『色彩/阿佐元明著』
プロボクサーだった千秋は、ケガをきっかけに引退し、塗装業に就き平凡な毎日を送っている。妊娠中の妻を気遣いながらも、なぜ自分はここにいるのだろう、なにをしているんだろう、と焦燥感を抱えている。
ある日現れた新人の加賀くんに、訳のわからない苛立ちを覚える。
夢を諦めたものの、心のどこかで諦めきれないでいる臆病な自分と重なる部分を加賀くんの中に見て、千秋は加賀くんにある種の同族嫌悪を感じていたのではないだろうか。
平凡な日常の中の閉塞感が見事に描かれており、派手さはないものの、読み進むうちにどんどんと引き込まれていった。
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