大阪弁の部屋 パペポと相対性理論(2)
この前は「パペポ」という、古いテレビ番組の話してんけどな。今日は、相対性理論の話しよ。パペポと相対性理論がどないつながるかちゅうたら、それは、まぁ、聞いてのお楽しみや(ホンマか?)。
相対性理論の夜明け
「相対性理論ってこんなのですわ」っていうだけでも面白いねんけどな、そもそもなんで相対性理論が生まれたのか、ちょっと聞いてぇや。
これがまた、面白いねんて。
ニュートン理論
マクスウェル理論
これが、相対性理論が生まれる前にあった二大理論。ニュートン理論は、聞いたことあるやろ? ホレ、あれやあれ。
F=ma
見たことある?
え?
ない?
Fは力、mは質量、aは加速度
力いっぱい押したら、めっちゃ速よ動く
そういうことを言うてる。ここに制限はないわな。力を大きくすればするほど、速くなんねん。小さい子どもがボールを投げるより、もっと力のある大人の人がボールを投げる方が速くて、遠くに飛んでいくやん。力をもっともっと大きくしたらボールの速度はもっともっと速くなる。力を加えさえすれば新幹線よりも速く、玉よりも速く、光よりも速くなるわけやん。
それ、ボールが耐えられるん?
とか、
光よりも速くって、そんなん簡単にできんの?
とかいう問題はあるけどな。
理論的には可能っちゅうこっちゃ。
ほんで、もう1個のマクスウェル理論やけどな。マクスウェル理論は電磁理論やけど、こんな方程式やねん。
あ、あ、待って待って、逃げんといてぇなぁ。
この式はどうでもええねん。
(ほな、なんで出してきてん)
とにかく、この式をいじくり倒すと光の速度はある数値を超えないという結果が出る。
ん?
すぐにピンとけえへんけど?
光の速度って、めっちゃ速いやん。
秒速で約30万キロ。秒速やで秒速、時速ちゃうで。
たった1秒の間に、文字通り「あ」っという間に30万キロ。地球を7周半回れるねん。
そんだけ速い光なんかどうやって加速するん?
押したり引いたりできひんやん。
ほな、こんなんでどお?
ボールを時速70キロで投げる人がおるとするやん。
時速100キロで走ってる電車から
電車の進行方向に向かって
時速70キロでボールを投げたら
ボールは時速何キロになるでしょうか
そんなん簡単やん。こうなるやろ?
時速100キロ+時速70キロ=時速170キロ
ほな、このボールを光に変えてみよ。
時速100キロで走ってる電車から
電車の進行方向に向かって
秒速30万キロの光を放ったら
光は時速何キロになるでしょうか
秒速と時速で単位が合わへんねんけど。秒速を時速に直そか? 1時間は3600秒やから、秒速30万キロで1時間走ったらこうなる。
秒速30万キロ✕3600秒
=時速108,000万キロ
=時速10.8億キロ
時速100キロで走ってる電車から光を放ったら、光の速度は…………。
時速100キロ+時速10.8億キロ=時速10.8億100キロ
こうなるに決まってるやん。
ブブー。
ちゃいます。
光の速度、時速10.8億キロを超えられへんねん。
それがたとえ「時速100キロ」という微々たる速度でもあきまへん。
マクスウェルの方程式はそう言うてる。
でもなぁ、当時は誰もこれを信じひんかった。だって、ニュートンの運動方程式は
「いくらでも速くなってOK〜」
って言うてるもん。もう、300年くらい、みんなニュートン方程式を信じきってたもん。ニュートン方程式が正しいっていう証拠もいっぱいあるもん。ニュートンが正しいに決まってるやん。秒速30万キロが制限速度って、そんなはずあれへんやん。みんなそう思てん。そう思てんけどな。世の中、意外なことはなんぼでもあるもんやわ。
なんとなぁ、実験結果まで出てきてん。光の速度は、どこをどうやって測っても秒速30万キロ。この実験はマイケルソン・モーレーの実験と言って有名。どうやって光の速度を測ったのかっていうのもめっちゃ面白いねんけど、今はちょっとスキップするわ。
結局、このニュートン vs マクスウェルは、マクスウェルに軍配が上がったわけ。ほんだら、ニュートンの方程式はどうなるん?
