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狂犬病予防法(昭和25年成立時)/ 第五章 罰則 第二十六条

今のではなく、昭和25年に出来た時の狂犬病予防法を読み続けています。

今回から新しい章、罰則。この第二十六条と第二十七条だけです(今の法律では第二十八条があります)。

第二十六条は「五万円以下の罰金」第二十七条は「三万円以下の罰金」
ちなみに現在は、第二十六条は「三十万円以下の罰金」、第二十七条は「二十万円以下の罰金」。
どんな違反をすると五万円だったり三万円だったりするのか。そしてその金額は今でいえばどれくらいなのかをみていきたいと思います。

タイトルのようなものがありません
今までの各条文は、第〇条の前にカッコ書きでタイトルのようなものがありました。この章の2つの条文にはそれがありません。

第二十六条で違反になるのは?
三項目あります
一 検疫を受けずに、この法律で定める動物(犬以外もあるケースがあります)を輸出入する。
二 狂犬病発生時に、狂犬病の犬を届けない。
三 狂犬病発生時に、狂犬病と診断された犬(疑い含む)を隔離しない。


(※條を条に直したり、当時の文字と違う書き方をしています)

第五章 罰則
第二十六条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
 一 第七条の規定に違反して検疫を受けない犬(第二条の規定により準用した場合における動物を含む。以下この章中同じ。)を輸出し、又は輸入した者
 二 第八条第一項の規定に違反して犬についての届出をしなかつた者
 三 第九条第一項の規定に違反して犬を隔離しなかつた者

国立公文書館デジタルアーカイブ 狂犬病予防法・御署名原本・昭和二十五年・法律第二四七号


五万円は今であればどれくらい?

昭和25年くらいは、いただいた給料のほとんどはその月で消えてしまい少しでも蓄えようとしてもなかなか出来ない時代だったと聞いています。
では、お給料は幾らくらいだったのか。それが分かる資料として以下があります。
明治・大正・昭和・平成・令和 値段史 の中の 6. 給料・賃金(その1-職種共通) 

ここの「1950」「昭和25年」の欄を見ると
給与所得者収「【民間給与】12.0万円」、勤労世帯収「1.3万円」、国家公務員初任給「【六級職】4,223円」とあります。

勤労世帯月収の3倍以上、国家公務員の初任給10倍以上ということになります。令和の今に換算したら 100万円くらいかそれ以上でしょうか。
上限ではありますが、それくらい重要な問題であると社会として捉えていたのです。
 

第一項

(まず条文)
一 第七条の規定に違反して検疫を受けない犬(第二条の規定により準用した場合における動物を含む。以下この章中同じ。)を輸出し、又は輸入した者

第〇条とか言われて分かりませんよね。
出てくる第七条と第二条を以下にコピペします。
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第二章 通常措置
輸出入検疫
第七条 何人も、検疫を受けた犬でなければ輸出し、又は輸入してはならない
2 前項の検疫に関する事務は、農林大臣の所管とし、その検疫に関する事項は、農水省令でこれを定める。
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第一章 総則
適用範囲
第二条 この法律は、動物の狂犬病のうち、犬の狂犬病に限りこれを適用する。但し、厚生大臣は、家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)第一条第一項に掲げる家畜以外の動物について狂犬病が発生して公衆衛生に重大な影響があると認めるときは、動物の種類、期間及び地域を指定してこの法律の一部を準用することができる。この場合において、その期間は、一年をこえることができない。
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何が違反になるのか
(通常措置の=狂犬病が発生していなくても行う)輸出入時の検疫をしなかった者。対象は犬に限らず、厚生大臣が「この動物に狂犬病が発生したから、この動物も検疫するように」と言えばその動物も対象。

第二項

(まず条文)
二 第八条第一項の規定に違反して犬についての届出をしなかつた者

第一項同様、第八条を(第一項だけでなく全て)コピペします。
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第三章 狂犬病発生時の措置
届出義務
第八条 狂犬病にかかつた犬若しくは狂犬病にかかつた疑いのある犬又はこれらの犬に犬にかまれた犬については、これを診断し、又はその死体を検案した獣医師は、厚生省令の定めるところにより、直ちに、その犬の所在地を管轄する市町村長にその旨を届け出なければならない。但し、獣医師の診断又は検案を受けない場合においては、その犬の所有者がこれをしなければならない。
2 市町村長は、前項の届出があつたときは、直ちに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の報告を受けたときは、厚生大臣に報告し、且つ、隣接都道府県知事に通報しなければならない。
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何が違反になるのか
狂犬病が発生している時は、犬の生死に関わらず、狂犬病に罹ったもしくはその疑いのある犬を診断した獣医師または所有者(飼い主)は届出なければならないが、それをしない者

第三項

(まず条文)
三 第九条第一項の規定に違反して犬を隔離しなかつた者

第一項同様、第九条を(第一項だけでなく全て)コピペします。
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第三章 狂犬病発生時の措置
隔離義務
第九条 前条第一項の犬を診断した獣医師又は所有者は、直ちに、その犬を隔離しなければならない。但し、人名に危険あつて緊急やむをえないときは、殺すことをさまたげない。
2 予防員は、前項の隔離について必要な指示をすることができる。
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何が違反になるのか
狂犬病の犬(疑い含む)(それは第八条で届出がされているはずの犬)を隔離しなかった者。

 

この3つは何故高額なのか

歴史的に狂犬病を撲滅したことがある国や地域は、島国であることが多い。つまり入って来ないことが最も重要なことなのです。入って根付いてしまえば発生源になり続けます。
なので第一項の検疫は重要なのでしょう。

第二項の狂犬病発生時の狂犬病の犬(生死問わず・疑い含む)の届出も、国内からの発生源を把握することですから、撲滅させるには重要なこと。

更に第三項に付いては、狂犬病の犬を隔離しなければ、人や他の犬に感染させる可能性を高めるので、重要であることは説明の必要もないでしょう。

発生源となりうる犬の把握、感染拡大の確実な防止が重要である認識から高額になっていると私は考えています。

ここまで。


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