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仕事ってそういうもの。

とあるネットの記事で。
とある人気作品を描いている漫画家が、

「今の作品は、読者が喜びそうなものを描いている」

と言っているというのを見て、ちょっと驚き、そして悲しくなった。
その作品は、ストーリーもキャラクターも好きで楽しんでいたからだ。
作品そのものは、自分の作りたいものとは違う、あきらめた先に生まれたもの、というようなことを言っているらしいのだ。

とある小説家も、

「商売として、読者に受けそうなものを書いている」

というようなことを言っていた。
多作な作家だけに、感心すると同時に、複雑な気持ちになった。
私が面白い、と思っている作品は、面白いと思わされているのだ、という、あたりまえのことなんだけれど、ちょっと夢を壊されたような気持になったからだ。

でも、職業としてのクリエーターなんて、そういうものなのかもしれない。
好きなものを書いて、楽しんでいるうちは素人で、プロとして、それでお金をいただくのであれば、ある程度の割り切りやあきらめは必要なんだろう。

モノづくりをする人って、そもそもの最初は、何かを表現したいと思って始める人がほとんどだと思う。
最初は好き勝手に、楽しんで作っている人がほとんどだろう。
私のこのnoteの記事だってそうだ。
思いつくまま気ままにキーボードをたたいている。
それが職業になると、そこはやはり、大人の事情があるから、好き放題で楽しい、と言うわけにはいかなくなることも増えてくるのだろうということは想像に難くない。

自分の生み出した作品が、自分では納得がいかないものであっても、それが受け手側に求められるものだとしたら…
しかも、自分が本当に作りたいものは、商業的な面から見たら、価値が低いというのは、職業としてモノづくりを選択したのであれば、ものすごいジレンマにつながるのではなかろうか。
モノを作る人にとって、これほど不幸なことはないかもしれない。
世間的な評価と、自分の持つ価値観。
そのせめぎあいの中で生まれるのが、大衆に支持される作品だったならば、それは、空は水色で塗る、という『常識』を植え付けられてしまった、あの遠い日にも似ているのかも知れない。



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