それを書き換えたのが特殊相対性理論ですやん。
特殊相対性理論
でな、相対論的に運動方程式を書き換えたらどうなるかっていうと、こうなんねん。
あ、あ、逃げんといてぇなぁ。
私もようわかってへんねん。
(ほな、なんで出してきてん)
この式は横に置いとこ(よいしょっ…と)。
そもそも、なんで光速を超えられへんのか。
それはやね。
速度が速くなるほど質量が大きくなるから
はぁ?
速く動いたら体重増えるんでっか?
というとちょっとちゃう気がすんねんけど、体重は重力に関係するやん。地球上と月面上で体重が違うのは重力が違うからやし。ま、でも、質量が大きくなると重力も増えるんやろうけど。とにかく、質量が増えると物は動かしにくくなる。質量が小さい物やったら動かすことができた力でも、質量が大きくなると同じ力では動かへんようになるしな。
でな。速度が速くなればなるほど、さらに速度を上げるためにはもっともっと力がいるのよ。止まってる物体を速度10km/hに加速できても、光速の98%の速度で動いてる物体をさらに10km/hだけ加速しようとしたって同じ力ではできひんわけ。それでやね。
質量のある物体を光速に加速できない
質量のある物体を光速まで加速しようと思ったら、なんと! 無限のエネルギーがいる
そういうわけであったのよ。
ほら!
パペポに戻った(笑)。
パペポでは、次のことを問題にしとったやろ?
光速と同じ速さで走ったらどうなんねんやろ
光速より速く走ったらどうなんねんやろ
ところが、特殊相対性理論ではそれはできませんと、こういうことやったわけ。正確には
「質量のある物体は光速を超えられません」
うちら人間は質量あるしな。だから、光速というとんでもない速さで動くことはできません。光速は質量のある物体にとって宇宙の制限速度。それ以上の速度にはなれへんのです。
ちなみに、質量がなければ光速で動くことはできます。実は光子には質量がない。だから、光は光速で動くことができるとも言える。いや、光速で動かないと存在意義がないかもしれへん。
特殊相対性理論って面白い
特殊相対性理論が現した物理はとにかく、ものすごく面白い。速度が速くなると質量が大きくなるというのは、もうほんの一部でしかないねん。
速度が速くなると空間が縮む
速度が速くなると時間がゆっくり進む
とくに2番目やん。
時間の進み方が変わる。そんなこと考えたことあれへん。考えたこと、ある?
どんだけ遅れるかというと、こんだけ。
あかんで、逃げたら(笑)
$${T}$$は光速近くでぶっとばしてる人=Aさんの時間$${T_0}$$は止まってる人=Bさんの時間
問題はこの部分ね。ココ。赤く囲んだところ。
あかんて、逃げたら(笑)。
これ、ローレンツ変換っていうねんけどな。アインシュタイン変換やなくて、ローレンツ変換。実はこの式は、アインシュタインが相対性理論を発表する前にローレンツさんが導き出していた式。いろんな人がいろんなこと考えて、そうやってアインシュタインが相対性理論を立ててんね。
せっかくやし、ちょっとだけ読んでみよ。
$${v}$$ は速度
$${c}$$ は光速=秒速30万キロ
さて、Aさんがもし止まっていたら
$${v=0}$$
やから
$${\frac{v^2}{c^2}=0}$$
$${\frac{1}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}=\frac{1}{\sqrt{1-0}}=\frac{1}{\sqrt{1}}=\frac{1}{1}=1}$$
で、結局こうなる。
$${T=T_0}$$
AさんとBさんの時間はいっしょやね。
ところが、Aさんが光速の99%でぶっとばしてたらどうなるか。
$${v=\frac{99}{100}c}$$
$${\frac{v^2}{c^2}=\frac{(\frac{99}{100})^2c^2}{c^2}=\frac{99^2}{100^2}}$$
せやから
$${\frac{1}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}}$$
$${=\frac{1}{\sqrt{1-\frac{99^2}{100^2}}}}$$
$${=\frac{1}{\sqrt{\frac{100^2}{100^2}-\frac{99^2}{100^2}}}}$$
$${=\frac{1}{\sqrt{\frac{100^2-99^2}{100^2}}}}$$
$${=\frac{1}{\sqrt{\frac{199}{10000}}}}$$
$${=\frac{1}{0.141067359797}}$$
$${=7.088812050066}$$
なんと、7倍!
