ざっくり解説: 福島のALPS処理水海洋放出
前にも書いたんですが、海洋放出が近くなって盛り上がっているので、ALPS処理水の海洋放出についておさらいします。
超ざっくりまとめ
これまで国内で海洋放出について議論されてきて「海洋放出で問題なさそう」ということになってたけど、念のため国際機関であるIAEAにも見てもらって「計画は問題なさそうだし、念のためIAEAが駐在して監視するよ」と言ってもらったので、夏ごろから気をつけて海洋放出していこう!
以上の内容をやや詳しく説明するのが以下です。
なお、各項目の冒頭は、ChatGPTに私の意見をざっくりまとめてもらったものです。
1. はじめに
IAEAが東電の計画をレビューして、「国際的な安全基準を満足しているよ。念のためこれからもIAEAが確認するよ。」とまとめられました。
以下リンクに要約があります。
https://www.nra.go.jp/data/000439954.pdf
2. ALPS処理水とは何か?
ざっくりとは、事故後の原発を通り抜けて汚染された水を、ALPS(アルプス)という浄水設備を使ってキレイにしたものです。
ただし、ALPSを通してもトリチウムは残ります。
トリチウムは、水素(H₂)の親戚のようなもので、浄水設備では除去できないです。
例え話をしましょう
お茶に例えてみます。
原子炉に水が流れ込むのは、茶葉の入った急須に水を入れるようなものです。
急須の中で、お茶っ葉と混ざったお茶ができます。
このままだとお茶っ葉がザリザリするので飲みたくないです。これが汚染水。
茶漉しを使うことで、お茶っ葉を取り除くことができます。
お茶になりました。これが処理水。
お茶っ葉のカスは廃棄されます。これは特に名前がないけど、放射性廃棄物です。
このお茶を海に流すことになります。できればお茶成分も取り除いて、水に戻して海に流したいですが、お茶の成分は茶漉しでは取れません。
なので、海洋放出する際は、なるべく薄いお茶にして、海水と混ぜることで、人体や環境に影響がないくらいの濃さにします。
これが海洋放出です。
正確ではないですが、なんとなくのイメージはこのくらいでよいと思います。
もうちょっと詳しく知りたい人向け
3. IAEAの支持と調査
IAEAの代表であるグロッシ氏が、海洋放出についてのインタビューに答えています。
科学的な根拠に基づいて報告書をまとめたことや、コミュニケーションは今後も継続して重要であり続けることが述べられています。
今回、IAEAは、海洋放出の計画に問題がないことを確認しました。
これでおしまいではなく、放出中、放出後についても同様にレビューを実施することになるだろうと思います。(日本政府が依頼すると思います)
ちなみに、放射線や原子力に関わる組織は複数ありますが、代表的なものは以下です。
UNSCARE:放射線に関する科学的な事実を示す。
ICRP:科学的事実をもとに、放射線を使う際の方針を示す。
IAEA:方針をもとに、管理するための基準値やガイドラインを示す。
IAEAが一番現場に近い立場です。
4. 処理水放出の有効性と廃止措置の遅延リスク
なぜ処理水を放出したいのかというと、福島第一原発の解体のために、多くのスペースが必要だからです。
下の図は、福島第一原発の敷地での、海洋放出関係の設備の配置です。
左上のエリアがほとんどタンク設置に使われています。
このスペースを、解体して出てきた廃棄物をおいたり、工事の準備をしたり、いろいろするためのスペースにしたい、ということ……だと思います。
5. 他の選択肢との比較
海洋放出以外に、蒸発させて減らす、地下に埋めるといった方法が挙げられてはいます。しかし、お金も時間もかかります。
原発の解体に使えたはずのお金が、別のことに使われてしまうと、全体として損をします。
6. 海洋放出の安全性と効率性
これはもうこの通りですね。
海洋放出をしたことでトリチウムが放出され、それにより被ばくが発生します。
しかし、想定される被ばく量は小さいです。
そのくらいで健康影響が起きるなら、X線検査やCTスキャンといった医療被ばくでも、健康影響が起きるはずです。
7. まとめ
結局、問題になるのは、”海洋放出は安全か?”ではなく、風評被害をどう抑えるかだと思います。
グロッシ氏が上述のインタビューで言うように、情報をオープンにして、対話をし続けることが必要で、それは誰にとってもストレスがかかります。
そのストレスでめげることなく、コツコツやっていきましょう。
ご覧いただきありがとうございます! 知りたい内容などあればご連絡くださいね。