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「Gucci Garden Archetypes」展

「Gucci Garden Archetypes」展
B&C HALL



ミケーレがクリエイティブディレクターになってからのGUCCI、問答無用で好き。世界観、ドストライクやん?まじ、持ってると強くなれるやん?でもこれ、簡単に言ってしまってる「世界観」って具体的にどういうものなのかは正直ちゃんと言葉にできひん。オタク、失格やん?!

とそんなわけで、本展では懇切丁寧にそのミケーレの「世界観」を1つずつ視覚化、聴覚化、嗅覚化し、更に言語化までしてくれたはりましたので、大層お勉強になりましたし、ギラギラのかばんが欲しいです(ん?)



さて、展示がどんな感じになってるかと言いますと、13のエリアにわかれてまして、それぞれの空間で今までのコレクションごとの広告の世界観を体感できるという内容になっています。でも、それぞれ広告で使用した実際のロケ場所をそのまま再現するという感じではなく、世界観を踏襲した上で展示用に空間を再構築するということがされてます。

そもそも映像や写真など一度作られたクリエイションをこんな風に展示のために再構築するためにはもともと確固たるテーマ性と深いストーリーがないと広げていけなかったり伝えたいことが揺らいだりしてしまうはずなのですが、こんな風に別の表現になったとしてもミケーレが伝えたいことが一切ブレていなかったので、彼が考えるテーマの深度の深さに改めて気づかされました。

よく古典芸術や歴史的事実がコレクションのテーマの元になっていたりしますが、更にそこから彼にしか生み出せないオタクの妄想劇場が繰り広げられロマンチックなストーリーが展開されていくのに毎度痺れます。本展ではそのインスピレーション源も垣間見えました。

例えば日本の和室やパチンコ屋やデコトラを使ってのプロモーション映像ではシャボン玉が終始吹かれているのですが、なんでパチンコ屋の中でシャボン玉やねん相反し過ぎて逆にめちゃくちゃ幻想的やないかいって思っていたのですが

「東京の最後の想い出は、都会の公園の木々に咲くピンクの花の雪に囲まれて、青空の下、橋の上でシャボン玉を吹いているときに、風の中に消えていった囁きです。また行きたいです…」

ってミケーレの言葉が掲示されてたのを読んで、トゥンク…ってなりました。橋の上でシャボン玉吹いてるミケーレを想像してみてください。あかん。かわいい。ということで目に映る全てのものはメッセージばりに豊かな感受性を持ったはることがとても伝わってきたので、なるほどと思いました。


また、展示を見ていくとミケーレ1人ではなくてグレン・ルックフォードやイグナシモン・レアル、ハーモニー・コリンなどミケーレのクリエーションを支える抜群の感性を持つ周りのクリエイターやモデルさんたちの力も凄いんやで!っていうこともわかる内容になっていますが、みんなミケーレの好きなことや思想に共感できる人たちが集まってきてるからかどんな手法を取ったとしても『ミケーレのGUCCIらしさ』に必ず着地するんやなぁと感心しました。やっぱミケーレに揺るがない核があるからこそだと思いますが、時々ほんまにそれミケーレチェックした!?みたいな時計とかあるよな。



さて、空間の見せ方の話に戻りますが、以前、同じ会場で開催されたCHANEL展の時は天井が高いイメージがあったのですが、あえて本展では低くつくったのかその分天井までしっかり作り込まれていて没入感が感じられました。1空間の広さもそこまで広くなく、ギュッとした空間で密度を上げていながらにして適度な量の見どころで、滞留の懸念もうまく対応されていたように思います。床面の素材もぬかりなくいいものを使っていて気分があがったし、照明、音楽、香りなどによる演出の変化もあって飽きない。動く馬のしっぽや映像、点滅するライトなどで動きも間にうまく挟まってて、静と動の緩急もあり、見せ方がうまいなぁと思いました。

でもちょっと表現が単発すぎる気もしました。アーカイブ一気にご覧ください!みたいなダイジェスト的な見せ方だったので、1つずつメッセージを受け取っていくというよりは全体で大きなメッセージを感じてもらえたらって感じなのかな。なのでちょっと物足りなさは感じてしまいました。(めっちゃいけすかない批評家が書く文章みたいになってしもてる…!)

でも、空間の見せ方の中でとっても良かったのがキャプションのデザインです。音声ガイドとはまた別の内容でエリアごとに解説が掲示されているのですが、それがとってもおしゃれ!
文字をプリントしたスチレンボードを壁に貼りました!ってやつばっかりじゃなくて、例えば五月革命をモチーフにしたエリアでは壁面にスローガンを書くような感じで直接手書きで書かれていました。しかもちゃんと学生が書いたような雑なフォント。

他には地下鉄の列車内をモチーフにしたエリアでは電車広告の一部の様にキャプションがシルバーのフレームに挟まれていたり。尊いものづくりってこういう細部へのこだわりの積み重ねなんやなぁと感激しました。

でもでもでも!肝心の内容が!英文をそのまま日本語訳しているからか、頭に全然入ってこない文章になってしまってて3回ぐらい読み直しましたが7割ぐらいしか理解できませんでした!涙!

「本当に《現代的》な人が、自分の置かれている状況を把握するために必要な距離を確保できるのでしょうか?」とか(笑)
(Are the truly 'modern' those who can find the distance necessary to accurately perceive the moment they're in?)

「自分の現在の立ち位置を客観的に見れるかどうか」ってことなんやろうけど、これは難解すぎる…!全部がこういう文章になってしまってて、みんながキャプションを読まずに通り過ぎていくのもわかる。
ミケーレの脳内を知るための展示やのに、この難解キャプション(音声ガイドも)のせいで全然大事なところ伝わってないのめっちゃもったいないと思いました。(またいけすかない批評家構文…!)



そんな感じでミケーレの脳みそ探検をしてみて、7割しかわからへんかったけど(え)、彼はファッションを通して様々な窮屈なルールを真摯に打ち破ってきたんやということに改めて気付かされました。ただミケーレが好きな世界観を表現しているだけではまったくなくて、そこには圧倒的な肯定のメッセージが深く深く込められている。どんな人でも自分の着たい服を来たらいいし、したい表現はどんどんしていったらいい。性別も人種も人間かどうかも関係ない。ていうかパーティーしよ?踊ろ?って感じに受取りました(ん)

芸術の力はもちろん、ファッションの力もやっぱりすごいし、GUCCIのギラギラのかばん欲しい。(感想の最後結局それ?)

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