Bさんが7秒経っても、
Aさんは7倍ゆっくりやから1秒しか経ってへん。
Bさんが7年経っても、
Aさんは1年しか経ってへん。
Bさんが70年経っても、
Aさんは10年しか経ってへん。
Aさんが光速の99%のロケットでぶっとばして10年後に帰ってきたら、Aさんは10歳しか年をとってへんのに、Bさんは70歳も年とってる!
なぁ、どっかで聞いたような話やと思えへん?
そうやん! 浦島太郎!
せやから、これを浦島効果という。
日本だけで通じる名称やけどね。
いやぁ、浦島太郎みたいなことがホンマに起こるかもしれへんねんで!
ウソみたいやん!
でも、ウソやなくて、時間の遅れは既に観測されてます。GPS衛星とかはそのせいて遅れるねんけど、位置情報を正確に測定するためには正確な時間が必要で、だから相対論的補正をしてる。その補正をしとかんと、位置情報はめちゃくちゃになってしまうからね。
こちらのサイトでは、どれだけの速度で動いたら、どれだけ時間が遅れるのか計算できるんよ。
ほんで、もうちょっとだけ。
$${\frac{1}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}}$$
このローレンツ変換やけどな。
時間だけやなくて質量にも当てはまるねん。
速く動くと質量が増加する。さっきの光速の99%でぶっとばしたら時間は7倍やけど、質量も7倍。
ほんで、$${v}$$とか$${c}$$が、分母にあって、更に$${\sqrt{ }}$$の中にあるやん。
これがミソやねんなぁ。
まず、$${v}$$が光速の$${c}$$やったとしよ。
Aさんが光速でぶっとばしたらどうなるのか。
$${\frac{v^2}{c^2}=\frac{c^2}{c^2}=1}$$
ほんだら、
$${\frac{1}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}=\frac{1}{\sqrt{1-1}}=\frac{1}{\sqrt{0}}=\frac{1}{0}}$$
なんと分母が$${0}$$になってしまう。
分母0は、数学的には未定義やけど、物理学的には $${\infty}$$ 無限大。
光速で動くと質量は$${\infty}$$(無限大)になるというてる。
そんなん、無理やん。質量ある物体が光速で動かれへんのはここに理由がある。
ほんなら光速以上やったら?
$${v}$$が$${2c}$$やったとしよ。
Aさんが光速の2倍の速度でぶっとばしたらどうなるのか。
$${\frac{v^2}{c^2}=\frac{(2c)^2}{c^2}=\frac{4c^2}{c^2}=4}$$
ほんだら、
$${\frac{1}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}=\frac{1}{\sqrt{1-4}}=\frac{1}{\sqrt{-3}}}$$
なんと!
今度は分母が虚数になる。
虚数の質量。なにそれ?
いやいや、最近の物理は虚数も込みやから。
虚時間とかなんとか言うてるし(知らんけど)。
でも、虚数の質量の物質なんて、あるん?
残念ながら、まだ見つかってません。
いや、でも、光速超えられへんのやからそもそもあり得へんのんちゃうん?
というのは浅はかです(笑)。
質量ある物質が光速を超えることはできひんけど、最初から光速を超えている分にはええんよ。
屁理屈?
いやいや、光速を超えるという点に無限大の壁があるわけでその壁の向こうに無限大はない。ちなみに、その光速を超える仮想物質にはもう名前があって、「タキオン」という。SF好きな人やったら聞いたことあるかも。タイムトラベル物によく出てくるんよね、タキオン粒子って(笑)。
最後に、もう一つ。
E=mc2
有名なこの式も特殊相対性理論から導かれるんよ。
面倒くさいからせぇへんけど。
え? 面倒くさいんやのうて、わかってへんのんちゃうかって?
あはは、ようわかってるやん!
もう、特殊相対性理論って、すごいわぁ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?