスポンス?ジュニはステージをするの??
私のハテナだらけの顔をいたずらっ子のようにニコニコと見つめて、しっかりと私の両手を包む。

「バンタンのリーダーとしても、一人のアーティストとしても、人間キム・ナムジュンとしても、やるべきことがある。まだ、心配するのは早いから。」

その言葉に、うんうんとうなずくと

「来年は、無理そうだけど・・・」と、少し目を伏せるジュニ。

「大丈夫よ、私は、どこにも行かないから。ここにいる。」

ジュニの心臓にコツンとおでこを当てると、視界が暗くなって、ジュニが私を強く優しく抱きしめる。言葉はなくても、彼が胸の中でたくさんのことを考え、渦巻きながら、次の言葉を逡巡しているのがわかる。

しばらくの沈黙を、私が破った。

「ジュニ。 私の仕事の話、聞いてくれる?」

そういうと、私の目を見つめて

「もちろんだよ!いつも僕の話ばかりだから、たまには聞き役をさせて。」

お昼すぎまでHYBEのスタジオに籠っていたから、僕お腹すいたんだよね、ケータリング頼もうよ、今日泊まれるでしょ?

ジュニは立て続けにしゃべって、手際よく注文してくれる。ケータリングが届くまでの間、コーヒーを淹れようとキッチンへ入ると

「また何か新しいプロジェクトでも始まるの?」 

コーヒーカップを出しながら、ジュニが興味津々な瞳で聴いてくる。

私は、2月にイ先輩から打ち明けられた話をジュニに伝えた。

***********************

数年前に、ニューヨークの美術館との合同展を成功させたイ先輩に、移籍の誘いが絶えなかったのは館長も私もよく知っていることだった。
ニューヨークで仕事をすること自体には魅力を感じているけれど、イ先輩は韓国を拠点に人生を送る意思が固く、アメリカに移って仕事をする話は頓挫していた。
ソウルに独りで暮らす叔母様のことも、理由のひとつなのではと思われた。

『そしたら、先方から2~3年くらい交換研修生のような形でニューヨークに来たらどうかっていうんだ。』

先方の美術館からもこちらに有望な若手を送るという。双方の未来のリーダーが、お互いの国で研鑽を積んで、成長して元の場所に戻るのはどうか、という提案に変わったらしい。

館長も、ニューヨークから来る方と私達スタッフが一緒に仕事をすることで、共に学びあい、新たな化学反応が生まれることに期待が高まったと。
なにしろ、後継者として頼りにしているイ先輩が、完全にアメリカに移ってしまうのではなく、こちらに帰ってくる交換研修というスタイルがとても気に入ったらしい。

『と、いうわけで、秋にはニューヨークに行くと思う。俺の後任は、ユナ、君しかできない。』

年齢や経験順から言って、私が先輩の仕事を引き継ぐことは予見できたけれど、いざ面と向かって告げられると、先輩の仕事の大きさに圧倒されて、すぐに返事が出なかった。

『ユナ、アラッソヨ(わかりました)は?』

先輩が優しく微笑む。
ひとつ、深呼吸をして、お受けしますと丁重に返事をすると

頼んだよ、と右手を差し出す先輩。
私も右手を、左手を添えて、最大限の経緯で先輩と握手する。

引き継ぎよろしくお願いします、と頭を下げると

『緊張し過ぎ。ユナなら大丈夫、俺が保証する!』

笑いながら、私の頭を2回優しくポンポンとして

『俺のデスクを片付けるほうが大変だ。ぐちゃぐちゃだからなぁ~!!』

大げさに腕まくりしながら笑い飛ばした。

***********************

ひと通り話し終わると、ジュニがフゥっと息を吐き出した。

「そっかぁ、イ先輩、ニューヨークで仕事するのか。それは素敵だなぁ。良い美術館やコレクションがいっぱいあるからなぁ!!」

INDIGOの撮影をしたDiaBeaconしかり、ニューヨークにはジュニのお気に入りアートスポットがたくさんある。

「盛大に送別会をしよう、叔母様も一緒に。」

そう言って微笑むジュニに、私も微笑み返す。
2~3年とは言え、イ先輩を待つ叔母様はご年配に差し掛かっている。

「カトクやお電話でご機嫌をお伺いしながら、時々お食事に誘ったりしてみようと思うの。今まで良くしていただいたから恩返ししたくて。」

そう呟くと、そうだね、ユナがそうしてくれたらイ先輩も叔母様もとても心強いね。優しいね、ユナ。

「ユナと叔母様で、僕とイ先輩の帰りを待っていてくれると思うと、僕も頑張れるし、きっと先輩も嬉しいと思うよ。」と、力強く言うナムジュン。

イ先輩の仕事を引き継ぐの、とても難しくて、緊張するな・・・

すこし嘆息して呟くと

「大丈夫。一生懸命頑張れば、きっと仕事はついてくるよ。」

そうやって優しく微笑んで肩を抱いてくれるジュニ。

「うん。ありがとう。誠実に、仕事に向き合ってみるわ。」

私も勇気がでて、素直に言葉が出てきた。

これからは、みんなで、新しいチャレンジ。
ひとりじゃないと思うと、勇気が湧く気持ちだった。

【つづく】

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