NHKスペシャル『法医学者たちの告白』
NHKスペシャル 法医学者たちの告白
7/7(日)午後9:49まで配信中
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2024063021693
これらは全て法医学者の告白である。何十年も前の話ではない。今もある現実である。
「全く無視された」と強く思わせたのは、栃木県今市市の女児殺害事件の控訴審である。一審から、検察は次のように主張していた。
殺害現場は遺体遺棄現場である
遺体は山道から山の斜面に向かって投げた
山道から遺体発見現場まで広くルミノール反応が出た
法医学者がドイツ法医学に意見を求めたところ、このルミノール反応で推定される血液の量は多い箇所で数ミリリットル程度であるという。死因は失血死とされているがいくら広範囲に点々と血痕があったとしても多くて数ミリリットルとされる血液では失血死に至らない。
さらに、法医学では「落ち葉の多い箇所では血液がなくともルミノール反応が出る」という実験結果も出した。検察が提出したルミノール反応の写真と、弁護側が提出した落ち葉のルミノール反応の写真とは酷似している。
この二つから、殺害現場は死体遺棄現場とは別であるということは強く推定される。そしてそれは検察が主張する事件の様相とは異なる。
ところが、その後。
裁判官と検察との間で次のようなやり取りがあった。
裁判官 ― 検察は殺害現場、殺害時刻について見解を改めますか?
検察 ― 検討して改めて訂正します
そして、殺害現場は遺棄現場から遠く離れた場所に変更されたのである。だが、被告人の有罪は変わらない。高裁では、取り調べの違法性や殺害の日時場所の事実誤認から一審の判決を破棄。取り調べの違法性、事実誤認を認めてもなお、「状況証拠を総合すれば犯人であると認められる」などとして改めて無期懲役を言い渡した(参考 Wikipedia)。取り調べも違法、加えて事実誤認があってはおそらく物的証拠もなかったろう。このため「状況証拠」となったものと思われる。
アメリカなどでは警察検察と法医学は独立しているそうだ。警察検察は勝手に遺体を動かすこともできない。法医学には専門の捜査官もいる。現場から死因を特定するための証拠を集める人達である。法医学の捜査官であって検察の指示は受けない。検察と法医学は対等であり上下関係はない。
一方、日本では、検察の意にそぐわない意見を言う法医学者は敬遠される。上記のルミノール反応に関する鑑定を弁護側にたって証言した法医学者は、警察からの鑑定依頼が減ったという。検察がそのような偏狭な意識でよいものだろうか。
「何だこの国は」と思うことは私にもある。災害が発生する度に思っていると言っていい。
例えばスマトラ沖地震では次のような有り様だった。
令和六年の能登の地震もそうだ。元旦のその日の対応を思うだけでも遅いとしか思えない。あの能登の寒さの下で亡くなっていった方はどれだけいたろう。
1995年の阪神大震災もそうだ。海外からの救援を断ったと聞いたとき、我が耳を疑った。家族が下敷きになっている瓦礫の前でうずくまる人々を見て言っているのか。
何だこの国は。
そう思うことが減ってほしいと願う。
だが、一向に減らない。
いかがしたものか。
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